prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(4)

2005年08月09日 | フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ(シナリオ)
31 ダビングスタジオ・外景

32 同・中
ダビングスタッフの一人、林が一人で初期のロックンロールを聞いている。
完全にはまっているようす。
扶桑「おい」
林「(聞いてない)」
扶桑「おいっ」
やっと気づき、しぶしぶ来る。
×   ×
荒つなぎされた白黒のプリントが上映される。

33 同・スクリーン
(以下、映画中映画のシーンNoには―が入る)

33―1 女郎屋の裏手(白黒)
大平が血を吐く。
血を吐く。
血を吐く。
いくつものテイクをみんなつなげたのだ。
スプラッタムービーと間違えそう。

34 同・中
林「(あまりのしつこさにうんざりして)なんだよ、これは」
小人「(扶桑に)NGを出すなって言ったろう」

35 同・スクリーン

35―1 女郎屋・座敷(白黒) 畳をかきむしって慟哭している赤沢。
ものすごく下手な芝居。
音はついていない。
バックの障子にすうっとスタッフの影が写る。
(いけねえ)という感じであわてて出ていく。

36 同・中
扶桑「(ふてくされたように)ほら、こんなのだってNGは出してませんよ」
林「なんでこんな気が滅入る場面ばかり続くんですか」

37 同・スクリーン

37―1 女郎屋・座敷(白黒)
三人娘が泣き女のようにめそめそしている場面。
福田「あたしたちがいけなかったのよ」
山崎「あたしたちが話を聞いてあげていたら」
広瀬「許してちょうだい」
団「(いきなり現れ、うって変わって威勢よく)泣いていないで、立ち上がって戦うんだ」
いきなり、ロックンロールの音が鳴り響く。
まったくのミスマッチ。

38 同・中
扶桑「おい、なんだ」
林「音楽だけでも威勢よくしないと、見てられませんよ」
言い争いが始まる。
それをよそに、小人が所員に呼び出されて出ていく。

39 同・スクリーン

39―1 白い塀の前(白黒)
今たんかをきったばかりの団が捕り手にぼろぼろに切り刻まれている。
音楽はあくまでロックンロール。

40 山本の事務所
電話をかけている山本。
「ああ、うちのコヤにかけたいっていうシャシンだけど、できた? まあ、前のオーナーの約束だけど、あたしは義理堅いから、ほんとよ…仁義守りますよ…そう、だったら見たいんだけどね。
すぐ? ああ、早い方がいいけど。
じゃ、開けとく」
言いながら金勘定している。

41 ダビングルーム
小人「(入ってくるなり宣言口調で)これからプリントを映画館の持ち主に見せる」
扶桑「…いいんですか」
小人「いいんだよ。
支度しろ」
扶桑「このまま持っていくんですか」
小人「批評家に見せるんじゃない」
まったく自信のない扶桑の表情。
映写機が止まる。
林「ちょっと、まずいですよ、それには」
その困った顔を断ち切って、

42 前線座・出入口
終映後。
客がぞろぞろ出ていく。
頭を下げるでもなく傲然とそれを見送っている仁科。
代わりに入っていく小人。
ちょっと遅れて秋月がフィルムの缶を手押し車に乗せて入ってくる。
仁科「きょうはもう終わりです」
小人「支配人と約束があるんですが」
山本「(現れて)できたの?」
小人「はい。
初めまして」
と、名刺を出しかけるのを無視し、 山本「ああ、初めまして。
(秋月が持ってきたフィルムを一瞥して)あれ?」
なんとも横柄な態度。
山本「(仁科に)じゃ、あれを映写室に持って行って」
仁科「きょうは終わりじゃないんですか」
山本「(聞いていない)映写中は誰も入れるなよ」

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