prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ドーン・オブ・ザ・デッド」

2004年05月28日 | 映画
ゾンビが走るっていうのも変なもので、急に動きが人間くさくなるのだね。人間が演じているのだから当然なのだが。あと、動きが早くなると、ショッピングセンターに立て籠って押し寄せるゾンビを撃ちまくるという基本設定が、砦に立て籠ってインディアンを撃ちまくる西部劇のものであることがはっきりわかる。
特殊メイクは前作で一種のピークに達していたし、クイックカットで処理されているのが大半だからグロな印象が特にエスカレートした感じではない。車に轢かれたり爆発で吹っ飛んだりといったスピーディな効果の発達の方が目をひく。
しかし、「ゾンビ」のリメークだということは一切宣伝には出さないで、エイドタイトルのおしまいの方に日本語でトム・サヴィーニら前作の関係者のカメオ出演のタイトルをわざわざ作って出しているのが妙な感じ。罪滅ぼし(?)のつもりか。
(☆☆☆)

「コールドマウンテン」

2004年05月28日 | 映画
カットバックを全編にわたって使って、南北戦争で別れ別れになった男女を平行しながら綴る構成で、つぎつぎと場面が変わるから(あとほとんど文句のつけようのない美男美女の主演だし)、2時間35分という長尺もさほど退屈しないが、全体としてのうねりはやや乏しい。
撮影・美術は壮麗といいたい見もの。ニコール・キッドマンがお嬢さん然としているところでも髪の毛がやや散り気味になっているあたり、田舎らしさをよく出したメイク。レニー・ゼルヴィガーの台詞がおよそ聞き取れない。役作りでかなりなまりをきつくしているのではないか。
ロマンス映画というより、戦争映画、それも戦場以外の戦争を描いている観。戦争になると“自警団”に典型な、つまらない連中がのさばるイヤな感じが実によく出ている。
あと、これくらいしょっちゅう動物が殺される場面が多いアメリカ映画も少ないのではないか。人間もさんざん殺されるからあまり残酷さが目立たないが。赤ん坊を寒空の下、地面に投げ出しているあたりも、メジャー系では嫌う性格の描写。演出の抑制が効いていてどぎつくはないが、残酷には違いない。
(☆☆☆★)

「エレファント」

2004年05月28日 | 映画
廊下を歩く人物をえんえんと長い移動撮影でフォローしていくカメラワークは、なんだか「シャイニング」みたいだな、と思っていると、同じ場面をそこに居合わせた人物の視点に合わせて別々の角度から繰り返し描く「現金に体を張れ」ばりの話法が採用されるという調子。作者がキューブリックを意識したかどうかわからないが、「現金…」が犯罪を個々の人物の日常的な時間に分割して描いたとしたなら、こちらは日常的な時間を組み合わせて行った末に犯罪が現れるといった作り。
殺害場面を“見せ場”にし過ぎない配慮のある編集。
elephantというと、共和党の象徴という意味があるそう。whiteがつくと、図体の大きい持て余しものという意味。どちらもどこかふさわしい感じ。
(☆☆☆)


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「クリムゾン・リバ-2  黙示録の天使たち」

2004年05月27日 | 映画
カミーユ・ナッタという準主役級の女優さんがキレイなので雑な作りもさほど気にしないで見ていた。どうもどこかで見たような顔だちだと思ったら、アンヌ・パリロー(「ニキータ」)とか、ミラ・ジョヴォヴィッチ(「ジャンヌ・ダルク」)とよく似ているのだね。リュック・べッソンの趣味かい、とも思うが美人は美人なので、まあカンケイない。

クリストファー・リーがフランス語とドイツ語(? 自信なし)を話しているのがお楽しみ。七か国語を話せる、というのがプロフィールにたいてい入っているのだが、実際に英語以外聞いたことないもので。
(☆☆★★)


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「死に花」

2004年05月27日 | 映画
トロい映画だなあ。今どき銀行強盗って、金庫の中に現金があるとは限らない、とか、金庫室ってぶ厚い壁で囲まれていて、爆弾でも破れないようになっている、とかいった知識が一般的になっている時代にナニやってるのかと思わせる。主役たちが爺さんばっか(婆さんがまるで描かれていないのがヘン)だからといって、外の設定まで古めかしくすることないだろう。
トンネルを掘るのは銀行が目当てではなくて実は、いう構成もいかにも弱い。戦時中の防空壕の中にあった人形がハローキティみたいなのはどういうつもりか(赤いちゃんちゃんこを着ているつもりなのだうか。歳が合わないと思うのだが)。一目で古いとわかる人形がいくらでもあるだろうに。とにかくディテールが生活描写を含めて雑すぎる。
爺さんたちが自分の身体のことをまるで気をつけていないで、変なタイミングで発作を起こしたり治まったりする軽々しい扱いは、かなり不愉快。ベテランの出演者たちのこれまでのキャリアを生かして見せる洒落っ気も見られない。
それでも、場内は年輩の客が結構入っていた。
(☆☆★★)


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「ホーンテッドマンション」

2004年05月26日 | 映画
元のアトラクションを見ないで映画だけ見に行く人間も珍しいと思う。ディズニーランドに行ったことないんだよね。もともとディズニーはあまり好きではないし。とはいえ、元を知らなくても別に困らないように作ってあるのは、当然とはいえ日本ではなかなかできない。

逆に最近やたら増えたバカみたいに見せ場を詰め込んだアトラクション映画よりは密度の薄い作り。むやみとVFXで脅かされることがないのはいいけど、ちょっと眠い。

水晶玉の中のマダム・リオッタがシートベルトを絞めろと言われて「どうやって?」と答えたり、エアバッグで助かったりしているあたりはちょっと笑った。

エディ・マーフィ(広告から完全に締め出されてたねぇ)の主演作で、これだけ英語の台詞が聞き取りやすいの初めてではないか。広告では主役みたいなテレンス・スタンプの悪い執事というキャスティングはいいが、キャスティングで満足してしまったみたいで、特に演出のフォローなし。
(☆☆★★★)


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「真珠の耳飾りの少女」

2004年05月24日 | 映画
女の中に男が一人、という人物設定はよく考えてみると大奥みたいなもので、結構俗っぽい話。パトロンの要求には逆らえないあたりも。それとフェルメールの絵を再現する撮影・美術・衣装・照明の格調の高さとの混交の面白さ。

耳にピアスの穴をあける場面、唇の開け方を綿密に指示する場面などの密やかなエロチシズム。少女がずっとかぶりものをしていたのをフェルメールが何度も頼んでやっと外して髪が露わになるあたりのスリルは、なるほどキリスト教では髪を露にするのを淫らな行為と禁止していたのもわかると思わせる。

少女役のスカーレット・ヨハンセンは絵のモデルと似ているのと、演技と、ともに驚くばかり。カメラ・オブスキュラで像が上下が逆になっていないのはどういうことか。
(☆☆☆★★★)


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「永遠の語らい」

2004年05月21日 | 映画
前半はヨーロッパ文明のルーツの解説、後半はフランス・イタリア・ギリシャの大女優の共演で、地中海クルーズの船を“世界”に見立てる作り。三人の国籍の違う女優たちが、それぞれの母国語で話して芝居が成立してしまうというのが面白い。蜷川幸雄の「オイディプス」(築地本願寺での平幹次郎主演版)では、ギリシャの女優にギリシャ語で台詞を言わせて日本語の芝居と共演させていたが、フィックス主体の演出とともにあからさまに“撮影された演劇”ぶりを見せている。

唯一参加している男=船長がポーランド系のアメリカ人で、ジョン・マルコヴィッチというアメリカ人には違いないけれどどこか異端を感じさせる役者にやらせている妙。ポルトガルの母娘が絡んでくるところから台詞が英語にまとまっていき、急転直下のショッキングなラストで“今の世界”を端的に見せる。

図式性を越えてロゴス=言葉・論理の力に対する確信を感じさせる作り。
ただし、ややイヤミ。
(☆☆☆★)


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「キル・ビル vol.2」

2004年05月21日 | 映画
今回は一作目みたいなけたたましさは影をひそめ、マカロニ・ウエスタン風にモノモノしいテンポが目立つ。どっちがいいの悪いのというのわけではなくて、いろいろある引き出しのうちの一つという程度の違いだろうが、いくらなんでも2時間20分はかったるい。
「サイレント・フルート」を持ってお久しぶりの登場のデビッド・キャラダイン。もともとB級アクションになぜかよく出ていて、「パルプ・フィクション」のトラボルタみたいなセルフ・パロディの面もある。
カンフー・アクションはチャンバラよりアラが目立つね。
ヒロインが生き埋めになって、さあどうなるという所で修行のエピソートが始まるあたりの話法はちょっといい。
ヒロインを“natural born killer”と呼ぶところがあったが、タランティーノが原案を書き オリバー・ストーンが監督した同題の映画があった。タランティーノが怒ってクレジットを拒否したというシロモノ。撮影は同じロバート・リチャードソン。やたら色々な画調のカットをとりまぜるあたりは似ている。
エンド・タイトルで皆さんほとんど席を立たず。「恨み節」が(おそらくデジタル・リマスターで)流れるせいか。thanksのところに石井聰互の名があった。
(☆☆☆)


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「名探偵コナン・銀翼の奇術師」

2004年05月20日 | 映画
キッドが新一に変装して現れるところはすこぶる刺激的でどう展開するのかと思ったら、ひどくあっさり別人に変装してしまうのは物足りないが、子供も見るミステリとするとこれくらいに抑えておいた方がいいのかな。クライマックスの着陸用の誘導灯を何で作るかというアイデアもいいが、そこまで盛り上げるまでの細かい構成や演出が今一つ。キッドが飛行機から飛び立つ前に双眼鏡なんて覗いているので、暗視装置を使っているのかと勘違いして見ていた。紛らわしい。
劇場に現れたキッドの捕り物・飛行機の殺人騒ぎ・操縦士が操縦不可能になって無事着陸できるかというサスペンスと、三つのパートがやや30分ものをつなげた風。伏線は丁寧に張ってあるが、それがわかるところがいちいち説明的なのだね。
ファネティック・コードとか航空機の燃料補給パイプの弁の構造といった知識がちらちらと出てくるのがおトク感。
(☆☆☆)


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「ピーター・パン」

2004年05月18日 | 映画
エンド・タイトル見るまでフック船長と父親役が同じジェイソン・アイザックスだとわからなかった。メイク技術が高すぎるのも困ったもの。
ピーターパンって、“変わらない”キャラクターだから本当はドラマにならないのね。舞台で女の子が演じたりするような虚構性の強い設定でないと逆にウソがばれるみたい。役と実際に近い男の子が扮するとなんか魅力を感じない。可愛いっていえば可愛いけど「大人にならない」のがいいとは思えないので。
(☆☆★★)


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「スウィート・ヒアアフター」

2004年05月14日 | 映画
イアン・ホルムの日本でいうなら市民派の弁護士が、自分自身の娘との関係にも悩みながら小さな村で起きた事故の責任を追求するわけだが、村の人間にとっては一種“大きなお世話”になる。良心的には違いないのだろうけど、たてなくていい波風をたてているのも確か。こういう話だと、村人がしがらみから脱して市民意識に目覚めるって展開を予想しがちなのだが、ここではむしろ逆。
(☆☆☆)


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「オーシャン・オブ・ファイアー」

2004年05月14日 | 映画
宣伝だとスペクタクルかと思ったら、大作には違いないけれど、「ラストサムライ」同様にウンデッド・ニーの虐殺で受けた主人公のトラウマを砂漠越えの長距離レースの苦行で克服する、かなり内面的な作り。主人公が純粋の白人ではなくアメリカ・インディアンとの混血で、アラブ人との文化の違いもきちんと押さえているあたり、限界はあるにせよアメリカ的無神経や御都合主義とは一線を画している。

馬の演技と走りっぷりと風景が見事。女は出てくるけれど彩りとは関係ない扱いなのもよろしい。原題が馬の名前のHIDALGOなのも納得。レースの迫力を強調していないので、多少かったるいが。
(☆☆☆★)


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ヴィゴ・モーテンセン主演『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
公式ホームページ2006年3月11日公開。
ヴィゴ・モーテンセン&マリア・ベロが2月22日に来日。

「フォーチュン・クッキー」

2004年05月12日 | 映画
原題Freaky friday。同題の映画のリメーク。
オリジナルではバーバラ・ハリスと10代のジョディ・フォスターが主演していた。もともと子供っぽい大人と大人っぽい子供という感じのキャスティングを生かしていたわけで、そういうメリハリはあまりなく、どっちも子供っぽい感じで気軽に笑わせる。ロックの扱いはなかなかよろし。
(☆☆☆)


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