prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

2009年7月に読んだ本

2009年07月31日 | 
prisoner's books2009年07月アイテム数:26
世界の奇妙な博物館 (ちくま学芸文庫)ミッシェル ロヴリック07月14日
危険な世界史中野 京子07月19日{book['rank']
センセイの鞄 (文春文庫)川上 弘美07月24日{book['rank']
甘粕正彦 乱心の曠野佐野 眞一07月24日{book['rank']
てんやわんや (新潮文庫)獅子 文六07月27日{book['rank']
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「ノウイング」

2009年07月31日 | 映画
ラストが近づくにつれ脱力感に襲われた。
やたら数字に意味を見つけようとするあたりトンデモさん的発想で、デンパが入った妄想が本当のことになるみたいな話。
世の滅亡と選ばれた者による再生って、いかにも一神教的な選民思想で、微妙な反感を覚える。
世界中の事故を予言した数字は全部西暦(グレゴリオ暦)計算だけれど、世界にはイスラム暦(ヒジュラ暦)など他の暦を使っている地域だってあるだろうに。

事故のシーンのリアリティはすごくて、飛行機が墜落するところからケイジが事故現場に走っていくのを手持ちカメラが追っていって、あちこち爆発が起こり燃えている人間が飛び出してくるのをワンカットで見せたりするあたり、どう作っているのかと思う。「トゥモロー・ワールド」でも使われた違うカットをつなぎ目なしでつなげるソフトを使っているのだろうか。
実際に地下鉄の車内にいて事故に会うような臨場感もすごい。

「未来惑星ザルドス」でも使われていたベートーベンの「第七」の第二楽章が使われているのだが、不思議とこの曲、終末的な感じを出すのに使われるみたい。
(☆☆★★★)


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「按摩と女」

2009年07月30日 | 映画

目が見えないにも関わらず美女への思慕を抱えている按摩、という設定がいい。目あきより歩くのが早いのが自慢で、何かにつけ目明きより上と自信があり、そしてその自信が落とし穴になる悲哀。
今では再現不可能な風景を捕らえたロケ撮影が魅力的。和傘をさした人物など、一幅の画のよう。

今だったらもっと効果音が入るところで、山道で馬車の音や風の音も入らないのは不自然な感じはする(1938年製作)。

傘をさした高峰三枝子が物思いにふけっているシーンで、歩いている間をとばして同じ構図で姿だけが遠ざかっていくカットをディゾルヴでつないでいく処理など、「ミツバチのささやき」のようで詩情たっぷり。

「メクラ」という言葉がばんばん出てくるのが気持ちいい。按摩が自分のことを「メクラ」と堂々と言うのだし。
(☆☆☆★★)


「守護神」

2009年07月29日 | 映画
守護神 [DVD]

ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント

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伝説の水難救助員ケビン・コスナーと、新人の訓練生アシュトン・カッチャーの二人主役状態。
誰かを助けるためには誰かを見捨てなければいけないぎりぎりの状態が珍しくない救助の現場から、逆に命のリレーというモチーフが自然に出てくる。
新人の視点で描いた方が先輩の「神話的」なニュアンスも出ただろうし、犠牲になる命を受け継ぐというドラマも自然になっただろう。
若干、コスナーの見せ場に傾いた気がする。
(☆☆☆)


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「アルジェの戦い」

2009年07月28日 | 映画

セミ・ドキュメンタリータッチでアルジェリア独立闘争を描いた1966年の映画だが、帝国主義側の拷問も含む手段を選ばない弾圧と、一般市民を巻き添えにするのも辞さない手段を選ばないテロとの連鎖は、いやでも今日のイラク戦争ほかを思い起こさせる。

アルジェリアを舞台にしたフランスからの独立闘争を描いているが、喋っている言葉はイタリア語で、監督のジッロ・ポンテコルヴォ、撮影のマルチェロ・ガッティ、音楽のエンニオ・モリコーネなど主要スタッフはイタリア人。イタリアとアルジェリアとの今で言うコラボの成果だろうか。

ヨーロッパではあってもイギリスやフランスのような先発の帝国主義国の後塵を拝してきた立場を逆に利用したようで、反帝国主義闘争を全編、ネオリアリズムの流れを汲む驚くばかりのリアリズムで描き出す。
群集シーンのスケールと、不気味なくらい生々しい爆破シーンなど、今なお目を洗うよう。

取り締まり側のフランス軍トップにナチに対するレジスタンス体験のある軍人が就任する、というあたりが皮肉で、抵抗する側が相手が変わると弾圧する側にまわることがありありとわかる。
抵抗勢力も美化はされず、いたるところで子供がテロに利用されるかあるいは自分から協力するのが、なんともいえず痛ましい。

初めのうちの警官を襲って拳銃を奪うといった手口は「牧歌的」にも見えるし、抵抗組織の構成がピラミッド型で頭を潰せば全体が死ぬ(フランスの将軍はサナダムシに例えたりする)あたりも古い感じはする。今だったら、武器の売り手はいくらもいるし(それは帝国主義国ほど多いだろう)、組織構成も不定形で、「頭」は存在しなくなっている。
それだけ「進化」したのは、今日に至るも南北問題の本質は変わらず、手段だけエスカレートしたということだろう。

特定の主人公を置かず、最後まで抵抗を続けた一味が追い詰められるシーンを冒頭に置き、抵抗と弾圧のせめぎあい描写の連鎖の末、彼らが爆殺されるシーンをクライマックスにし、これで抵抗勢力は滅んだかと思わせて、唐突に「誰」と特定しない群集が主役として立ち上がり猛烈な抵抗を始める飛躍をもって締めくくる作劇が鮮やか。概念ではなく、それ自体情念と肉質を持った「群集」を描ききった。
目に見える相手を押さえつけて一安心と思った時こそが危ないのは、今でも一緒だろう。
(☆☆☆☆)


「黄金」

2009年07月27日 | 映画

リアリズムという点では、林がセットであることがわかったり(影が複数出ている)、醜い欲望がぶつかりあうドラマはこの後ずいぶん出ているので古く感じるところがあるのは免れないが、ウォルター・ヒューストン、ハンフリー・ボガート、ティム・ホルトの主役三人が達観、猜疑、無垢にきっちり描き分けられていて、神話的なくらい典型的な配置になっているのは見事。

ボガートがメキシコ現地人のことをIndianと呼んでいるところがあったと思う。製作当時(1948)としてもずいぶんアバウトな認識。
苛烈なリアリズムと、メキシコに対する一種のロマンチズムが混在しているあたり、のちのペキンパーにも通じる。
(☆☆☆★★★)


「女ともだち」

2009年07月26日 | 映画

ミケランジェロ・アントニオーニの初期作品。
一人の女の自殺未遂がきっかけで知り合う四人の女たちが、同じ女の自殺でまたばらばらになる、話らしい話のない作り。男たちも絡むのだが、これがまた頼りにならないというのか、結局大勢でなんとなく集まっているのだが、つるんでいても孤独、というモチーフは後年の作品まで一貫している。
ただ、今の目で見るとわかりきったことを丁寧に描いているだけ、という印象も強くで退屈する。
ファッションや音楽など感覚的な鮮烈さはあるのだが。
(☆☆☆)


「ピロスマニ」

2009年07月25日 | 映画

まだソ連があった頃、その一部だったグルジアの映画として公開された一編。今ではロシアとグルジアとはまったく違う、というよりもろに対立しているので今昔の感。
強烈な民族色と、正面から人物を平面的に並べる構図など、ピロスマニの絵の再現ともとれるが、セルゲイ・パラジャーノフと共通するセンスも感じる。

批評家がピロスマニの作品をボロカスにけなすと、一般人まで一斉に村の恥みたいな態度になるあたり、何やら作者の含むものを感じる。
美術監督だった アフタンジル・ワラジを主役に抜擢、地でやっているのだろうと思うが、まことによく生きるのに不器用な画家の感じを出している。





「夢のチョコレート工場」

2009年07月24日 | 映画
夢のチョコレート工場 [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ

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チャーリーとチョコレート工場と同じロアルド・ダール原作の最初の映画化。

「チキ・チキ・バン・バン」みたいなクラシックな機械趣味の入ったファンタジーだな、と思って見たが、あれの脚本をロアルド・ダールが書いているのだね。
ティム・バートンによるリメイクを先に見ていたので、あのグラマラスなヴィジュアルや楽曲とは程遠いにせよ、ややチャチなセットや小道具でいろいろ工夫しているのが苦し紛れに奇妙な雰囲気が出ている。

退場した他の子供たちがどうなったのかわからないのは、ちょっと困る。
(☆☆☆)


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「西の魔女が死んだ」

2009年07月23日 | 映画

登校拒否児がハーブや野菜などが栽培されているメルヘンチックな祖母の家に長期滞在して、いわゆるスローライフを過ごす。
むさい隣人の木村祐一が「いい身分じゃ」と憎まれ口を叩くが、ちょっと同意したくなる。
庭でとってきたレタスでサンドイッチを作ったり、ワイルドストロベリーでジャムを作ったりするあたりは、おいしそうに撮れている。

祖母役のサチ・パーカーが、シャーリー・マクレーンの娘とあとで聞いてびっくり。日本びいきで日本風の名前を娘につけたとは知っていたけれど、思わぬところでお目にかかるが、このキャスティングが大成功。外人でややたどたどしい、しかし上品な日本語を話しているのがファンタジック。

もっともきれいごとばかりでなく、「死」の描き方はけっこうリアル。
5.1chステレオなのだが、やたらと音をスペクタキュラーに鳴らさず、細かい自然音を生かしている。
(☆☆☆★)


「オープン・ウォーター」

2009年07月22日 | 映画
オープン・ウォーター [DVD]

ポニーキャニオン

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スキューバダイビングをしているうちに船がどこかに行ってしまい、海の真ん中で夫婦二人だけで置いてけぼり、というアイデア一つで作られた映画だけれど、あいにくそれ以外は何もない。

サメが寄ってきたり(本物です、というのがウリ)、体が冷えたり、といった程度ではいっこうに話が膨らまず、海だけの画面はほとんど前衛映画のごとく単調、夫婦でののしりあってもドラマにはならない、だいたい本筋に入るまで三十分もかかる。
主人公夫婦も、ダイビングの船を出す業者もやることがズサンすぎ。

韓国でマジで金返せと怒鳴り込んだ客がいたらしいが、気持ちはわからないでもない。
(☆☆)


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オープン・ウォーター(2004) - goo 映画

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「What would Jesus Buy」

2009年07月21日 | 映画

東京MXテレビの「松嶋・町山 未公開映画を見るTV」にて放映。

アメリカ市民はクリスマスシーズンに4550億ドル消費した!
消費者のクレジットカード負債総額2,4兆ドル!
2600万人のアメリカ市民は買い物中毒だ!

というわけで、「買い物するな教会」の「ビリー牧師」が信者を引き連れ、買い物による世の終わりshopocalpyseを恐れよと全米を説教してまわる姿を追ったドキュメンタリー。
クリスマスにプレゼントを買うなど主の御心とは何の関係もない、クリスマスは家族とともに心静かに過ごす日だ、アメリカ人がアメリカ製品を買わずもっぱら安い製品を追い求めたため、地方の小さな店はウォルマートに価格競争で敗れて地域社会は崩壊、一方で安い製品を作るために中国はじめとする国の労働者は桁外れに安い賃金で搾取されている。

といったビリー牧師の言うこと自体は正しいのだけれど、ウォルマートの私有地に入って「悪魔祓い」をしたり、マンガみたいに大きなメガホンを持ち歩いたり、どうもやることがフツーじゃないな、と思ってたら、正規に教会に任命された牧師ではなく、自分で牧師と名乗っているだけ。なんちゃって牧師。ピストルのおまわりさんの牧師版。
金髪をリーゼントに固めて、赤い衣装の合唱隊とともにバスで巡業してまわる姿は、どこの芸能人かと思わせるが、実際パフォーマーなのだね。
次のニューヨークの市長選挙に出馬するとのこと。

ディズニーランドで逮捕される場面は興味深い。ちゃんと警察が詰めているのがわかるし、珍しく出番でないミッキーたちなどがちらっと写っている。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」

2009年07月20日 | 映画
あまりエヴァの熱心のファンではないので、テレビシリーズは一通り見ただけだったのだが、こんな話だったっけ。違うでしょう。
過剰な自意識絡みの描写は減って、割と普通のラブストーリー寄りになっている。冒頭にシンジの母、ゲンドウの妻の墓参りの場面があって、綾波の顔に一瞬、同じ顔だが別人の顔がだぶるのが暗示的。

使徒とエヴァの戦闘シーンののデザインと動きの斬新さ、鮮烈さは、突飛な例えのようだがほとんどオリンピックの選手の演技を見ているようで、想像を超える。

それ以外の日常生活の描写が一度カタストロフを経験したあとの世界とは思えない違和感は相変わらず。
海が赤く汚染されている一方で、妙に緑に恵まれていたり、普通に交通機関が動いて学校もやっていて、って、なんで?といちいちひっかかるのだね。この日常が不変のものという感覚は理解しにくい。
(☆☆☆★)


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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 - goo 映画

「ターミネーター4」

2009年07月19日 | 映画
シリーズ一作目はありふれたどこにでもいる人間が大きな役割を果たすまでになる話なのが、四作目ともなるとそれまでの設定に縛られて、誰が大きな役割を果たすのかあらかじめ決められてしまって、見ていてこちらが感情移入する余地がない。

シュワルツェネッガーがCGで再現されるのは技術的には目を見張らされるが、客演の域を出ない。昔、ブルース・リー再生計画っていうのが冗談として語られていたことがあった気がするが、技術的には可能になってきた。
しかしその割に、誰があるいは何が敵役なのか曖昧。機械が意思を持って人間を滅ぼそうとしている設定にしても、その人間が武器=機械を取って相対しているのだから、本質的な対立にならない。

もともと一番悪いのはろくでもない兵器開発ばかりしているサイバーダイン社なのだが、この会社には顔がないので、お話を転がす上のご都合主義的な存在に見える。

前半の荒涼とした背景で展開される機械の質感と重量感を生かしたハードアクションはスケール大きく見応えあるが、途中からへなへなとした基地侵入アクションに矮小化してしまう。
マイケル・「スキャナーズ」・アイアンサイドが太ってしどころのない役なのも、がっかり。
(☆☆☆)


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「ダージリン急行」

2009年07月18日 | 映画

インドの列車というのが目の付け所のいいところで、線路の上を走っているのに迷子になったり、途中下車していつのまにかまた乗り込んだり、いきあたりばったり的なおおらかさ。代わりにいささかルーズで退屈もする。

列車に乗り込むのに間に合いそうもないので荷物を「捨てる」のが、自然な寓意になっている。
横移動撮影が多くて、映画の画面そのものが鉄道のジオラマみたいに見えてきたりする。
(☆☆☆★)