prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

2009年8月に読んだ本

2009年08月31日 | 
prisoner's books2009年08月アイテム数:22
海軍 (中公文庫)獅子 文六08月05日{book['rank']
存在の耐えられない軽さミラン クンデラ08月12日{book['rank']
チェーホフ (岩波新書)浦 雅春08月14日{book['rank']
ブルックリン最終出口 (河出文庫)宮本 陽吉,ヒューバート・セルビー Jr,Hubert Jr. Selby08月14日{book['rank']
日の名残り (ハヤカワepi文庫)カズオ イシグロ08月14日{book['rank']
薔薇の名前〈上〉ウンベルト エーコ08月14日{book['rank']
薔薇の名前〈下〉ウンベルト エーコ08月14日{book['rank']
一人だけの軍隊 (ハヤカワ文庫 NV 299)デイヴィッド・マレル08月14日{book['rank']
バベットの晩餐会 (ちくま文庫)イサク ディーネセン08月14日{book['rank']
眺めのいい部屋 (ちくま文庫)エドワード・モーガン フォースター08月14日{book['rank']
呪われた町 (下) (集英社文庫)スティーヴン・キング08月14日{book['rank']
呪われた町 (上) (集英社文庫)スティーヴン・キング08月14日{book['rank']
コールドマウンテン〈下〉 (新潮文庫)チャールズ フレイジャー08月17日{book['rank']
コールドマウンテン〈上〉 (新潮文庫)チャールズ フレイジャー08月17日{book['rank']
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映画カメラマン 宮川一夫~没後10年 世界がみとめた映像の技~

2009年08月25日 | 映画
宮川家から「おとうと」のフィルムが見つかり、さてはオリジナルの銀残しプリントかと思ったらハズレというくだりは、ちょっとがっかり。
宮川が撮影した全カットのピースとデータを記録していたというのは有名だが、その実物を見られる。
稲垣浩から篠田正浩まで、実に広い世代の監督と組んできたのがわかる構成(その時の年齢がテロップで入る)。

「ブラッド・ブラザーズ」

2009年08月24日 | 舞台
シアタークリエにて。昔の芸術座を新装した劇場だが、椅子の間が狭くて奥まで行くのに全員に立ってもらわなくてはならない。映画館の椅子の方がゆったりしているのはどんなものか。

柴田恭平や国広富之も主演していたというから、ずいぶん長いこと上演されてきた演目。今度見たのは、武田真二と岡田浩輝が主演。テレビで見てるよりいい。
右手に五人組のバンドがいて、さまざまな楽器をとっかえひっかえしながら演奏する。

貧しい女が双子を産むが、二人は育てられないので一人を子供のできない金持ちの家に渡す、双子はそれと知らないまま仲良く育つが、次第に貧しい方が追い詰められていって、という悲劇。知らないで育った双子は、それと知った時に死ぬという予告が前半でしていて、全体に説明役が随所に現れるのが運命劇的。
知らないで見ていたが、舞台はリバプールなのだね。ビートルズの出身地で有名な。


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「ザ・スナイパー」

2009年08月23日 | 映画

手負いの殺し屋のモーガン・フリーマンに、ジョン・キューザックの高校教師親子が山の中で遭遇して素人ながら護送する羽目になり、そこにフリーマンの仲間たち(?)が追ってくるという設定がしっかりしていて、プロを相手にするのに親子が一応土地勘があるのが有利に働くあたりもなかなかうまい。
プロットの細かいツイストや、本筋と関係ないところでFBIと田舎警察がコーヒーをめぐってケンカするあたりのユーモアなど、小品らしい気のきいた作り。
田舎なものでヘリコプターが一機しか飛ばず、それを一味が乗っ取って使いまわし、撃ち落されるところでも爆発させないなど見た目の派手さを抑えてまめに生かしている。
(☆☆☆★)

「帰らない日々」

2009年08月22日 | 映画
ひき逃げしてしまった弁護士が、ひき逃げされた子供の遺族に捜査を依頼されるというシチュイエーションは興味をそそるけれど、その後どう展開していいのかわからなくなったようにストーリーが動かなくなり、そのあげく、あまり意外性もカタルシスもない終わり方をする。
考えてみると、ひき逃げされた方とした方の苦悩というのは、どっちかが増えればどっちかが減るという性格のものではないから、本来「対立」はしないのだね。基本的な設定に罠があったみたい。
(☆☆☆)



「3時10分、決断のとき」

2009年08月21日 | 映画
本格的に「男の誇り」や「無言で通じ合う男の心情」を見せる西部劇。
新宿ピカデリーで3時10分の回で観る。年輩の男多し。なぜ公開の規模が小さいかわかる。ただし、なんとほとんど満席(日本だと宣伝で「西部劇」という言葉を使うと客足が遠のくので、避ける場合があるとのこと)。

ラッセル・クロウの副官を演ずるベン・フォスターが、銃の扱いのマナーやコートの着こなしなど光るところを見せ、他の射撃の名手のメキシコ人ほかキャスティングのアンサンブルが好調。
クリスチャン・ベールは一枚看板は苦しいが「受け」の芝居をするといいみたい。脚が悪くてあんなに動けるのかとも思うが。北軍にいたにも関わらず個人的に「負け犬」の立場に追いやられた設定が細かい。

アパッチがちょっと出てきて、もちろん昔みたいに射的の的みたいにバタバタ殺すわけにはいかないにせよ、ちゃんと(?)殺している。インディアンの扱いが、ぐるっと一回りした観もあり。
ライフルのスコープを通した像が、一瞬だが昔のレンズの作りではこうかと思わせる歪み方をしている。
アメリカの大陸横断鉄道に携わったのが中国からの移民労働者だったのは有名な史実だが、その情景を映画で実際に見られたのは初めて。

中盤の荒野を横断するシークェンス、アップが多すぎて空間が十分出ないのは困る。
銃撃戦の音響効果がすごく、終盤の街の住人の行動は「真昼の決闘」をエスカレートさせたよう。
ピーター・フォンダが出ているのだが、誰だかまったくわからなかった。

WOWOWで録画しておいたオリジナル「決断の3時10分」を見るのが楽しみ。
(☆☆☆★★)


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「コネクテッド」

2009年08月20日 | 映画
「セルラー」の香港版リメーク。ハリウッド映画の香港リメークというのは初めてらしいけれど、サスペンス・アクションとしては近来の快作に仕上がった。

もともと「セルラー」は誘拐・監禁された女性が破壊された電話をなんとか修理してたまたまかけられた携帯の見ず知らずの持ち主に助けを求める、という、70年代だったら「激突!」風のテレビムービーになっていたかもしれない強力なワン・アイデアで全編を押し通した映画(ストーリーはラリー・コーエン)で、アイデアが強力なのでつまらなくはまずならない。

そこで満足せず、なんで警察に頼らないのだろうという疑問を警察側の事情も描きこむのと、香港映画得意のCGなしのアクションをあれよあれよとエスカレートさせて乗り切り、さらに携帯がいったん切れてしまってからまた連絡できるようになったり、いったんクライマックスが終わったと思わせてもう一発押したりと、ストーリーも大いに手をつくしている。

狭い道や崖といった地形をアクションに生かしたり、北京語と広東語の発音の違いをストーリー上の綾にしたりと、香港ならではの風俗もうまく取り入れている。エンド・タイトルのデザインなども気がきいてます。
(☆☆☆★★★)


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「ナイト ミュージアム 」

2009年08月19日 | 映画

博物館のちょっと気味悪い雰囲気と、骨格標本が動き出したら面白いだろうなという子供っぽい空想癖をうまく生かした。

予告編でディック・ヴァン・ダイクらしき人が出ていたので気になっていたのだが、らしきではなく当人。しかもミッキー・ルーニーと悪役仲間。調べてみると、1925年生まれだからこの映画出演時81歳、ルーニーは86歳。

ディックをキャスティングした側からすると、当然「メリー・ポピンズ」(1964)での自分が描いた絵の世界に飛び込んでしまう大道芸人役をいくらか頭に置いて、この博物館変じて遊園地になる世界に合わせたのだろう。

「刑事コロンボ 逆転の構図」(1974)の頃と、少なくともテレビ画面で見るとさほど変わっていないのだからびっくり。 
(☆☆☆★)


「スターダスト」

2009年08月18日 | 映画

最近猖獗をきわめてきたファンタジーはいささかゲーム的設定と展開に縛られることが多いけれど、ここでは七人の王子が殺しあっては幽霊になってくっついてまわったり、魔女が魔力を使うたび老けるのを気にしたりなど、キャラクター設定がユーモアの味付けが利いていて期待していないと案外と楽しめる。ヒーローがいささかショボい印象はあるが。

ロバート・デニーロの役名シェイクスピアが「ふりかざす槍」という意味だというのがトリビア的勉強になる。カメオ的出演だけれど、小熊みたいな可愛い顔をしたりして厚塗りの名演とは別の魅力を見せる。
(☆☆☆★)


「This film is not yet rated」

2009年08月17日 | 映画

アメリカの映倫に当たる機関MPAA(Motion Picture Association of America)の実態に迫ったドキュメンタリー。
それにしても、MPAAのレイティングを決めるメンバーが公表されておらず、他の映画と比べてレイティングに異を唱えるのも受け付けない、というのはいかにも不透明。レイティングされていない映画は、映画館で事実上上映できないので、MPAAは大きな権力を持つことになる。また、大手興行側の影響が強いのでインディペンデント系の映画(このThis film…自体がそうだが)には不利になる。

この映画の監督がメンバーを探っていくプロセスが大半を占めるが、MPAA側の弁護士が出てきてけんもほろろ的交渉にあたる不愉快。しかしこの映画もメンバーの氏名・年齢・家族構成まで暴露するのだから、いいのかとも思わせる。
そのせいか今ではメンバーは公表され、比較論も許されるようになったという。必ずキリスト教関係者が入っているというのが、ハリウッドはユダヤ人社会だからという偏見に対抗するため、というのがアメリカらしい。

日本でも映倫マークが入っていない映画は映画館で上映しない、というのが全興連(全国興行生活衛生同業組合連合会)の申し合わせで決まっているが、全興連の会長の大藏滿彦氏って、ピンク映画製作の大蔵映画社長ではないか。おもしろい国だね、日本って。

昔の話だが、「ツィゴイネルワイゼン」が移動式特設ドーム・シネマプラセットで上映された時には映倫を通していなかったらしい。特にひっかかるようなシーンもないが。

「縞模様のパジャマの少年」

2009年08月16日 | 映画
子供のイノセンスとナチスの残虐とのコントラストから成るドラマだが、通常だったらイノセンスの喪失の話になるところを(ルイ・マルの「さよなら子供たち」ほか)、ここではイノセンスは傷つかず、残酷な結末に至る。若干、イノセンスというより無知、バカに近いのではないかと思わせるところもあるが。
クライマックスにかかるジェームズ・ホーナーの音楽が強烈。

ナチスの将校の家族の目から父親の「仕事」を見るという作りが新鮮。妻と娘、息子で全部捕らえ方が違っている。
一番ナチスらしい「美しい獣」風の若い将校の末路などにも、複眼的な作りがうかがえる。

父親が作るナチスの宣伝映画の作りを見ていると、今のメディアのバイアス報道がどれほど恐ろしい結果を生むかも考えさせたりもする。
(☆☆☆★★)


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「扉をたたく人」

2009年08月15日 | 映画
不法移民と、9.11以降彼らを冷たく追い返すようになったアメリカの対応を扱った映画だが、翻って考えてみるとこういうドラマが生まれる分、アメリカはまだ移民と接しているとも言える。翻って考えると、我が日本ではドラマが生まれる以前の段階で隔離して、ほとんど「いないことになっている」ようなものですからね。

そういう大きなテーマと同時に、平行して展開するリチャード・ジェンキンス扮する大学教授が何かやっているようで同じことの繰り返しばかりで何もしていない自らの生活の殻を破っていく「小さな」ドラマは、身に迫るものがある。

コミュニケーションの手段に西アフリカの打楽器のジャンべを使ったのが作り方としてうまいところで、映画にリズムが導入されるのと、見るからにアフリカの楽器なので国境を越える表現になるのがわかりやすい。
移民局のガラス越しに即興のセッションが始まる場面は、短いが感動的。冒頭のドアを叩いて入ってくるピアノ教師とそりが合わず追い返すところから、主人公がどれくらい遠いところに来たかをリズムひとつで端的にわからせる。

The visitorを「扉をたたく人」とはうまく訳した。
お盆休み中とはいえ、この地味な映画が恵比寿ガーデンプレイスで満席になっていたのに驚く。
(☆☆☆★★)


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「アドレナリン」

2009年08月14日 | 映画
アドレナリン [DVD]

東宝

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見終えると、時間のムダだったことに気づく。
もともとアドレナリンを出し続けてないと死ぬという設定自体あまり説得力がないのだが、その出し続けてるための「手」が強引というより乱暴で、病院で他の患者に迷惑かけて暴れるのには索然となる。そのあげくに、あのオチはないよ。

テンポを良くするのと、画面をがちゃがちゃいじるのとは別だろう。

この間見た、同じジェイソン・ステイサム主演の「トランスポーター」でも悪役が東洋人だったが、何か含むものでもあるのか。
(☆☆★★)


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「ラスベガスをぶっつぶせ」

2009年08月13日 | 映画

アメリカの大学進学事情のシビアさがよくわかる。奨学金が出なくて学資ローンに頼ると、卒業後に返済に苦しんで高学歴のワーキングプアになる例も多いっていうしね。すべての価値観がマネーひとつに絞り込まれたあげく、ちょっとでも寄り道すると貧乏から抜けられなくなるみたい。よその国の話ではないが。

だから、主人公が優秀なる頭脳を手っ取り早く生かしてベガスで大儲けするというのは、たとえばウォール街に元理学系の秀才が就職して「金融工学」なんて作り出したのとも共通しているのだろう。
もっとも、金儲けのもとになる変数変換理論が解説される場面があるのだけれど、なんだか腑に落ちない。根本的なところですっぽ抜けやゴマカシがあるのではないか。

稼いだ金を預金しないで、屋根裏に隠しているというのは税金対策かな。いくらなんでも無用心だと思うのだが。
実際の話としては、数学を生かしてベガスで荒稼ぎした学生たちは映画のように白人ではなく、東洋系だったらしい。映画では一人だけ東洋系を申し訳のように出していましたけれどね。

カジノのシーンで、ステディーカム移動やトランプやチップのどアップのモンタージュをやたらと重ねているのは、動きの少ないギャンブルの描写に変化をつけるためかもしれないが、ちょっと目にうるさい。
ローレンス・フィッシュバーンのカジノの見張り番が貫禄で、しかも割と人を食った役。
(☆☆☆★)


「山形スクリーム」

2009年08月12日 | 映画
これまでの竹中直人監督作では一番エンタテインメント寄りの作りなのだが、寄ってこられる分、引いてしまう。

成海璃子がずいぶん顔が丸く写っている。カットによっては吹出物が出ていたりで、ちょっと撮り方が荒い気がする。
「お父さんだよ」と父親の声が連呼するのが着メロ代わり、というのは可笑しいには違いないけれど、いやなら別の着メロにすればいいのではないか。お父さんがくっついて歩いているわけではないのだし。

ホラー・コメディとするとそれほど汚らしく作っていないのは、思い切りがよくない感じ。ベタな笑いで通すのって難しい。

音楽になぜかヘンデルの「サラバンド」が使われている。「バリー・リンドン」のオーケストラ編曲版で有名になった曲だけれど、この場合何のために使われているのか、意味不明。
その他、いろいろな映画の引用があるのはわかるけれど、パロディになっているわけではない。
(☆☆★★★)


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