prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(12)

2005年08月07日 | フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(シナリオ)
128 走るキャデラック・中 清水、溝口と言い争っている。
清水「…何か隠しているのがわかったでしょう」
溝口「もういいよ、面倒くさい」
清水「できた映画だけ見てああだこうだ言ってればいいってもんじゃないでしょう」
溝口「(むっとして)中途半端に首をつっこめばいいってものでもないでしょう」
清水「わかりました。
もう頼みません」
田中「(口をはさむ)ところで」
清水「なんです」
田中「いつまで乗ってるのかね」
清水「ここは?」
浅間「3丁目です」
清水「4丁目まで行って」
溝口「私は5丁目」

129 撮影所・第6ステージ
黒井「(団に頼んでいる)…頼むよ。
頭を金髪に脱色して後ろから撮れば、外人の吹き替えになる」
団「かつらじゃだめですか」
黒井「金髪のかつらなんてあるか」
乱痴気騒ぎでみんなばらばらにされてしまっているかつら。
団「女の方はどうします」
黒井「他の女から適当に選ぶ」

130 小人の事務所(夜)
近づく清水。
明かりが消えており、ドアをノックしても返事はない。

131 同・中
鍵が壊れていた窓が外から開けられる。
こっそり入ってくる清水。
机の上を調べ、さらに引き出しの中を調べる。
清水「…(秋月がつっこんだままにした書類を見つける)」

132 撮影所・第6ステージ
三人娘に声をかけてまわる黒井。
ことごとく意地悪するように首を振る。

133 同・控え室1
戻ってきた団、中に人が入っている のに戸惑う。
「あしたからだから、もう荷物運びこんじゃいましたよ」
と、言われ、その荷物の量に圧倒される。
団「あしたの朝九時まではうちのものですよ」

134 同・控え室2
こっちは荷物の代わりに人がすでにごしゃごしゃ入っている。
団、手に持った瓶(脱色剤)を持て余している。
そのラベルの成分表に「アンモニア」
の文字。

135 同・第6ステージ
もう夜半を過ぎている。
疲れてチンケな扮装のままでこっくりこっくり舟を漕いでいる者もちらほら見かける。
団が水の入ったバケツと洗面器と瓶を持ってそっと入ってくる。
瓶の中身を洗面器にあけ、そっと頭につける。
舟を漕いでいた一人がひくひくと鼻を動めかして目をさます。
「なんだ、この臭いは」
「小便か」
「アンモニアの臭いだ」
「これはたまらん」
「風を入れろ」
扉を開けた位では間に合わない。
真っ先に団自身が逃げ出す。
続いて全員外に避難する。

136 同・構内
扶桑「(空しい権威を見せようと)休憩。
休憩」
夜風に吹かれながら、空気が入れ替わるのを待つ一同。
自分から逃げようと真面目な顔で走り回る団。

137 同・第6ステージ
小人がアンモニアをものともせず、布を振り回して空気を入れ替えようとしている。

138 同・構内
脱色したあと洗った頭を拭きながら団が戻ってくる。
髪がパンクロッカーのようにけば立っている。
明かりがさしてくる。
一同、光に誘われて目をあげる。
未明の澄んだ空気の中、本物の富士山に朝日がさしてくる。
インチキな日本趣味で身を固めた一同、なんともいえない顔をしてその威容に見入る。
扶桑、傍らに大平がいるのに気づく。
扶桑「あれ?」
大平「戻ってきちゃった」
扶桑「いいの?」
大平「いいの」
扶桑「一つ聞きたいんだが。
なんで馬鹿の真似してた」
大平「楽だから」
扶桑「あんな芝居して、今のパトロンから別れるつもり?」
大平「別に目覚めたわけじゃないわよ」
小人「(ステージから現れ)続きだ」

139 同・第6ステージ
ぞろぞろ戻ってくる一同。
×   ×
髪を脱色した団の後ろからなめて、 大平を撮っている。
×   ×
×をつけられる台本。
×   ×
撮影が進む。

140 時計
9時を指している。

141 撮影所・第6ステージ
扉が開き、新しい組と入れ違いに出ていく一同。
祭の後。

142 同・正門
ぞろぞろ出ていく一同。
まだつったっている花山。
全員出て行ったあとで、やっととことこ入っていく。

143 小人の事務所
ビラを抱えて出ていく秋月。

144 「白樺」
ひそひそ声で噂している客たち。
客1「…うんと日本を勘違いして描いた映画が来てるんだって」
客2「日本人が嘘ばかり吹き込んだからだっていうよ」
客3「いいじゃない、別に。
小うるせえこと言うなよ」
客4「秘密試写会をやるらしいんだけど、来る?」
客5「…やるのわかってたら、秘密じゃないじゃない」
その話を聞き、くるりと振り向く清水。

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