prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ガチ星」

2023年06月30日 | 映画
「サンクチュアリ」で注目を集めている江口カン監督、金沢知樹脚本による旧作。
こちらもおよそ優等生とは縁遠い元プロ野球選手の競輪選手が主人公で、じたばたするところが良くも悪くもみどころ。
本当にガチで自転車を漕いでいるところが見どころ。

自転車が昇る坂道を望遠レンズで撮っていて、ほとんど壁みたいにそそり立っている。コーチがまた「フルメタル・ジャケット」のリー・アーメイみたいに本気で罵倒してくる。

転倒した頭部を後続の自転車の車輪が轢いていくあたり、エグい。




「リバー、流れないでよ」

2023年06月29日 | 映画
タイムループものというかタイムリープものというか、約2分間の間に時間がぐるぐる繰り返すというせわしない設定で、しかもその2分間分はひとつづきのワンカットで撮っている。
登場人物たちの意識はつながっており、旅館の従業員と客というコンパクトな設定にしたのが上手い。

振り出しに戻るたびに仲居さん(藤谷理子)の姿になって、その撮り方がまた細かくずらしている。

場面が変わると雪が降ってきたりして、しかも降っている範囲が広くなったりする。
このあたりのさりげないスケール感の出し方がいい。
大詰めでカットが初めて割られるのも効いている。





「THE WITCH 魔女 増殖」

2023年06月28日 | 映画
最近は続編が配信オンリーの正編を差し置いて劇場公開されることが多く、「呪呪呪」がそうだったが、これも「魔女 witch」の続編。
シリーズものを途中から見るとなると困るのは設定が中途半端になることで、これも例外ではない。

このキャラクターどういう設定だったっけと当惑するところが珍しくなく、ましてさらに続きがあるとなると、見せ場は派手なのだけれど置いてけぼりをくった印象が強い。





「タイラー・レイク 命の奪還2」

2023年06月27日 | 映画
体感ムービーというか、長回しでえんえんとアクションシーンを追いかけ続けるのは第1作から引き継いでいるわけだけれど、敵味方ともに人数が増えていて、段取りどうやっているのだろうかと考えだすと、まあ目がくらむ。

逆に言うとほとんどそれだけなのだが、それが問題あるかというとないとしか言いようがない。




「テリファー 終わらない惨劇」

2023年06月26日 | 映画
残虐描写に緩い日本で18禁って珍しいなと思っていたら、それもムリはない描写の連続。
2時間18分と長いが、あまりストーリーは凝っておらず、ひとつひとつの描写がこってりと長い。かといってだらだら長いわけではなく、ピエロらしく笑わせたりしてメリハリは効いている。

ピエロのメイクの下の肌が黒い気がしたが、その他の胴体部分は白い。どうなっているのか。





「ワイルド・スピード ファイヤーブースト」

2023年06月24日 | 映画
見せ場はてんこ盛りでおおいに満足したが、「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」式の途中で終わってしまう感じも強くて、あれ、ここで終わるのかと思った。

車をフォローすると共に微妙に先走って移動するようなカメラワークの分、ヴォリュームアップしている。

爆弾が巨大なボウリングの球のようにえんえんと転がっていくあたり、素朴な疑問だけれどどうやって撮ったのかと思う。





「シュガーランドの亡霊たち」

2023年06月23日 | 映画
大学を出てからIS(イスラム国)に急激に傾倒していったマークという仮名の黒人学生の高校の同級生が、それぞれスパイダーマンとかバズ・ライトイヤーといったアメリカ的なキャラクターの仮面をつけてインタビューに応じるのがまず皮肉。
なぜ傾倒していったのか、思うように就職できなかったかららしいが、はっきりしない。
シュガーランドの高校では東洋人は南アジアと東アジアで違う扱いになるらしい。黒人はマークひとりだけだった。
マークがスパイなのか過激派なのか、スパイの方がまだしもだと語る同級生ももいる。




「ゲームチェンジャー スポーツ栄養学の真実」

2023年06月22日 | 映画
一言で言うと、肉食と菜食とではおおかたの予想に反して菜食の方が筋肉がつくということ。
それ自体には別に異論はないが、ムキムキマッチョな連中ばかり出てくるもので、人種あるいは体質の違いってあるんじゃないのと思った。






「1922」

2023年06月21日 | 映画
スティーブン・キング原作。
ボタンのかけ違いというのか、夫婦と15歳になる一人息子が農場をやっていて、妻が農場を売ろうというのに対して夫が頑固に反対する、というところから始まり、エスカレートして妻が離婚して息子を連れていくと言い出し、息子は恋人と引き離されたくない一心で半ば父親のもくろみ通り母親を殺す、というあたりから雪崩をうって陰惨な見せ場の連続になる。

元はと言えば夫が頑固に反対するのが悪いので、どれだけ陰惨な目を会おうと自業自得というか、むしろ人を巻き込むなよな、と思わせる。

ドラマそのものは現実的なのだが、途中から幽霊やネズミの大群などの幻想的な要素が入ってくる。
ネズミの大群(おそらくCGではなく実写)や牛など生々しい。





「今求められるミニマリズム」

2023年06月21日 | 映画
ミニマリズムって、要するに断捨離でしょう。モノが多すぎるので適度に処分するようにしたということは、モノがなければできないことだと思うのだが。

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「ロレーナ サンダル履きのランナー」

2023年06月20日 | 映画
裸足とサンダルとの違いこそあるが、かつてのエチオピアのアベベ・ビキラがこうだっただろうかと思わせる。
ロレーナの表情が一貫して堅いのも、走る哲人と言われたアベベを彷彿させる。

野山をサンダルで走る方が舗装した道をスニーカーで走るより早く走れるのだろうかと思った。
昔、古尾谷雅人が「丑三つの村」で地下足袋とゲートルで走りまわるのに、スニーカーなどよりよほど走りやすいと話していた。どこまで本当か知らないが。

生活は貧しく、ほぼ掘っ立て小屋のような家で、大会の賞金とか入らないのだろうかと思った。




「ヴィレッジ」

2023年06月19日 | 映画
ゴミ処理場建設に反対したため圧力をかけられたあげく家に火をつけ自殺した父親を持つ文字通り村八分の横浜流星(自身そのゴミ処理場で働いているというのがアイロニカル)が、村に帰ってきた黒木華と図体のでかい村人一ノ瀬ワタルとが三角関係になる。
能面をつけた村人たちが列をなして松明の灯りの中をねり歩く情景がおどろおどろしく、母屋に廊下がつなげられた実際の建物が能楽堂の構造になぞらえてある。
流星がきれいごとの環境問題の顔になる、上げておいて落とすという展開も皮肉。

ゴミ処理場の中に穴がぽかっと開いている情景がなんとなく星新一「おーい、でてこーい」の穴を思い出した。
古田新太の母親の背景の書も印象的。
テレビがブラウン管なもので、少し昔の設定なのかと思った。美術は部谷京子。




「私の帰る場所」

2023年06月18日 | 映画
貧富の格差が広がって上がった家賃を払いきれなくなり、やむなくホームレスになる。このやむなくというところが勘所で、家主にしても収入が減るのは困るわけだし、本質的に資本主義の行き着くところはこういうところなのであって、日本もいずれはこうなるのだろうかなと思わせる。

暴力と精神疾患がつきものなのも一緒。ただ、日本では見えないようになっているのが違う。
がちがちの社会派的な作りではなく。音楽と踊りがさらっと挿入される。

ホームレスのテントの向こうに高層ビルが立ち並んでいるのを入れ込んで撮ったり、微速度撮影(「コヤニスカッティ」を思い出した)を多用したりと、カメラワークが技巧的。





「ハンガー 飽くなき食への道」

2023年06月17日 | 映画
雲の上にいるようなシェフのポールが厳格さの極みみたいで、タイはもともと貧富の差が大きいのだが、ポールが貧しい生まれから金持ちになったようで実は金持ちに仕えているに過ぎないと思わせる。

そして金持ちというのは本質的に飽食していてより珍しくて貴重な食材と名人芸的な調理法を珍重しているに過ぎず、惜し気もなく貴重な食材を捨ててしまうたびにああ勿体ない、食べられないことないだろうにと思わずにいられなかった。

中盤からのツイスト(ひねり)の連続に比べて、貧しくても暖かい家庭があるという結論は平凡に思える。







「エルピス ―希望 あるいは災い」

2023年06月16日 | 国内ドラマ
長澤まさみと眞栄田郷敦のふたりが代わりばんこに正義感にかられたり日和ったりする(ナレーションも交代する)、裏を返すと追求の手が結果として途切れないで続く。
どんな組織も一枚岩ではありえず良くも悪くも全体として動くというセリフがあるが、その現れだろう。

眞栄田郷敦が三浦透子に尻尾をつかまれ、あとになると眞栄田郷敦がその他大勢の女の子の尻尾をつかむ(あとでデキてるのがわかる)といった具合にそうとうアモラルな手を使っている。

長澤まさみが独断で逆転の一発を放ってから、テレビ局側が丸め込みにかかり、長澤もいつの間にか引きずられるあたり、スリリング。

レイプ犯が警察から手を回してもみ消してもらったというのは明らかに山口敬之が伊藤詩織を準強姦した事件をもとにしたもの。
永山瑛太はワンシーンだけの出演だけだが印象的。

勧善懲悪で終わらせないのはむしろ当然なのだが、今の政治状況からするとこれでもまだ甘いということになるだろうが、そうそう手を広げられないだろうとも思う。