prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(1)

2005年08月22日 | フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(シナリオ)
<人物表>
小人富雄 41 … 映画プロデューサー
秋月令子 24 … 小人の秘書
山本三助 55 … 映画館「前線座」オーナー
田中 勲 65 … 金持ち
浅間善之 50 … 田中の運転手
清水道子 33 … 市民グループ代表
溝口秀夫 56 … 旭日新聞嘱託・映画評論家
扶桑和人 30 … 映画監督
花山 修 27 … 脚本家
団 裕仁 32 … 男優・メイクアップの達人
赤沢陽一 30 … 男優
福田香子 21 … 女優
山崎秀子 22 … 女優
広瀬康子 24 … 女優
大平 茜 21 … 田中の二号・素人俳優
トニー早川 30 … 自称日系二世・通訳
イォシフ・ビサリオノビッチ・シュガシビリ  33 … 素人俳優
森岡吉見 61 … 撮影所守衛
仁科慶子 47 … 前線座もぎり
宮下孝三 45 … 撮影監督
黒井 徹 27 … 助監督
佐山 明 40 … 美術監督
秋山純子 42 … ヘアメイク担当
栗田 恵 35 … 衣装担当
林 和人 42 … ダビング担当
その他スタッフ・キャスト一同
金坂   45 … テキ屋
吉田   19 … 金坂の子分
東野 … 映画ファン・女・西川とペア
西川 … 映画ファン・男・東野とペア
北山 … 映画ファン・男・南原とペア
南原 … 映画ファン・女・北山とペア
四方 … 映画館の客
喫茶店「白樺」
の客たち
市民グループのメンバー

<ストーリー>
1962年、日本で映画人口が激減していた真っ最中、独立プロデューサー・小人富雄は絶対に当たらない映画を作ろうとしていた。
 なぜそんな真似をするのか。
製作費を集めるだけ集めて、できるだけ安く形ばかりの映画を作り、売れなかったからという言い訳を残して、余った金を持ってドロンしようという目論見なのだった。
ではどんな映画が当たらないか。「良心的」で暗くてうっとうしいものに限る、とあらん限りの手を尽くしてつまらない「良心作」を作ったところ、これがどういうわけか買い手がついてしまう。
しかも買い手は山本という名うての商売人だ。
何が狙いなのか、小人が探ったところ、山本はその「良心作」が予算不足でひどく美術その他がちゃちな上、描写が公式的でやたらと型にはまっているくせに考証的にでたらめなところに目をつけ、これは少し手を加えれば外国映画に出てくる変てこな日本や日本人そっくりになる、作り替えて外国人が日本の誤解して作った「国辱映画」として日本製であることを隠して売ろうとしていたのだった。
そうと知った小人もただ山本に儲けさせる気はない。
どうせ国辱映画として売るなら、初めからもっとそれらしく撮った方がいいと山本と交渉し、小人が責任をもって作り替えるのを条件に、より高く売りつけることに成功する。
それからインチキ日系人などの協力を得て、スポンサーの干渉その他数々の障害をくぐり抜け、この日本製「国辱映画」の作り直しは進む。
そして首尾よく、その国辱性を話題作りに生かし、あるいは実は日本製なのではないかという言い訳も巧みに噂として流して、「日本人とユダヤ人」の映画版とでもいうべき日本製「国辱映画」は何を間違えてかヒットしてしまうのだった。

1 メイン・タイトル(絵)
チビで短足で出っ歯でつり目で眼鏡をかけたサムライたち。
電卓を首にかけ、片手に車、片手にテレビを掲げている帝国軍人。
風呂屋のペンキ絵のようなタッチで描かれた富士山、人力車、芸者、桜、菊などの日本的な風物。
外国人が見た日本人のカリカチュアの、そのまたカリカチャア。
怪しげな日本趣味の音楽。
T「1962年 ’日本」

2 映画館・前線座
六階建てのビルの最上階にある。
すぐそばに階段。
正面には「ぼくは負けない」
といういかにも真面目で良心的な映画のポスターが、ガラスケースにしまわれて貼られている。
自衛官募集のポスターか生命保険のパンフレットのように、青空をバックに子供たちが空の彼方を指さしている絵柄だ。
「文部省選定」
とポスターの上に大書してある。
男の声「映画が完成したら、ここで上映します」

3 階段
がらんとして、下までずっと続いている。
男の声「入りのいい時だと、ここから下までずっと人が続くんです」

4 他のさまざまな映画館の写真
がテーブルの上に並べられる。
男の声「これらも同じ系列の映画館です」

5 ホテルの食堂
写真を出して見せ、しゃべっている男(小人富雄・41)。
反対側にはいかにも金持ち然とした男(田中勲・65)が座ってコーンパイプをふかしている。
机の隅には「小人プロダクション代 表取締役社長・小人富雄」
という名刺が置いてある。
田中の方は名刺など出していない。
小人「…以上です」
田中「条件がある」
小人「パーセンテージにご不満でも」
田中「これだ」
と、傍らの若い女を指し示す。
大平茜(21)、どこか遠くを見ているような目付き。
田中「これを、主役にしてほしい」
小人「失礼ですが、演技経験は」
田中「(大平に)芝居の経験だと」
大平「小学校の学芸会で、主役」
ぷつんと投げ出すように言って、あとすぐぼうっとしている。
小人「なんの役です」
大平「たぬき」
小人「(がっくりきかけるが、気を取り直して)いいでしょう」
田中「本当かね。
監督に聞かなくていいのか」
小人「その監督は私が選ぶんです」
田中、大平に合図する。
大平、テーブルの下から鞄を出して、上にどんと置く。
開けると、中には札束が詰まっている。
田中「持っていけ」
小人、立ち上がって、田中と握手する。
小人が鞄を取ろうとすると、 田中「これも」
と、大平を持って行かせようとする。
小人「そちらは、またあとで」
と、鞄をしっかりと持つ。

6 小人の事務所
狭い中、秘書の秋月令子(24)と客の清水道子(33)がくっつきあうようにしている。
秘書のスペースを別にとる余裕もないのだ。
机の上に、清水が札束を一つ置く。
小人「(怪訝な顔をして)…これは?」
清水「カンパです」
と、机の上の一冊の本を取る。
清水「これの映画化を進めていると聞きました」
「わたしは負けない」
というその表題。
表紙は青空をバックに江戸時代の女たちが空の彼方を指さしている絵柄 だ。
清水「いい本です」
小人「そうですね」
と、言いながら鞄を椅子のうしろに隠す。
清水「子供に読ませたいと思っています」
小人「そうですね」
清水「私も読みたいと思っています」
小人、調子が狂う。
小人「(態勢を立て直し)どこがいいと思います?」
清水「これは『全国よい本を親子で読む協議会』推薦です」
小人「はあ…」
清水「私もその委員なんですけどね。
今の人たちはいい本を読もうとしません。
このカンパを集めるのも苦労しました」
それまで傍らでなぜか疲れた顔をして座っていた秘書の秋月が急に(だめだめ)という具合に手を大きく振り出す。
小人「(秋月に)何やってんだ、疲れた顔して」
清水「(構わず話しだす)まずこの学区内の学校を全部まわりました…」
*   * 
小人、秋月そっくりの疲れた顔をしている。
清水「…こうしてこのお金をつくったのです」
小人「ありがとうございます」
清水「よくこういう話を取り上げられたと感心いたします」
小人「ありがとうございます」
清水「それから、この本を広めるために協議会がどう運動したかといいますと…」
小人、げっそりする。
×   ×
清水が帰ったあと。
秋月、逆さに立ててあったほうきを 戻す。
秋月「失礼ですけど」
小人「何」
秋月「ずいぶんあちこちからお金を集めたようですけど、こんな話で人が見に来ますかしら」
小人「どんな話なのかね」
秋月「(驚いて)…なんですって」
小人「(ごまかす)いや、気にしなくていい」
秋月「さっきあの人に話していましたが、上映劇場が決まっているからですか」
小人「そんなところだ。
あしたからスタッフと出演者の面接を始めるから手配してくれ」
秋月「はい」
秋月が仕事を始めると、小人は隠す ようにして、鞄から金庫に札束を移 す。
×   ×
花山修(24)が、面接を受けている。
昭和初期の文士のような暗い顔。
前髪をぱらりと前に垂らしている。
小人「(『わたしは負けない』を見せて)これを脚色してもらう人を探しているんだ」
花山「…僕も二年前までは純粋でしたから」
花山、ふっと垂れた前髪を横に振る。
(何を言っているんだろう)という顔の秋月。
小人「これ、読んだかね」
花山「所詮、今の日本はアメリカの文化的植民地にすぎませんから」
あくまでナルシスティックな態度。
全然人の言うことを聞いていない。
小人「『ぼくは負けない』の脚本を書いたのは君だよね」
花山「そうらしいですね」
小人「らしいってなんだい」
花山「監督にさんざん勝手に直されましたから」
小人「なるほど」
花山、ふっと前髪を横に振る。
小人、机の引き出しから金を出して机に置く。
小人「前金だ」
花山、立ち上がって前髪をかきあげる。
小人「持ってけよ」
と、言うより早く金は消えている。
×   ×
扶桑和人(30)が部屋に入ってきて一礼する。
と、部屋の隅に新しい仏壇ほどもある、角の丸いブラウン管のテレビの画面を秋月が調節しいいるのが目に入る。
今と違ってひどく写りは悪い。
ただでさえ狭い部屋がもっと狭くなっている。
扶桑「(急に不快そうに)あの、申し訳ありませんけれども」
秋月「お嫌い?」
扶桑「はい」
秋月、テレビを消し、ブラウン管の前にある小さなカーテン(映画館のミニチュアみたいな感じ)の紐をすっすと引っ張って閉める。
小人「(やっと)いいかね」
扶桑「すみません。
これ(テレビ)を見ると腹が立つもので」
と、席につく。
小人「置いておくと、景気がいいように見える」
扶桑「いいんですか」
小人、また金を机の上に投げ出す。
小人「演出を頼みたい」
×   ×
ドアがノックされる。
秋月「どうぞ」
ドアが開いて、団裕仁(32)が入ってくる。
ちょんまげを結い、刀をさしている。
机の上に投げ出される金。
×   ×
棒のようにつったっている赤沢陽一(30)。
小人「では、何か芸をやってみてくれ」
赤沢、発声練習を始める。
「あーえーいーおーうー」
といった奴だ。
机の上に投げ出される金。
秋月のけげんそうなようすが次第に強くなる。
×   ×
福田香子(21)、山崎秀子(22)、広瀬康子(24)の三人娘がついていないテレビの前のソファに座って待っている。
新しくソファが置かれたものだから一段と狭くなっている。
秋月「では、みなさんどうぞ」
どうぞというほど小人との距離はない。
三人、とまどう。
秋月「三人とも、どうぞ」
福田「三人一緒ですって」
山崎「馬鹿にしてる」
広瀬「主役じゃなさそうね」
×   ×
金が三等分される。

7 撮影所・全景 広大な敷地。

8 同・第6ステージ
丁度撮影中なのを見てまわる小人と所員。
所員「申し訳ありませんね、どこもふさがってまして」
小人「一週間でいいんですが」
所員「だったら、あと二週間でここが空きますが、短すぎはしませんか」
小人「空くんですね」
所員「ええ」
小人、ぐいと所員の手を取って金を握らせる。

9 同・スタッフルーム
さまざまな資料、調度が運び込まれ、体裁を整えていく。
せわしなく動く秋月。
×   ×
一段落つく。
部屋には秋月しかいない。
秋月、印刷された台本の束の封を切る。
「雨の吉原」
と表紙に印刷されている。
秋月「あれえっ?」
中を開けて見ると、スタッフ・キャストの名はすでに埋まっている。
秋月、台本を読み始める。
×   ×
秋月、読み終わる。
げっそりしたようす。
花山と同じように前髪がぱらりと垂れている。
小人が入ってくる。
秋月「すみません」
小人「何かね」
秋月「これ、決定稿ですよね」
小人「ああ」
秋月「なんか原作と全然違うみたいですが」
小人「ああ、結局あの話は使わなかった」
秋月「使わないって…いいんですか」
小人「あの前髪ぱらりがあんまり原作をいじるんで、結局別物にしたのさ」
秋月「なんか、ずいぶんじめついて暗くなった感じですが」

10 イメージ
青空をバックに江戸時代の女たちが空の彼方を指さしている絵柄が、すうっと曇天に、さらに雨空になる。
女たちは番傘に隠れてしまう。

 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

「劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」

2005年08月22日 | 映画
元のマンガやテレビシリーズのことを知らないで見るのはムリ。何がなんだかさっぱりわからなかった。全然そういう客想定していないのだろうから、文句言われても困るこもしれないが、ものによっては知らなくても楽しめるようにできてるのあるぞ。
二つの世界を行き来するのに、どっちがどっちだかわからなかったりするのはこっちの予備知識不足のせいではないだろう。
隣の女の子二人連れが最初から最後まで喋りっぱなし。何度注意してもダメ。親の顔が見たい。