prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「祖国」

2005年08月15日 | 映画
原作・山田洋次のWOWOWドラマ。
マコ・イワマツ(岩松信)扮する元特攻隊員が捕虜になったため日本に帰らず南方で暮し、たまたま故郷が同じ日本人の会社員を乗せたのをきっかけに帰郷するシーンが核心になるわけだが、そこまで辿り着くのに1時間近くかかる。
それまでに日本の戦後の変わりようがみっちり描かれるわけだが、気違いじみたスピード化やリストラなど悪いところばかりでなく、会社員とその家族の親切さの描き方が丹念で好ましい。一方で夫婦で英語が堪能で、さまざまな形で外国人とコミュニケートできるというのも、いやでも外国とコミュニケートしなくてはいけない今の日本のあり方を考えさせる。

それにしても、マコが荒れ果てた生家に戻るシーンで、いきなり「雨月物語」になるのには驚いた。戦争に行って長いこと家を空けた男を死んだ家族(の亡霊)が暖かく迎える、というモチーフが大平洋戦争で再生されたわけ。まことに日本的情緒いっぱいの名シーンにして、昔のままの家が本来のあばら家になるカットのデジタル技術の使い方との組み合わせも新鮮。



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