誰が言ったか忘れた(しかも長部日出雄氏の著作の孫引きだが)、「創作に必要なのは、長い孤独な時間である」という言がある。
ウォンカがチョコレートを創作しながら工場で過ごしたのも、そういう時間だったのだろう。
同じティム・バートン=ジョニー・デップの「シザーハンズ」も、作家(それも天才)と孤独についての物語だったが、あそこでは主人公は外に出てもついに孤独から逃れられず、白い雪だけをいわば“作品”として外に送るだけだったが、ここでは外の人が工場の中に招かれた中に雪が降る。ナレーターが誰なのか伏せておいてラストで明かす語り口とともに、ちょうどあの裏返しみたいになっているのはもちろん意図的だろう。
その変化には、当然作者たちが評価されて公私ともに充実しているのも反映しているはず。
作家の想像力と創造力は大人の中の子供から来るとはよく言われるが、ここに出てくるチャーリー以外の子供たちのこまっしゃくれていて子供らしさのかけらもないこと、呆れるばかり。
いくらなんでも警戒心がなさすぎないかとも思うが、一方で現実に少年少女が呆れる程警戒心のない行動をとって犯罪に巻き込まれたりしているものね。想像力がなかったら、警戒もしないのかもしれない。
ウォンカが工場でともに過ごした小人のウンパルンパが、もう実に千変万化してミュージカル・シーンなどを彩るのに目を見張る。映像技術的にも、ミュージカル・センスとしても物凄い創作力であり、アメリカ映画ならではの底力を久々に見せつける。もちろん、美術・衣装・特殊効果の素晴らしさは形容のしようもない。
セレブぶったガキどもがとっちめられる奇想天外なやり方とブラックなセンスには、個人的には拍手喝采もの。
「2001年宇宙の旅」のパロディというより祖述など、バートンあたりでないと許されないワザ。
ジョニー・デップがすごくヘンで才能溢れていて孤独とユーモアと悪趣味とをない交ぜて見せる。役作りには、ハワード・ヒューズと70年代のロックスターが入っているとのこと。その異様な顔色もだが、子供の顔の肌の感じなどほとんどプラスチックみたいに見えたりする。メイクや照明だけでなく、デジタル処理も加わっているのではないか。
(☆☆☆★★★)
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