prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「カニバ パリ人肉事件38年目の真実」

2019年05月31日 | 映画
なんだかソクーロフみたいな朦朧としたタッチ。
極端な接写の連続で背景や前景の人影などがぼやけていて、何か胎内でまどろんでいるよう。
ナレーションなどによる説明もまるでないので、佐川一政というのがどんな人物なのか知らない人にはどう映るのかちょっと見当もつかない。

佐川自身が性欲というより食欲の方に執着があったらしいが、映画も肉体そのものに文字通り肉薄している感。肉薄し過ぎて周囲に溶け込んでいるみたい。

佐川一政が主演したAV(そんなのがあったなと思い出した)や、自身が描いたマンガなどが引用されるが、どうもとってつけたような違和感は否めない。外界との齟齬というのが外部からも当人からもあって、当人も自分を持て余しているみたい。現在は半身不随でなおさら自由がきかないのを、介護している弟が妙に似ているのが、肉体を重視する作りに貢献している。

兄弟の子供の時の白黒映像でしきりと相撲をとっているところがピックアップされ、テレビに映っている大相撲の力士が写る(力士の顔に修正が入るのはどういうことか)のが、極端な未熟児として生まれ、150センチしかなかったという佐川とコントラストをなす。

「カニバ パリ人肉事件38年目の真実」 - 公式ホームページ

「カニバ パリ人肉事件38年目の真実」 - 映画.com


5月30日(木)のつぶやき

2019年05月31日 | Weblog


「レプリカズ」

2019年05月30日 | 映画
死んだ人間を蘇らせようとするのは、フランケンシュタインテーマ、あるいはもっと遡れば中国の反魂香まで行きつく普遍的なテーマのひとつだが、それを一応最新式のクローン技術で人間の肉体だけでなく思考=魂までコピーできるようになったという設定。

たいていは再生した人間が期待していたのとは違ってあらぬ方に暴走するという展開になるのだが、ここだと技術の発達によりほぼ思い通りに再生できてしまい、思い通りにならないのは外的な存在である研究母体の会社の管理者だったり、何よりキアヌ・リーブス扮する主人公だったりする。

その分、お話が自業自得というか、一人相撲というか、人一人の存在を割と平気で消したり戻したりできるので、感動的になるはずのシーンで結局「人間的」とされる感情の部分もコントロールできるということなのねと索然とする。

視覚的な見せ場が「マイノリティ・レポート」「アイ、ロボット」などどこかで見たようなものであまり新味がないのも物足りない。

「レプリカズ」 - 映画.com

「レプリカズ」 - 公式サイト

5月29日(水)のつぶやき

2019年05月30日 | Weblog




「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」

2019年05月29日 | 映画
本物のルドルフ・ヌレエフが映画で本格的に踊ったのはケン・ラッセルの「バレンチノ」で、サイレント映画時代の二枚目バレンチノに扮してタンゴを踊るというラッセルらしいなんともいえない戯作っぷりを見せ、それはロシア・バレエというと創成期のディアギレフ、ニジンスキー、パブロワといった名前が彩るスキャンダリズムにつながるものだろう。

ここでは芸術家が求める自由とソ連の硬直した体制との板挟みのドラマが展開するわけだが、スキャンダリズムや危なさといった要素は薄くスクエアに過ぎて、これ自体がソ連的といったら言い過ぎだろうが面白みに欠ける。

「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」 - 公式ホームページ

「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」 - 映画.com

5月28日(火)のつぶやき

2019年05月29日 | Weblog

「アベンジャーズ エンドゲーム」

2019年05月28日 | 映画
大団円でシリーズに出てきたほとんど全キャラクターがワンカットの中に収められて紹介されていくカットで、今さらのようにこんなにいっぱいキャラクターいたのかというのと、これだけの役者揃えたらギャラいくらかかったのだろうと下世話なことも併せて考えた。

アベンジャーズが始まったあたりで、とにかくこれだけ大勢のまったく時代設定する違うキャラクターを集めてどう収拾をつけるのかと思わせたが、今回はもっととんでもなく大所帯。

正直多すぎて、どういう経緯だったのか忘れているところもあるが、それでもわからないなりに大勢が力を合わせている感じは出ているのでカタルシスはある。
これだけ合成だらけの画でどうやって素材を管理してまとめ上げたのか、メイキングを作るのも大変そう。

「アベンジャーズ エンドゲーム」 - 映画.com

「アベンジャーズ エンドゲーム」 - 公式サイト


5月27日(月)のつぶやき

2019年05月28日 | Weblog









「黒蜥蜴(1968)」

2019年05月27日 | 映画
国立映画アーカイブの深作欣二特集のトリ。

江戸川乱歩の原作小説を三島由紀夫が脚色した三幕劇をさらに映画化したもの。
舞台の初演(昭和37年)は水谷八重子・芥川比呂志の主演、同じ年(!)大映で井上梅次監督、新藤兼人脚色、京マチ子・大木実主演で映画化され、昭和44年に丸山(現・美輪)明宏・天地茂主演で再演され、大好評、さらに松竹で再映画化されることになった。

学研M文庫の三島由紀夫著「黒蜥蜴」の美輪明宏の解説によると、

 私(美輪)はプロデューサーの方に、
「映画はやっぱり監督のものですから、監督次第ですね」とお返事したんです。巨匠級の監督の名前がいろいろあがりましたよ。でも私は反対したんです。
「古いね。今はパンクの時代よ。もっとはじけているのはいないの?」
「ちょっと松竹にはいないですね」
「どこでもいいから、そういう人をさがしてきてよ」
「それじゃ、三日余裕をください」
 それで三日目になったら、プロデューサーが「東映にひとりいます」と言ってきたんです。正確には東映を自由契約になっているということなので、「つまり、クビになったということ?」と聞いたら、「そうです」と。
「東映が使い切れないでいるんじゃないの。意外と掘り出し物かもね。会わせてよ」と頼んで、その監督に会って話してみたら、その人はルイ・アラゴンの詩をフランス語でそらんじたりしている。「おもしろいのがいるな、これは化けるな」と思って、彼が帰ったあとに、すぐ決めたんです。それが深作欣二さんでした。

とある。

実際、深作欣二の東映での表看板というべき実録路線とまた違った、なんともいえないケレンと耽美が横溢していて、こういうのも作れるのかと思わせる。

冒頭からビアズレーの画を壁画にした原色のライトで照らされたクラブでボディペインティング風の紋様を描いたぴったりした衣装を着た女の子たちがゴーゴー(古いね)を踊っているというあたりからサイケデリックというかオリジナルの「サスペリア」みたいというか、十分すぎるくらいぶっとんでいる。
ああいう西洋画を日本に持ちこむというのは、「里見八犬伝」のクリムト(だったっけ)なんかにも通じるのではないか。

あからさまに荒唐無稽な作り物であることに開き直った、というか、セリフ=言葉の編み方ひとつを頼りに作り物であることの剣が峰を渡っていくような作り。
三島由紀夫の特別主演シーンには場内から笑いがかなり漏れていた。

「黒蜥蜴(1968)」 - 映画.com

5月26日(日)のつぶやき

2019年05月27日 | Weblog






「キングダム」

2019年05月26日 | 映画
日本映画で中国ものというのは「楊貴妃」から「敦煌」まで連綿として作られてきたわけだが、中国自身が自前のスペクタクルが作れるようになった現在、早い話中国「本国」でどう受容されるのか、土台公開されるのか、されるとしてどんな形なのか、いろいろと気になった。

というか、これはこれで、お話の舞台としての「中国」、統一されて壮大な帝国になる前後のイメージとしての中国として、捉えるべきなのだろう。
大沢たかおや長澤まさみが肉体改造してデフォルメしたコミックのキャラクターに文字通り肉付けしているのが見もの。

山の民の衣装、仮面のデザインが秀逸。非近代的であると共にモダン。現代美術みたいでもある。

形勢が絶体絶命に追い込まれてから逆転に転じるところで、何がきっかけになったのか曖昧なところが多いのが気になった。根性はいいとして、それだけだと納得しにくい。

「キングダム」 - 公式ホームページ

「キングダム」 - 映画.com

5月25日(土)のつぶやき

2019年05月26日 | Weblog


「アメイジング・グレイス」

2019年05月25日 | 映画
奴隷貿易を禁止する法律を制定するに至る18世紀イギリスの若い政治家の奮闘を描く。

スピルバーグの「リンカーン」に似て、ヒューマンな感動系描写よりは政治的駆け引きや工作の描写がウエイトを占めていて、現実の政治をどう動かすか主人公と共に学ぶドラマの面が強い。

政治の理想と現実と両方を平行して描いて、理想が生き続けるのが実話だけに、現実に理想が押しつぶされるありがちな展開よりむしろ大人。

「アメイジング・グレイス」 - 映画.com

アメイジング・グレイス(字幕版)

5月24日(金)のつぶやき

2019年05月25日 | Weblog








「ザ・フォーリナー 復讐者」

2019年05月24日 | 映画
ジャッキー・チェンがシリアス路線にイメージチェンジ、には違いないのだけれど、いざ実際のシリアス演技を見ると、意外とこれまでも、特に「ポリスストーリー」シリーズではこわもてのシリアスな役やストーリーなのがあったのに気が付く。

ありがちなシリアス路線にイメチェンを図って滑るという失敗はコメディやアクションが格の低いものというコンプレックスからくるだろうが、もとより格が上も下もないし、ジャッキー自身間違ってもそういったコンプレックスがないのがうかがえる。

ストーリーが相当に複雑で、特にテロリスト内部でさまざまな思想と立場の者が入り乱れて裏切りが相次ぐもので原作(スティーブン・レザー)があるのではないかと思ったら案の定。
ジャッキーがプロデュースにも参加している。

実際のピアース・ブロスナンがアイルランド系であることを頭においてみるのも一興。
街中の爆破シーンの規模とリアリティに驚く。

「ザ・フォーリナー 復讐者」 - 公式ホームページ

「ザ・フォーリナー 復讐者」 - 映画.com