prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(13)

2005年08月07日 | フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(シナリオ)
145 小人の事務所
秋月「ただいま」
と、手ぶらになって戻ってくる。
あれ、という表情。
田中がソファに落ちつかずに座っている。
田中「スタジオに戻ったわけだろ」
小人「ええ」
田中「なんでその後がわからないんだ」
小人「撮影が終わって解散したら、誰がどこにいるかなんていちいち分かりません」
田中「もし、あれが見つからなかったら、映画は公開させん」
小人「なんでですか」
田中「わしの恥を天下にさらすことになるじゃないか」
秋月「(口を出す)公開したって、誰もあなたの二号だなんて知りませんよ」
田中「それもそうだが」
秋月「手切れ金なしで別れられたと思えばいいじゃないですか」
田中「そうだが」
きっと小人の方に向き直り、 田中「絶対当てろ。
女は逃げるわ、金は戻らないわで黙っていると思うなよ」

146 前線座・外
ぽつりぽつり集まってくる客たち。
変装した清水が入る。

147 同・客席
アナウンス「…お客さまにご案内申しあげます。
本日の上映は終了いたしましたが、もう一本、新作映画を上映いたします。
ご用とお急ぎでないお客様は、どうぞそのままお席でお待ちください。
なお、上映終了後、簡単なアンケートをとらせていただきますので、ご了承ください」
ぱらぱらよりちょっと上という程度の入り。
清水、妙な顔をする。
溝口が席についている。
溝口も清水に気づくが、互いに会釈も交わさない。
清水、どんとそのすぐ横に座る。
アナウンス「大変長らくお待たせいたしました。
ただいまよりアメリカ映画『江戸のアメリカ人』を上映いたします。
最後までごゆっくりご鑑賞ください」
場内、暗くなる。

148 同・スクリーン
ぐわぁーん、と銅羅が鳴り響き、琴の爪弾きが続く中国風とその他東洋趣味がごちゃごちゃになった音楽。
仏像のアップに文字がだぶる。
“THE AMERICAN IN OEDO” と、原色でタイトルが出る。

149 同・客席
清水、まじまじとスクリーンを見据 えている。
溝口、迷惑そうにしている。

150 同・スクリーン
黒船が沖合いに浮かんでいる。
へたくそで、絵だと一目でわかる。
女の英語のN・字幕「…これは私と、私が愛し、また私を愛したあるアメリカ人との物語です。
私はここにありのまま、包み隠さずに私たちの物語を語ろうと思います。
たとえ、誰も私たちの関係を認めなくても」

151 同・客席
清水「どこでこの試写会のこと聞いたんです」
溝口「どこでも噂になってるよ」
前に座っていた客(四方)「(振り返って)うるさいよ」

152 同・スクリーン

152―1 ゲイシャハウス(カラー)
イォシフが座敷の真ん中につくられた風呂に浸かっている。
湯気だけのインチキ風呂だが、スクリーンに写ると本物臭く見える。
そこに大平がやってきて、いきなりはらりと着物を脱いで風呂桶に入る。

153 同・客席 四方「(失笑する)」

154 同・スクリーン

154―1 ゲイシャハウス(カラー)
N・字幕「…私は彼に身上話をしました」
画面、もやもやとして、回想に入る。
それまでカラーだったのが、白黒になる。

154―2 百姓屋(白黒)
しきりとめそめそしている貧しい姿の大平。
ちゃりん、とその前に小判が投げ出される。
(最初に撮影された白黒フィルムが回想シーンとして使われる) 女買いの声「よし、これであんたはうちの女郎だ」

155 同・客席
清水「な、なによこれ」
溝口「(うるさいな)」
清水「見たことある、ここ」
四方「(振り向く)」
清水「インチキよ、やっぱり。
みんな、だまされちゃ駄目よ」
156 同・スクリーン

156―1 ゲイシャハウス(カラー)
画面、もやもやしてから現在の場面に戻る。
大平「(英語)…日本人の秘密を教えましょう」
イォシフの後ろ姿は団による吹き替え。
どうかしてピントが合うと、髪がけば立っているのでそう分かる。
大平「(英語)私たちは外人が日本を誤解すると喜ぶのです。
日本は特別な国で、ガイジンにそんなに簡単に分かってたまるかと思っているからです」

157 同・スクリーン
の前に現れた清水、手を振って、(見てはいけません!)とゼスチュ アする。
その体をまだらに光が彩る。

158 同・ロビー
仁科にたたき出される清水。

159 同・スクリーン
メ劇終モと出ている。
幕が閉じていく。

160 同・出入口
仁科「お客さん」
と言われているのを無視してぷりぷりした様子で出ていく溝口。
×   ×
西川(男の客)「タイトルでザ・アメリカンっていうのはおかしくないかな。
ア・アメリカンじゃないの?」
東野(女の客)「“ザ”じゃなくて“ジ”。
“ア”じゃなくて“アン”アメリカン」
とか言いながら出てくる。
仁科がアンケートを集めている。
見ていくうちに、花山のように前髪が垂れていく。

161 山本の事務所
仁科「(アンケートを見ながら)ひどい評判ですね」
と、言いながら入ってくる。
清水「当たり前よ」
仁科、不思議そうな顔で室内を見渡す。
山本、小人、秋月、清水がいる。
清水「(山本に)なんでこんなものやるんですか。
もっといい映画をやりなさい」
山本「(うんざりしながら)それを言いに来たんですか」
清水「あなたがこんなものやるから、この人の会社はつぶれないのよ」
山本「つぶれないって、結構なことじゃありませんか」
清水「わざとつぶして金持って逃げるつもりだったのよ」
山本「(顔つきが変わる)…それは、穏やかじゃありませんね。
何か証拠がありますか」
清水「帳簿を見たわ」
秋月「どうやって、ですか」
清水「机の中にあったのを」
秋月「帳簿が机の中にあった時は、部屋の鍵をかけてましたよ」
清水「…そうね」
秋月「忍びこんで読んだんですか」
清水「(しゃあしゃあと)そうよ」
秋月「あっきれた。
あなたのやったことは、れっきとした犯罪ですよ」
清水「(全然悪いと思っていない)あなたたちが悪いことしてるんでしょうが」
秋月「(うんざりしてくる)」
清水「許せないことです」
仁科、腕まくりする。

162 前線座・外
仁科に叩き出される清水。

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