prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

10月30日(月)のつぶやき

2017年10月31日 | Weblog

「ドリーム」

2017年10月30日 | 映画
人種差別と性差別の両方を克服していく話だけれど陰にこもった感じがなく明るく元気が出るのは、三人の主役たちのバイタリティと、周囲の支えになった人が描けているのと、数学という人間の属性に関わりのない、何が正しいのかはっきり白黒がつく絶対的な学が基本にあるからだろう。

ケヴィン・コスナーが低迷期以前のよきアメリカ人代表みたいな顔と体形を取り戻してきた(頭はカツラだろうが)のはキャスティングの狙いがずばり当たった感じ。

マハーシャラ・アリがごつい体格で軍人の役で出てくるので怖い役かと思ったら真逆の性格で、プロポーズするところなどそのためかえってストレートに幸福感が出た。

下手に差別などしていたら、結局不合理と非効率に陥る大原則が端的に出た。

白人女性であるキリスティン・ダンストの上司が差別意識などないとわざわざ言うのに対して、ない「つもり」なだけであることをさらっとオクタヴィア・スペンサーが言うのがNASAの職員たちみたいに高度な教育を受け差別は悪いことと知っていながら無意識にしているさまがちらちらと描かれる。

製作費2500万ドルは今のアメリカ映画としては少ない方だろうが、2017年8月現在で世界興業収入が2億2300万ドル。効率がいい。

タンスみたいなコンピューターがずらりと並べられてもコンピューター言語(FORTRANが現れたのが1954年、マーキュリー計画が始まる五年前)を理解して使える人間がNASAにもいなかったのでお荷物にしかなっていないなど、ドラマだから誇張もあるかもしれないが今では考えられない。
アポロ計画の時に使われたコンピューターが全部合わせても今の家庭用パソコン一台にも処理能力が及ばないなんて聞いたけれども、よくそれで月に行けたものだと逆に感心する。

このコンピューター導入によって計算用に雇われていた人間がお役御免になるというのも今に通じる皮肉。

マーキュリー計画で初めてアメリカ人として宇宙に行ったジョン・グレン(グレン・パウエル)がいかにもオール・アメリカン・ボーイ的な屈託のなさを見せる。この後上院議員になって、70を過ぎてからまた宇宙に行って老化現象にどう影響を与えるのか調査の対象になったのでした。

色味がちょっとカラフルながら半世紀前の時代色を出した。フィルム撮影にしたのもそれが狙いだろう。
(☆☆☆★★★)

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映画『ドリーム』 - シネマトゥデイ



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10月29日(日)のつぶやき

2017年10月30日 | Weblog

「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」

2017年10月29日 | 映画
Apecalypse NowなんてApocalypse Now(「地獄の黙示録」の原題)をもろにもじった文字が壁に書かれていて、ウディ・ハレルソンのスキンヘッドが闇から浮かび上がるところも同作のマーロン・ブランドそのまんま。細かいところを言うと大佐というところも一緒。

内容も人間がいったん滅びて新しい種族にとって代わられる黙示録的でもあり、シーザーが出エジプト記のモーセのようでもあり、ラスト近くで出てくるもうひとつの人間の軍隊は「ハムレット」のフォーティンブラスの軍隊のようでもあり、といった具合にずいぶん引用が厚く積み重ねられていて、重厚なのはいいけれど若干2時間20分は重い。

モーションキャプチャーによるエイプのCGは毛皮についた水滴まで表現していて、寒さがはっきり感じられる空気の中で違和感なく溶け込んでいるのもすごい達成。

人間と猿の立場が転倒している世界となると、自然に人間が滅びるところを期待してしまうのが我ながら倒錯的だと思う。

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー) 公式ホームページ

映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』 - シネマトゥデイ

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10月28日(土)のつぶやき

2017年10月29日 | Weblog

「オン・ザ・ミルキー・ロード」

2017年10月28日 | 映画
クストリッツァとするとごった煮感は前より後退して良くも悪くも精練された印象。
しかし主演を兼ねてラブストーリーとなると、ややお尻がむすむずするような感じもする。俳優から監督に進出する場合はそうでもないのに。

後半、執拗に追ってくる兵士たちが不気味。

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映画『オン・ザ・ミルキー・ロード』 - シネマトゥデイ

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10月27日(金)のつぶやき

2017年10月28日 | Weblog

「破壊!」

2017年10月27日 | 映画
のちに「カプリコン1」で名を上げるピーター・ハイアムズ監督作。

なんといっても中盤のスーパーマーケットの銃撃戦で、床に客たちが伏せている、その上を自在に前進後退するカメラワークに驚かされる。

のちに「密殺集団」のクライマックスでも使ったルーマ・クレーン(上から吊って動かす方式)を使ったらしいが、ディフュージョンの使い方といい、ハイアムズのカメラマンとしての経験(もともとニュースカメラマン)を生かそうと腐心している意欲が覗える。

ストーリーとするとニューシネマ的なすっきりしない感じ。時代の産物か。



10月26日(木)のつぶやき

2017年10月27日 | Weblog

「乾いた花」

2017年10月26日 | 映画
特にオープニングタイトル部分までは画といい音といい役者といい、モダニズム映像のひとつの極致ではあるまいか。とにかくひたすら恰好いい。時代が経ってかつて恰好のいいものが色あせる中で、この恰好のよさは異常。それ以外何一つ追求していないというのも潔い。白黒映像の魅力を改めて知る。

何を間違えたのか公開当時成人指定になったというのも、趣味的な耽美性退廃を危険と捉えたのではないか。




10月25日(水)のつぶやき

2017年10月26日 | Weblog

お題「好きなミステリー小説は?」

2017年10月25日 | 
宮部みゆきの「火車」。
借金に関する法律はこの小説が書かれてからかなり変わっているので古くなっているところもあるけれど、身の丈に合わない消費を煽る基本的な消費社会の構造を典型的に描いた。

完全に姿を消してしまった、IDをなくした女という不気味さの現代性も古くなっていないところ。

全体を貫く軸としての刑事が銃で撃たれて負傷しリハビリしている最中で、人間の弱さやもろさに対する共感を一方で持っているのもいい。
ラストシーンの切れ味も抜群。

余談だけれど、「ナニワ金融道」にこの小説とダブるネタが出てくる。元は実話なのだろう。


火車 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

10月24日(火)のつぶやき

2017年10月25日 | Weblog

「リストマニア」

2017年10月24日 | 映画
ケン・ラッセルが「トミー」に続いてロジャー・ダルトリー主演でロックをフューチャーした映画。
クラシックをモチーフにした時もハチャメチャなイメージがラッセル作品の売りなのだけれど、ロックとなるとどうもけばけばしさが先に立って大胆というかコケ脅しっぽくなる。

ワーグナーがフランケンシュタインみたいになって蘇ってギターに仕込んだマシンガンでユダヤ人皆殺しにするなど、今だったら問題になるのではないか。

肝腎の音楽もクラシックのロック調アレンジとしてどうも魅力が薄い。ロックにするというのはけばけばしくするのと同義語ではないと思うのだが。




10月23日(月)のつぶやき

2017年10月24日 | Weblog