prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

2009年2月に読んだ本

2009年02月28日 | 
prisoner's books2009年02月アイテム数:13
映画論講義蓮實 重彦02月02日{book['rank']
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ハイビジョン特集「サウンド・オブ・ミュージック マリアが語る一家の物語」

2009年02月28日 | 映画
タイトル通り、義理の母親であるマリアと偶然名前が同じ92歳になる次女マリアのインタビューを軸に、映画では描かれなかったアメリカでのトラップ一家の活動を多く収録した内容。長女は実際はアガーテ(これまた93歳で健在)というのをリーズル、次女はマリアをルイーズといった具合に映画では名前が変えている。

一家に使えていた執事がナチス党員で(映画でもちらっと示されていたが)、しかしもうすぐ国境が封鎖されますと亡命をうながしたという。

一家の実際の歌や演奏の映像を見られたのが収穫。リコーダーやチェロなどの伴奏にした完全にヨーロッパ的なスタイルで、アメリカでは「セックスアピールがありません」と言われたという。何しろ24歳になって初めて化粧したというのだから。

第二次大戦が始まると、ナチスに併合されたオーストリア出身でドイツ語を話す一家は敵性国民ではないかと疑われてFBIの捜索を受けたとか、二人の息子はアメリカに忠誠を示すためヨーロッパ戦線に出征したというのにびっくり。

90過ぎてもよく笑い歌ってみせ、30年宣教師として赴任したパブア・ニューギニアの教師志望の青年を養子にして希望をかなえさせた、というマリアさんは、血はつながっていなくてもなるほど親子だと思わせる。


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滝田洋二郎監督出演番組

2009年02月27日 | 映画
TBSニュース23を見たら、案の定というか、滝田監督の作品暦からピンク映画をきれいさっぱり外していた。そのくせ、税金も払えない、風呂にも入れない時期があったことは伝えている。ほかの番組は見ていないが、イヤな感じ。

それにしても、前にも書いたと思うが、成人映画の世界から一流監督を輩出してる国って、日本以外にどの程度あるのかな。ヌード映画という程度だったらコッポラとかジョナサン・デミとかロジャー・コーマン学校の例はありますけどね。完全な18歳未満お断りの映画となると、あまり思いつかない。


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「感染列島」

2009年02月21日 | 映画
「アウトブレイク」みたいにやたら調子よく病気がすっぱり防げてオシマイ、という具合に割り切っていないのはいいけれど、その分どうドラマを組み立てるのか、と心配になったが意外と(予想の範疇だが)よくしのいだ。

あまり医者あるいは人間の力ではとても及ばないような天災という描き方で、助かるのも割りと運次第という感じ。実際そうだと思うし、日本的なあきらめのよさというつもりかもしれない。

カンニング竹山とか爆笑問題の田中といったキャスティングはまじめにやっていても白けます。ここで竹山の怒り芸を見せても仕方ないと思うのだが。TBSの吉川美代子アナがニュースを読んでいるように製作テレビ会社の社員の出演を見ると、「ガメラ」一作目あたりではリアリティを増していたけれど、いいかげんメディアだけが世界かよと鼻につく。

瀬々敬久監督はピンク出身で低予算スリラーでおっと思うようなものを作っていたが(「冷血の罠」とか)、ここではそれほど色を出していない。
(☆☆☆)


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「チェ 39歳 別れの手紙」

2009年02月19日 | 映画
ボリビアに革命の旅を続けに行ったゲバラが敗走を重ねて死んでいくのをやたら淡々と描いていて、大状況はラジオを通してくらいしか描かれないので、正直かなりかったるい。
悲壮美を謳いあげているわけでもないし、なぜ死後革命のイコンになったのか、という理由がわかるとも思えない。
森の中を奇妙に明るく撮った撮影技術はちょっと新鮮。
(☆☆☆)


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「コルチャック先生」

2009年02月18日 | 映画

ワイダ作品は苦手とわかっていてまた見て、うーんやっぱり合わない。
立派な人を描いているのはわかるし、多分人には勧めるのだろうけれど、学校の授業で見せられてるみたい。
アンゲロプロスが来日して黒澤明にワイダは好きですかと詰め寄るようにして聞いて、あまり好きじゃないと言質を引き出したら、安心したように対談を始めた、なんて話があるけれど(複数の証言を組み合わせるとそうなる)。

「近頃なぜかチャールストン」

2009年02月16日 | 映画

日本の中に「ヤマタイ国」という別の独立国を勝手に作って、それぞれ大臣に就任してしまう老人たちの話。年金も健康保険も、国から与えられるものはみんな拒絶してしまうあたり、岡本喜八らしい「お国」嫌いっぷり。随所に見せるカッティングのリズムは快感だけれど、全体とするとどうも間延びしているのは残念。
最近のように国家権力の内実のお粗末さがぼろぼろ露呈してくると、かえって風刺が効きにくくなっているみたい。

老人といってもまだ元気で(岸田森など、実年齢は41歳だ。ただしこの二年後に亡くなっている)、本当に年とったらこうはならないなと思って計算してみたら、岡本喜八この時57歳。サラリーマンとしても定年前だ。

ドジな刑事役の本田博太郎が、髪型も服装もまるっきりルパン三世。銭形警部の役をルパンの格好でやってるみたい。

始まって数分でキャスト一覧のタイトルが出るが、スタッフのは出ない。そのまま映画が進行して24分目、もう忘れた頃になってスタッフ一覧が出る。こんなタイトルの出し方、見たことない。
(☆☆☆★)


「クレーマー case1&2」

2009年02月15日 | 映画
クレーマー case1&2 DVD-BOX

アートポート

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どっちもクレーマーというより完全な異常者なのでリアルな怖さっていうのはあまりない作り物っぽいホラーで、その上主人公がまともに反撃しないものだからどうにも鬱陶しい。あそこまで非常識な真似をしたら、警察に任せられると思うよ。

クレーマーとかモンスター・ペアレントを取り上げた本とかテレビが増えたけれど、「こんな非常識な人がいる」という視点でばかり扱うのはどんなものか。その背後にある、自分を棚に上げて吊るし上げる「世間」の体質と、それと裏腹の無責任体制にまで踏み込まないと、どうも納得できない。
(☆☆★)


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「女の平和」

2009年02月14日 | Weblog
下北沢 「劇」小劇場
出演 福寿奈央, 斉藤範子, 枝元萌 他
脚本 アリストパネス
演出 西沢栄治

ギリシャ悲劇ではなく、ギリシャ喜劇。一時間という簡明な上演時間が嬉しい。

アテネとスパルタの男たちが戦争ばかりしているので女たちが怒って、戦争をやめない限りやらせないとセックスをボイコットしていまい、たまらず男たちは降参、平和が来るという人を食った話。
むりやりやったらどうするのかという理由付けは苦しいが。

女4人男4人のシンメトリックな人物配置。地名人名はギリシャ風でも女は全員和服姿。
後半、男たちが全員ボッキした男根の張り方を股間につけているのがロコツで可笑しい。


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「007/慰めの報酬」

2009年02月13日 | 映画
プロットがなんだかガタピシしていて、ボンド周辺のお話に尺を取られ、悪役がどんな悪いことをしようとしていたのか、実現したらどんな恐ろしいことになるのか、現実にも水資源を独占して金儲けに利用している資本家はいるのにも関わらず、あんまりしっかり描かれない。やっつけ方もぱっとしないし。ダニエル・クレイグが悪役にまわった方が迫力出たんじゃないのかと言いたくなる。

アクション・シーンも分量多い割に、相手があらかじめきちんと描かれているわけではなくてあっさり死んでしまうのが多いのと、ちょっとカットを割り過ぎ(たとえば競馬となんでカットバックする必要があったのか?)で、どうもスカッとしない。

007から遊びがなくなってリアルにシリアスになりすぎる、というのもちょっと困ったもの。
(☆☆☆)


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神韻芸術団

2009年02月11日 | Weblog
タダ券もらって行ったのだが、オープニングで引いた。
幸福の科学がスポンサーになった映画「太陽の法」の予告編やポスター、本のカバーなどをいくつも見ているのだが、黄色っぽい色彩といい、でかい太陽を中央にでんと置いてまわりに妙に整然と人が配置されたデザインといい、すごく通俗的な格好をした仏がぞろぞろと現れるところといい、なんかあれとセンスが似ているのだ。これは法輪功絡みらしいのだが、カミサマ関係はセンスが似るものらしい。

しきりと中国五千年(いくらなんでもサバ読みすぎ)を強調して、その割りにこちらが知らないアイテムというのが一向に出てこない。李白とか孫悟空とか有名どころばかりで、MCが中国の大詩人は次のうち誰でしょう、1 北原白秋 2 李白 3 シェークスピア という寒いジョークを飛ばすのにも参った。それに、聞きかじりだが中国文明は「神」より「天」を至上とするものではないのかなあ。
ひとつ出し物が終わるといちいち幕を下ろしてMCが現れてつなぐという構成も平板そのもの。

中国の伝統芸能というから、京劇みたいなものかと期待したのだが、あのトンボを切るとき重力がなくなるような人間離れした技には及ぶべくもない。京劇や雑技団の技に比べたら、木戸銭とれなかったら食いっぱぐれるという迫力のない芸と写る。

法輪功が中国共産党に弾圧されているのは許しがたいことには違いないが、だからといって「味方」しましょうかというと、これ見ると二の足を踏む。

帰りに、会場の外ですごい剣幕のおばさん(男かと思った)がチラシをまこうとして警備員に制止されていた。何事だか知らないが、触らぬ神に祟りなし的直感がひしひしとする。考えてみると、公演がもう近いのに、駅でチラシを配っていたところからして、変。

「誰も守れない」

2009年02月10日 | 映画
「誰も守ってくれない」で、佐藤浩市の愛人なのか、妻が別居していたのはそのせいかと思わせるようないやに気をもたせた出方をしていた木村佳乃が、実は犯罪被害者の家族として佐藤刑事の保護の対象になっていたのでした、それで協力したのですという話。もっとも、「守ってくれない」のような15歳の少女ではなく、精神科医で実家も金持ちという役だから、あまり同情は買わない。また、被害者の方も一方的な被害者ではなく、その上、犯罪の動機があってないようなものだから、カタルシスは乏しい。

ラストシーンは劇場版のオープニングとだぶっていて、あそこでとっつかまっていた毛皮着たハゲが何者なのか、なぜいたぶられていたかわかる仕掛け。

その他、松田龍平のシャブ漬けのエピソードほか、劇場版とつながっていてオフになっている部分が見られるけれど、全体としてはとっちらかった印象。
どの程度劇場用の動員に役立ったか、鑑賞を決めた情報は、『映画館の予告・ポスターなど』 25・7% 『テレビCM』 16・5% 土曜プレミア『「誰も守れない」を見て』 13・1%だから、まあ役立ったというべきか。


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「誰も守ってくれない」

2009年02月09日 | 映画
ほとんどの登場人物が家族と一緒の場面がなく、家族は声だけ、写真だけといった出方をしていることが多く、それでいて脇役の新聞記者にまでたとえば子供が今どうなっているのか描きこんでいて、主役二人が擬似父娘なのとコントラストになっている。

おそろしく手早く官僚的に容疑者の両親を離婚させて再婚させ、苗字を妻方のものに変えて身元を隠す、というあたり、嘘の身分証明はさせるわけにはいかないが、身元は隠さないといけないという警察のお役所としての事情がうかがえる。

新聞記者の抜け駆け取材の悪質さを描いているのかと思うと、あっというまにネットでの祭り騒動にエスカレートする。マスとなった人間は図式にしかならないにせよ、ちょっとネット人種の描き方が図式的な気はする。

犯人の家に並んでいる本棚に、天童荒太の「永遠の仔」がちらっと見える。どの程度意識的なのか知らないが、あれも家族(崩壊)の話だった。

保護対象になる少女の彼氏が、一見男女どちらかわからない、奇妙なニュアンスのキャスティングが凝っている。
(☆☆☆★★★)


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「世代」

2009年02月08日 | 映画
あまり大きな声では言えないが、実はアンジェイ・ワイダはどうにも苦手な監督で、義務感から見ることは見るけれど、まず例外なしに退屈する。映画ではなくて坂東玉三郎主演でドストエフスキーの「白痴」を舞台化した「ナスターシャ」は素晴らしかったけれど。
で、このデビュー作もちと退屈。

かなり当時の世相を見せていく長いパンニングが続き、それがぴたっと止まって、何かナイフで勝負ごとをしている主人公の若者たちを紹介するオープニングから、後の「灰とダイヤモンド」の花火や白い毛布に浮かぶ血などに通じるケレンがかった演出が随所に現れる。

新作「カティン」は見ることができるのだろうか。できてからずいぶんなるのに。NHKで製作過程のドキュメンタリーは見られても、実物は見られないというのは、皮肉。



「我が道を往く」

2009年02月06日 | 映画

金貸しまで善人という、いかにも古き良きアメリカ映画。それほど昔が本当に良かったわけがないのだが(第二次大戦中の製作だ)、人の善意が共通の合意として成立はしていたのだろう。第二次大戦中の製作で、淀川長治の話だと進駐軍の兵士たちに好きな映画というと「ゴマメ」「ゴマメ」と口を揃えて言っていたという。もちろんGoing My Wayがつづまったもの。
ビング・クロスビー主演だから当然とはいえ、歌の魅力が大きい。
悪ガキたちがコーラスを覚えるあたり、歌の発達に教会が果たした働きは大きいなと思わせる。

皮肉なもので、「我が道を往く」という唄があるのを知らなかった。「アイルランドの子守唄」あたりの方がずっと有名。