prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(6)

2005年08月08日 | フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(シナリオ)
54 フィルムをいじる何者かの手
カットし、つなぎ変える。

55 ダビングルーム
林たちがわいわいやっている。
映写が始まる。
林、スクリーンを見て妙な顔をする。

56 同・スクリーン
大平の顔のアップが出ている。

57 小人の事務所
秋月が帰ってくる。
小人「何かわかったか」
秋月「今夜、あの劇場でスニーク・プレビューをやります」
小人「スニー…、なんだって?」
秋月「日本語でいうと覆面試写会。
映画館で普通の上映が終わった後、抜き打ちで公開前の映画を上映して、予備知識なしのお客の反応を見るんです。
アメリカではよくやりますけど、日本では珍しいですね」
小人「それが、『吉原の雨』だと?」
秋月「『雨の吉原』です」

58 前線座・前
小人と秋月がブルース・ブラザースのように揃いのサングラスをかけて 立っている。
秋月「(自分たちの格好を気にして)いくら覆面試写会だからってねえ」
小人「(窓口で)大人二人」
と、券を買う。
相変わらずえげつない映画のポスターが貼ってある。
秋月「(券を受け取りながら)照れますねえ」
もぎりを通り抜ける二人。
仁科はまったく二人に気づかない。

59 同・客席
明るくなる。
変装を解いて並んで座っている小人と秋月。
アナウンス「…お客さまにご案内申しあげます。本日の上映は終了いたしましたが、もう一本、新作映画を上映いたします。ご用とお急ぎでないお客様は、どうぞそのままお席でお待ちください。なお、上映終了後、ご意見をうかがわせていただきますので、ご了承ください」
ばらばらと帰ったりそのまま席についたりしている客たち。
アナウンス「大変長らくお待たせいたしました。
ただいまよりアメリカ映画『我々の敵日本を知れ』を上映いたします。
最後までごゆっくりご鑑賞ください」
秋月「(首をひねる)…情報が間違っていたかな」
暗くなる。

60 同・スクリーン
英語のタイトルに日本語の字幕がかぶさる。
字幕「これは第二次対戦中、アメリカ情報省が日本と日本人の性格の研究成果を宣伝するために作った映画である」
英語のナレーションが流れだす。
流暢だが、声質は東洋人のものだ。
字幕「…日本人の意思表示はきわめて不可解だ。
彼らはYES NOをはっきり言わない。
YESの時NOと言い、NOの時YESと言う」
大平の顔のアップが出る。

61 同・客席
びっくりする小人と秋月。

62 同・スクリーン

62―1 百姓屋(白黒)
しきりとめそめそしている貧しい姿の大平。
ナレーション・字幕「彼女はこれからゲイシャになろうとしている。
ゲイシャは日本女性の見本である。
彼女はそれになれる喜びを泣くことで表している。
YESというところをNOといっているのだ。
日本のことわざにもある。
イヤヨイヤヨモ、スキノウチ(ここだけ日本語)」
大平の芝居が下手なので、本当に喜んでいるようにも見えてしまう。
その前に投げ出される小判。

63 同・客席
小人・秋月「(口あんぐり)」

64 同・スクリーン

64―1 女郎屋(白黒)
大平の後ろに三人娘がいる場面。
N・字幕「日本人は常に集団で行動し、集団の意思が常に個人の意思に優先する。
彼らに個性はない」
カットが変わると、三人娘の位置が入れ替わってしまう。
65 同・客席
北山と南原というカップルの客がいる。
北山・男「(大笑いする)」
南原・女「(むっとして、北山を肘でつつく)」

66 同・スクリーン

66―1 女郎屋(白黒)
赤沢が慟哭芝居をしている後ろにスタッフの影が出る。
N・字幕「日本では日常生活すべて先祖の霊魂に見守られていると信じられている。
彼の叫びによって、祖霊が呼び出された」
ちゃちなセットが妙にフジヤマ・ゲイシャ趣味に似ている。

66―2 インサート・カット(カラー)
脈絡なく別撮りされた桜や富士山その他の絵はがきのように日本的な風景がはさみこまれる。

66―3 白い塀の前(白黒)
団が大勢の捕り手に取り囲まれている。
N・字幕「このように、日本人は一人を大勢で圧殺しようとする国民なのである」
捕り手たち、襲いかかる。
その捕り手がにたにたしているのが写っている。
N・字幕「日本人は死を恐れない。
集団によって与えられた目的に従って死ぬことは喜びであり、名誉である。
彼らはしばしばハラキリ(だけ日本語)による死をもって名誉を守る」

67 同・客席
秋月「「(大笑いする)」
小人「(むっとして、秋月を肘でつつく)」

68 同・スクリーン
THE ENDと出る。

69 同・出入口
仁科「(ぶっきらぼうに)用紙」
と、手を突き出してアンケート用紙を回収している。
が、北山と南原は、
「もう渡したよ」
と、言って用紙を出さずに出て行ってしまう。
仁科「…(おかしいな)」

70 同・客席
まめにかけずりまわって、 「ありがとうございました」
「またおこし下さい」
と、声をかけてまわって用紙を回収している小人と秋月。

71 同・ロビー
客はみんな出て行ったようなので、場内に入る仁科。

72 同・客席
誰もいなくなっている。

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