とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

「精霊の守り人」及び守り人シリーズ/上橋菜穂子著

2015-07-25 18:33:41 | 読書
精霊の守り人 (軽装版偕成社ポッシュ)
クリエーター情報なし
偕成社


「鹿の王」で本屋大賞を受賞した上橋菜穂子の作品に興味が湧いて、次々と読み込んでいた。「獣の奏者」正伝4巻&外伝1巻、そしてこの「精霊の守り人」をはじめとする守り人シリーズだ。守り人シリーズは、正伝10巻、外伝2巻にもわたる大長編であったが、面白くて面白くてページをめくる手が止まらず、全巻一気に読んでしまった。この作品はシリーズ累計370万部のロングセラーであるとともに、国際アンデルセン賞作家賞を受賞し、国際的な注目もあつめているという。知らなかった!

どんな話かというと、30歳の女用心棒バルサを主人公に、人の世界と精霊の世界を描いた異世界ファンタジー小説である。ジャンルとしては、児童文学になるようで野間児童文芸賞新人賞や産経児童出版文化賞等を受賞しているという。ただ、主人公のバルサは30歳という大人であり、児童文学としては異例の設定である。バルサが守る新ヨゴ皇国の第二王子チャグムは11歳の少年ではあったが、このシリーズではチャグムノの成長を追って物語が進んでいき、チャグムが帝になるまで描かれるのだが、その間には少年の成長という話だけにとどまらず、バルサの純愛を絡めて異世界での壮大な歴史絵巻にも発展していく。また、人間社会と精霊世界が重なり合い連動していく様子も面白い。全く架空の物語でありながら、登場する国々の地理、歴史、文化など描写も細かく、文化人類学者である作者ならでは綿密な構成となっている。児童文学としてとどまらず、大人が読んでも何ら遜色がない作品である。単行本、文庫版などいろいろ出てはいるが、軽装版偕成社ポッシュのシリーズが読みやすかった。

シリーズ第1作の「精霊の守り人」の内容は、こんな感じだ。

精霊の守り人(Wikipediaより)
短槍使いの女バルサは、青弓川に流された新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムを救う。彼はその身に、この世(サグ)と重なって存在する異世界(ナユグ)の水の精霊ニュンガ・ロ・イム〈水の守り手〉の卵を宿していた。チャグムの母、二ノ妃は、バルサにチャグムを連れて逃げるよう依頼する。新ヨゴの建国伝説では初代皇帝トルガルが水妖を退治したとされ、水妖に宿られたチャグムを、皇国の威信を守るため父帝が秘密裏に殺そうとしているのだ。同時に、チャグムは、ニュンガ・ロ・イムの卵を食らうナユグの怪物ラルンガからも命を狙われていた。チャグムを連れて宮から脱出したバルサは、卵がチャグムの体を離れる夏至まで、幼馴染の呪術師タンダやその師匠のトロガイと共にチャグムと暮らし始める。バルサもかつて幼い命を奪われかけ、父の親友で短槍の達人ジグロに助けられて故郷カンバルを離れた経験があった。そのころ星読博士のシュガは、チャグムに宿った卵の精霊がかつてトルガルが倒したとされる水妖と同じだと考え、過去の記録を調べはじめる。そこでシュガは、トルガルの伝説が歪曲されたものであるということと、本当はニュンガ・ロ・イムが雨を降らせて作物を助ける存在だということを知る。

10巻もある大長編だから、数多くのキャラクターが登場するが、凄腕の女用心棒バルサとチャグム皇子の魅力は大きい。バルサは強いだけでなく弱いものへの思いやりも深く、幼馴染のタンダにひたすら思いを寄せる姿も可愛い。そして、チャグムがひ弱な少年から自分の祖国を救うために立ちあがるたくましい青年に成長していく様子が感動的だ。その他、脇を固めるキャラクターたちも魅力的な人物が多い。作品には番号が振られてないのだが、時間を追って作品が書かれているので正しい順番で読んでいって欲しい。作品名で“守り人”とあるのはバルサがメインで、“旅人”とあるのはチャグムがメインとなっている。どれもシリーズの内容に深くかかわっているので、1巻でも外すと流れが見えてこなくなるので注意が必要である。

順番としては、下記の通りだ。
1.『精霊の守り人』
2.『闇の守り人』
3、『夢の守り人』
4、『虚空の旅人』
5、『神の守り人 <上> 来訪編』
6.『神の守り人 <下> 帰還編』
7.『蒼路の旅人』
8.『天と地の守り人 <第1部> ロタ王国編』
9.『天と地の守り人 <第2部> カンバル王国編』
10.『天と地の守り人 <第3部> 新ヨゴ皇国編』
外伝1.『流れ行く者 守り人短篇集』
外伝2.『炎路を行く者 -守り人作品集-』

嬉しい事に、最近こんなニュースもあった。

NHKで、『放送90年 大河ファンタジー 「精霊の守り人」』と銘打って、2016年春から3か年に渡って全22回で放送されることが決まったそうだ。全22話からなる3部作で、シーズン1(全4話)を2016年3月から、シーズン2(全9話)を2017年1月から、シーズン3(全9話)を2018年1月から放送し、映像は4Kで撮影される。キャストは、以下の通り。〈 〉内はドラマ設定年齢。
バルサ〈30〉 - 綾瀬はるか(少女期:清原果耶)
チャグム〈11〉 - 小林颯
タンダ - 東出昌大
二ノ妃 - 木村文乃
シュガ - 林遣都
ガカイ - 吹越満
モン - 神尾佑
ジン - 松田悟志
ジグロ - 吉川晃司
トロガイ - 高島礼子
聖導師 - 平幹二朗
帝 - 藤原竜也

バルサの綾瀬はるかは、いい人選だと思う。万能鑑定士Qの役はどうかと思ったが、バルサにはうってつけだ。チャグム役の小林颯は良く分からないが、成長したチャグムは別の役者に代わるのだろう。タンダの東出昌大や二ノ妃の木村文乃も悪くない。老婆となるトロガイの高島礼子や帝の藤原竜也はかなりの演技力が必要となりそうだが、彼らなら間違いないだろう。ちょうどいいタイミングで「守り人シリーズ」を読み終えて良かった。今まで図書館の予約は0ですぐに読むことが出来たのだが、今後予約が殺到するかもしれない。