prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「アイランド」

2005年08月17日 | 映画
これ、「2300年未来への旅」Logan's Runの換骨奪胎ですね。
汚染された世界の中に唯一人が生き残っているコミューンがあり、人々は“寿命”が定められていてそれを過ぎると“いいところ”に行けるという設定、その裏のからくりに気付いた男女の脱出行と追跡、ラストの解放と、プロットの基本は同じだ。
冒頭からのやたら真っ白に清潔に保たれた世界、というあたりから70年代SF映画みたいだな、と思っていたのだが、ふとプロットを比較して気がついた。
それに今風のクローン問題と、カーアクションを加えたという次第。

困るのは、換骨奪胎して成果があがるのは元の作品が良い場合で、いささか恥ずかしい日本題からもわかるようにモト自体が相当しょうもない。テレビシリーズにもなったくらいだから結構ウケたのかもしれないが、若者ばかりのコミューンの住人が、外の世界にいた老人を見て人間の命の価値とか尊厳を知るという安直なシロモノ。

安直さに関しては数段パワーアップしていて、臓器移植用にクローン人間を作るって、なんでそんなムダな経費を使うのか。必要な臓器だけ作る方がどう考えても安いし簡単で、しかも“人格”なんて余計な手間暇がかかるものを一緒に育てたものだから、工場をぶっ壊されるハメになる。ビジネスモデルとして、最低。
人間全体を作らないと臓器の成長も不十分という理屈がとってつけられているが、要するにヒーローヒロインとして動かすためには人格なしでは都合が悪いからというのに尽きるだろう。
マッドサイエンティスト風に所長が「人間」を作るのが夢だと語ったりするが、これまたとってつけたとしか言い様がないし、なんで人格が発現したのかの理屈づけもメチャクチャ。

だいたい人格形成にあたっての教育や経験や訓練を、まるっきりデジタル情報みたいにインストールできるものとして描くこと自体、ムチャ。
作り手が生命とか人格とか人間性について、およそマジメに考えていないのは明白。
アクションとロマンスをまぶすハリウッド式娯楽作の基礎である勧善懲悪の口実に使っているだけなのは当然として、こう基礎がガタピシしていてはねえ。退屈だけはあまりしないが。

で、アクションがいいかというと、特殊部隊出身のはずの追跡者が、クローンの主人公が本体の手首にタグをつけるのを見逃すなんて、信じがたいザツな演出。さらにそのタグがついているのを右左間違えていたのがまた見逃されるっていうのだから、白痴的。
車がばんばん壊れたりするのはゲームを実写化したみたいで、ハデにすればするほど、すぐ刺激にマヒしてしまう。「迫真的」なのと「魅力的」なのとは別なのだ。
さらにセックスに関する知識はおろか、そういう意識すら持ったことがない二人が、いきなり堂々とベッドシーンを始めてしまうのだから、頭がくらくらした。

イアン・マクレガーの役がスコットランド出身というのは、大しておもしろくない楽屋オチ。
6という番号がついているのは、まさか「プリズナーNO.6」に合わせたわけではあるまいな。
大勢の人間がずらりとワイアでぶら下げられているのは、「コーマ」(78)みたい。
(☆☆★)



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