2日目は、100キロマラソンの当日である。午前5時前だが、すでに辺りは明るくなっていた。旅館のすぐ隣がスタートの美保神社なので、焦ることもなく旅館を出た。周囲には大勢のランナーが集まっており、荷物を預けてスタートライン付近に向かった。美保神社の前には、えびす様も出ていて一緒に記念写真を撮る。
その後、だいこく様としまねっこも出てきて、全員で集合写真を撮る。だいこく様は、出雲大社の祭神である大国主神(おおくにぬしのかみ)の事である。また、しまねっこは、島根県観光協会のマスコットキャラクターである。黄色のネコをモチーフにし、頭上の屋根は神社の屋根をイメージしている。島根のキャラクターが勢ぞろいして、スタート地点は大いに賑わっていた。
カウントダウンの後、一斉にスタートする。
スタートしてすぐに男女岩(めおといわ)が現れる。日本全国には、めおと岩と呼ばれる二対の岩が数多くあるが、自然の造形として最高の完成度を誇るのが美保関のこの男女岩ではないかと言われているようだ。良縁や子宝にご利益がありそうである。
海岸線の反対側には、鳥取県の境港の工業地帯が見えていた。
平坦な道は6キロくらいまでで、その後上り坂が始まる。これから、いくつものアップダウンが続くコースとなる。
島根半島を横断して、日本海側の小さな港町に下る。
その後もアップダウンを繰り返しながら、日本海の海を眺めて走る。
七類港のフェリーターミナルが見えてきた。この港からも隠岐の島へ行く大きなフェリーが出ている。
そして、10キロ地点を通過する。このあたりまでは順調だ。
さらに、海岸線沿いの道が続く。この日は、波が穏やかで海の色が美しい。砂浜もきれいで、海水浴シーズンは賑わいそうな場所もある。
岩場から眺めた海の色があまりにも青く、思わず立ち止まって写真を撮る。まさに、藍より青くとはこれほどの色のことを言うのだろう。
20キロ地点を通過する。
23キロのエイドに到着する。このエイドが、一番食べ物があったようだ。天気が良すぎて、気温が上昇していたので、スイカがたくさん出てありがたかった。おにぎりは握りたてで温かかく1個だけ頂く。しかし、この時もっとおにぎりを食べておけばよかったと後で後悔した。その後のエイドでは、あまり腹の足しになるような食事がなく、飲み物ばかり飲んでガス欠に陥っていた。
さらに海岸線沿いの道が続く。
山を下っていくと、はるか先に大きな建物が見えてきた。大きさからみて、原子力発電所ではないかと思っていた。
その一時間後に、大きな建物の前を通過した。建物は、中国電力の島根原子力発電所だった。この原子力発電所の周囲は、かなりの距離にわたって鉄条網が張り巡らされていて、広大な範囲が原子力発電所の敷地になっていたようだ。美しい海岸線を独り占めにして人を寄せ付けない原子力発電所は、この地には似合わない。島根原子力発電所は、日本で唯一県庁所在地に立地する原子力発電所であるそうだ。
やっと50キロを通過する。この頃から、かなりへばってきていた。上り坂はほとんど走れず歩くばかりだ。
住宅地にたどり着いたところで、小さな商店を見つけ、パンを買って食べるが一時しのぎだった。55キロのエイドにはコンビニのおにぎりがそのまま出ていて、あまり食べる気がしなかったが、無理やりお腹に流し込んだ。その後、しばらくは走れたが、上り坂になったらもう長続きしない。だらだらと長い坂道が続き、どんどん時間が過ぎてしまっていた。結局、66キロのエイドの関門に引っ掛かり、そこでリタイアとなってしまった。もう少し行けるところまで行きたかったが、関門に引っかかった選手はルール上収容車に乗らなければならないということで、がっくりしながらバスに乗った。小型のバスなので、大型バスに乗り換えるため74キロの津ノ森エイドまで送ってもらう。津ノ森は宍道湖畔であり、宍道湖名物のしじみ汁をいただく。
津ノ森に大型バスが来るまで1時間近く待つというので、電車で帰ることにした。津ノ森は一畑電車の駅前であり、ランナーはゼッケンを見せるだけで無料だということなので、ちょうど来た出雲大社行きの電車に飛び乗った。
電車から宍道湖がよく見えていた。本来なら、自分の足で宍道湖畔を走りたかった。頑張って走っているランナーも見え、悔しさがこみあげてきていた。
出雲大社駅を降りると、すぐ先にゴールがあった。続々とランナーがゴールしているのが見えた。でも、自分はあのゴールの下に入っていくことができない。
まだ早い時間だったので、旅館のチェックインを先に済ませ、仲間のランナーがゴールするのを見届けようとゴール会場に戻った。結局、一緒に参加したN山さん、うっちゃん、よっぴーさんの3人は全員完走できた。さすが3人とも実力者である。普段の練習も事欠かない。それに引き換え、言い出しっぺの自分だけが、完走できなかったのはやはり悔しいが、練習不足だったのは否めない。暑さや上りに弱いことが、今回は大いに出てしまった結果だった。
島根への旅「3日目・出雲大社」に続く。