prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ノー・マンズ・ランド」

2007年06月30日 | 映画

舞台劇になったというが、シンプルな背景と人物配置の上に、バルカン半島ひいては世界のおそろしく複雑で混沌として手のつけようがない状況を造形した作劇がすごい。
手榴弾がついに爆発しないでその上でずうっと過ごさなくなるラストは、簡単にけりをつけさせてたまるかと明言しているよう。

紛争の現場にいた作者が描くと案外哀れっぽさとか悲惨さよりふてぶてしいユーモアが表に出てくる。
国連っていうのも格好つけばかりで役に立たないなあ。
(☆☆☆★★★)


2007年6月に読んだ本

2007年06月30日 | 
prisoner's books2007年06月アイテム数:22
アジアのなかの日本映画四方田 犬彦06月02日{book['  rank'  ]
「甘え」の構造 [新装版]土居 健郎06月03日{book['  rank'  ]
東風/松下功作品集松下功06月04日{book['  rank'  ]
作曲家・武満徹との日々を語る武満 浅香,武満徹全集編集長06月05日{book['  rank'  ]
創価学会 (新潮新書)島田 裕巳06月05日{book['  rank'  ]
クセナキス:プレイヤードストラスブール・パーカッション06月09日{book['  rank'  ]
オタク論!唐沢 俊一,岡田 斗司夫06月10日{book['  rank'  ]
人間的自由の条件竹田 青嗣06月10日{book['  rank'  ]
ライヒ:アーリー・ワークス(1965~1972)ダブル・エッジ,ライヒ(スティーヴ)06月11日{book['  rank'  ]
悪童日記 (ハヤカワepi文庫)アゴタ クリストフ06月24日{book['  rank'  ]
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「いつも上天気」

2007年06月29日 | 映画
ジーン・ケリー主演だし、題名からしてよほどノーテンキな映画かと思うと、三人の帰還兵が社会に戻って生きていくうちにバラバラになっていくのをどう食い止めるか、というモチーフで、そこだけみると「我等の生涯の最良の年」ばり。戦争が終わって10年しか経っていない1955年製作のせいか。
もちろん全体としては明るく楽しいミュージカルらしいミュージカルだが。

当時は最新だったらしいテレビネタが一番古びていて、逆に文化史的興味をひくぐらい。「これがアナタの人生」という実際のテレビ番組をもじったものらしい。
もっとも映画界としてはテレビの成長に危機感を持っていたはず。

ローラースケートを使ったりゴミバケツの蓋を足にはいたりしたミュージカル・ナンバーの工夫が楽しい。
画面を三分割して三人がそれぞれソロで踊っているのを並べて見せるシーンで、三人の動きが当たり前だがぴたりと一致しているのに一驚。バラバラになってしまったようで友情は続いている、という描き方に自然になっているのもいい。

振り付け師として有名なマイケル・キッドが出演しているが、逆に踊りでの見せ場はなし。
(☆☆☆★★★)


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「山猫は眠らない2-狙撃手の掟-」

2007年06月28日 | 映画

死ぬのならせめて閉じ込められていないで死にたいと願うパートナーの男の悲劇が割ときっちり描かれていて、期待していなかったせいか拾い物をした感じ。扮するボキーム・ウッドバインは、調べてみると2006,7年の2年で16本に出ているという売れっぷり。

トム・ベレンジャーがかなり老けたのに合わせて目が悪くなってきたといった設定が入っているのだが、途中で忘れてしまったみたい。
一発必中といった緊迫感が薄れたのはシリーズものの宿命か。
(☆☆☆★)


「大日本人」

2007年06月27日 | 映画
テレビのダウンタウンはほとんど見ないが、「日経エンタテインメント」の連載「シネマ坊主」は注目していた。
かなり前に監督をすると伝えた時、かなり覚悟してるという意味のことを言っていた。どう転んでも叩かれるという意味かな、と思ったし、実際そうなっている気がする。
前にテレビで短編映画を演出していたと思うが、すでに「巨大もの」とでもいった志向が出ていたと思う。

テレビ局の取材風の映像がところどころに入るのは、むかーしのシネマ・ヴェリテみたい。ラストで「実写」でお見せしますというあたりも異化効果風。
巨大化した大日本人の体型の肩から首にかけて異様な発達ぶりなど変なデフォルメ感覚を見せる。
怪獣もの風の場面が多い割に、決してビルが壊れることがない。こだわりがあるのは確か。

破綻風に作ってあるけれど、本当に破綻してるわけではない。
(☆☆☆)




「女帝 エンペラー」

2007年06月26日 | 映画
「ハムレット」の翻案というのが興味だったが、原作ではなく「原案」というだけあってかなり違う。
それも悪く違う。

「ハムレット」の役名で書くが、ここではガートルードとハムレットが母と息子ではなく元恋人で、皇帝が息子の恋人を取り上げて皇后とし、息子が島流しになっているところに、皇帝が弟に暗殺されて、という設定(セリフで語られるので必ずしもわかりやすくない)から話が始まるわけで、キャラクターとして最も強烈なのは息子の恋人を奪ってしまう父親である前皇帝、ということになるはずだが、話が始まった頃すでに暗殺されていて出番はまるでない。

息子=ハムレットは父親に恋人を奪われているのだから、当然その仇を討とうとする動機はありえず、およそ何しに出てきたのかわからない茫漠としたキャラに成り下がった。仮面つけてふらふらしていたりするのも余計にもったいをつけた印象。

シェイクスピアでは、ガートルードは夫の弟クローディアスとデキて義弟に夫を殺させる、少なくとも殺したのを見てみぬふりをするわけで、一方で息子に対してもかなり「男」に対する「女」の匂いを発散されているわけだが、ここでのチャン・ツィイーは、皇帝から皇帝、権力者から権力者に流されているだけで、さして女を使う迫力があるわけでもない。
結局、兄を殺して権力を簒奪した現皇帝役が変にいじられてない分、一番面白さを損なわれないでいる。

ツィイーがやたら若い(ハムレットより若いガートルード、ということになる)のでこういう設定になったのか知らないが、こうも水っぽい人物設定では、本来なら中国お得意のはずの宮廷劇のどろどろした迫力など、ありゃしない。
演技的にも貫禄不足、表情に乏しく、感情表現が不十分で、カメラも照明もメイクも淡白でさほど力を入れて美しく見せようとしているとは思えず。

代わりにこってりと詰め込まれたのはムダに豪華な美術・衣装と、何で必要なのかわからない長々とした立ち回りと、もったいぶったスローモーションの多用といった、「英雄 HERO」「LOVERS」以上に空疎な事大主義ばかり。
(☆☆★★★)




「しゃべれども しゃべれども」

2007年06月25日 | 映画
とにかく口立てで話を丸暗記して喋る、という落語の覚え方は「型」優先のようでいて、というかだからこそ、本心が伝わるのがありありとわかる。「型」というのが形式主義ではなくて、お互いの意思を了解できる場になっているみたい。

あまり人間関係に器用でない各登場人物の性格と悩みと成長をきめ細かくオーソドックスに描きこんでいるのが魅力。

浅草のほおずき市・都電荒川線(これは本当は都電=市電ではなく、郊外の私鉄・王子電車が戦時統制で統合されたもの)など、ちょっと古めかしい東京の風景をふんだんに見られるのもいい。

落語というのは「生」ものだと思うので、映像にしてしまうと缶詰になって別ものになってしまう。
だから芸そのもので笑わせたりする、というのとは違ってくる。単純なところでは笑うべきところがスベッたり、スベっているところが受けたりするところで笑わせている。

それでいて大詰めの「火焔太鼓」で国分太一は、リクツでどううまくいったのか納得させるのではなく、とにかく見せて聞かせて納得させなくてはいけないのだから、すいぶんハードルは高かったが、乗り切った。

無愛想の国から無愛想をひろめに来たような美人・香里奈のお世辞にもうまくない喋りをカバーする使い方もうまいもの。
(☆☆☆★★★)



「ゾディアック」

2007年06月24日 | 映画
後半のジェイク・ギレンホールのゾディアック探しは何やらUFOやオカルトにはまった人の姿のようで不気味。

証拠を集めて真相に迫ろうと努力し続けて、そして集めた証拠だけ見ているとそれらしく思えるのだが、最初にたとえば誕生日がどうとか犯行の日が新月だったとかいうことに何かしら意味と理由があるはずだという思いがあってその線でしか考えておらず、単なる偶然じゃないのという当たり前の可能性を考慮に入れていない。
アメリカ軍が旧帝国陸海軍の作戦を分析して指摘した「高度の平凡性の不足」なんて言葉を思い出したが、要するに当たり前のことを当たり前に考えず、目的が先にあってなんとかならないでもあるまいと強引に作戦=真相をひねり出してしまう。当人は論理的に真相に迫っているつもりで、実際は自分の情念に引きずられている観が強い。

「わからないこと」をわかろうとする欲望というのは、こうも強いものかと不思議に思う。聞きかじりだが、哲学者のカントは人間は思考を極限まで突き進めないではいられない生き物だ、といったそうな。

「ダーティハリー」がゾディアック事件をモデルにしているのは知っていたが、軍隊用の靴をはいているというあたりもそうだとは思わなかった。

いくらなんでもちょっと長すぎるし、ドラマ的なカタルシスというのがありえない作りなので、いささか疲れた。
(☆☆☆★)



「プレステージ」

2007年06月23日 | 映画
野球でいうなら完封勝利目前でソロホームランを打たれて、勝つには勝ったけど、その打たれた一発の方が気になる、という感じ。

ニコラ・テスラなんてややこしい実在人物が出てくるからどう扱うのだろうと期待半分不安半分でいたら、妙にカルト的なファンがいるから気を使ったのか。それらしい架空の人物にした方がよくなかったか。調べてみたらテスラは変人ではあっても科学的業績はまともなはずだが。

その寸前まで久しぶりに騙される快感を味わって、さあこれであの伏線を拾えば完璧、ってとこで凡ゴロをトンネルするみたいに拾い忘れる。なんなのでしょうね。
複雑な構成で混乱させずに見せる腕、見事な美術、演技面などは堪能した。

トリッキーなストーリーテリングの方に目を引きつけておいて、実際は人気と実力のすれ違い、とか男同士の嫉妬といったどこの世界でも通用する普遍的なドラマとして成立させている腕は、内容はまったく違うがマイケル・ケインが出ているせいもあって「探偵・スルース」を思わせる。
(☆☆☆★★)



「300 <スリーハンドレッド>」

2007年06月22日 | 映画
古代スパルタとペルシャ軍の戦いとはいえ、「民主主義」と「野蛮な独裁政治」との戦い、なんて言われたりしているのだから、イヤでも今のアメリカのことをスパルタになぞらえていると思ってしまう。英語だし。

敵はあくまでグロテスクで傲慢で数頼みの臆病者で、しばしば顔を見せないほとんど動物と同じ存在、スパルタは強く高貴で友情に篤いと、これ以上ない単純二分法。
完全に開き直っています。戦わない男など、口先だけで女を騙し、市民を裏切る卑怯者で、誰にあてつけていることやらという感じ。実際は日本で見渡しても、マッチョをひけらかす奴だって十分卑劣だと思うが。

その上でマチズモ全開というか、相手をとことんぶっ倒してまわる野蛮で残忍な快感の量では、まず空前という感じ。エンド・タイトルで血しぶきがグラフィック・デザイン化されているのには呆れた。
日本でも平田弘史の劇画を映像にしたら、こうでもなるだろうか。

もっともこれだけパンプアップされ肉体がうなりをあげて暴れまわり、それを映像技術と音響技術の粋を結集して増幅してくると、刺激の量が人間が受け付ける域を超えるみたいで、こちらの感覚がロックされて逆に何も感じなくなる瞬間が、多々あった。
レアの巨大ハンバーガーを三人分食べさせられて満足する感覚は、こっちにはない。
(☆☆☆★)



「超」怖い話A 闇の鴉

2007年06月21日 | 映画
コンビニがメイン舞台とはいえ、怖い要素をいろいろ取り揃えてはいても、目玉になる売り物がないというのは困ります。
話がてんでつながってなかったり、重要に思えた人物が後ではまるで忘れられたり、構成のうまくないバラエティみたい。予告編では結構おもしろそうだったのになあ。
(☆☆★★)


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「ザ・シューター/極大射程」

2007年06月20日 | 映画
射撃の角度を何ミルと指定するとか、自殺擬装用の装置とか、原作がそうなのだろうが、ディテールが充実していてそれほど手の込んだ話ではないが飽きさせない。
一発必中の射撃の集中感と、派手に銃弾と爆弾を振り撒くスペクタクルとの混ぜ合わせのバランスもいい。

上院議員役にネッド・ビーティが久しぶりの出演。「脱出」で男に犯される(!)男の役から、「ネットワーク」のカリスマ的テレビ経営者までこなす人だが、ここ十年くらいテレビ出演が多かったみたい。実にアメリカ的に悪い(当人は正しいつもりでいる)政治家らしい。
マーク・ウォルバーグも狙撃者らしい柄を出して好演。伏射のポーズなどもそれらしい。
(☆☆☆★★)



これ、中国で見られる?

2007年06月13日 | Weblog
そのホームページが中国でアクセスできるかどうかテストするサイトというのがあるので、試してみました。

http://www.greatfirewallofchina.org/test/

さっき調べたところ、なんとこのブログもブロックされてます、だって。技術的理由からそうなることもあります、っていいますけどねえ。なんにしてもブロックなんてするなよ。

「県庁の星」

2007年06月11日 | 映画
お役所仕事は効率無視、民間は安直に利益をあげるために手抜きが横行、談合利権に、金儲けのための老人福祉の利用、と今の日本の問題を幕の内弁当のように要領よくまとめて、ちょっと安直だけれども、結局まじめに働くことが大事という線でまとめている。
娯楽映画の定石をよく踏んでいて悪くはないけれども、どの描写も「テレビで見るような」ステロタイプで実際の役所とかどうなっているのだろう、と知らせる驚きには欠けている。
(☆☆☆)