prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「大東亜戦争」

2014年09月06日 | テレビ
大島渚監督によるテレビ・ドキュメンタリー 1時間×2

20世紀アワー 大東亜戦争 
68/12/08 前編 脚本・構成=大島渚 協力=白井鉄郎 出演=(N)小松方正、戸浦六宏、清水一郎 
68/12/15 後編 脚本・構成=大島渚 協力=白井鉄郎 出演=(N)小松方正、戸浦六宏、清水一郎 

冒頭にこう出る。
 「このフィルムは、すべて大東亜戦争当時、撮影されたものである
 言葉、音、音楽もすべて当時、日本人によって録音されたものである
 外国から購入したフィルムも、すべて当時の日本人の言葉でつづった
 これは、私たち日本人の体験としての大東亜戦争の記録である」

真珠湾攻撃のあとの「…米英海軍と戦闘状態に入れり」と読む声は聞いていたが、朗読している姿は見たことなかった。けっこうショボいのね。

すべて日本側が撮った映像だと冒頭に断られるのだが、真珠湾の海上から撮ったフィルム、誰が撮ったのだろう。

マレー・シンガポール陥落時の山下奉文・パーシバル会談の映像の実物を見られる。
光量が足りなかったので回転数を落として一コマごとの露光時間を伸ばして撮ったものでコマ落としみたいになり、山下がより居丈高に見え、パーシバルは目をしきりとパチパチさせて落ち着かなく見えるという「効果」が出たと撮ったカメラマンが「自慢」していたというけれど、今にしてみると罪な効果だ。

それにしても、なんで水野晴郎はあんなに山下奉文が好きだったのだろう。体型が似ているだけというだけでもあるまいに。

昭和17年の総選挙のニュースも出てくる。「選挙」もしていたし、戦争末期には政権交代もしていたのに、ちっともブレーキにならなかったわけ。

日本で勝っていた時期というのは、一年もないのだね。

ニミッツが戦果を無限に誇張していると伝えているのだから、大本営発表というのもまあ北朝鮮みたいなもの。

アメリカと一機づつ差し違え主義でやっても少しも日本は差し支えないのであるって物量の差をよくこれだけ忘却できるものだと思う。
#1の終わりごろから退却を「転進」と言い換えるのが目立つようになる。

#2の冒頭からがらっと調子が変わり、「玉砕」の連続になる。
ちょっとだが、死骸がごろっと転がされているところも写る。

学徒出陣の行列の妙に美的な映像(ことに水溜りに写ったカット)。いくらかリーフェンシュタール入ってるか?ただし行進ぶりはまるで訓練を受けていない、素人です。

東南アジア諸国やインドとは日本が西洋の植民地から解放したのだから仲良くして、一方で中国と戦おう、というあたり、今の状況で見るとなんだかイヤな感じ。発想は変わってません。

食料増産といって米や麦はないからカボチャを作れと呼びかけるのではなあ。語るに落ちるというものではないか。

けっこう負けたところの映像も出てくる。というか事実を最低限伝えてはいるので、なんとか大本営発表で言いくるめようとしても事実として負けっぱなしなところをゴマかすのにも限度があり、冷静に見たら負けていることはわかるはずなのだが、そんな余裕があったかどうか。

日本の敗色が濃くなるとだんだんアメリカ側の映像の割合が増え、それに特攻隊の「戦果」(つもりそれだけ日本側が死んだということ)の放送がかぶると、まあもう惨憺たるものです。

「敗者は映像を持たない」とは大島渚の「体験的戦後映像論」で提出された有名なテーゼ(著作集第二巻に所収)だが、それを絵に描いたよう。

タイトルは大東亜戦争だが、実質太平洋戦争。実際のところ、盧溝橋事件あたりで日本は戦争に突入しているのであって、このあたりのすり替え(大島渚でさえその轍を踏んでいるともいえる)が今でも尾を引いている。
真珠湾攻撃ではなく、対中戦争勃発からの戦争メモリアルというのも作られないといけないのではないか。
もっぱらアメリカを相手にした姿だけしか自覚していないから被害者意識に閉じこもれるのだし、特に原爆が戦況の上でも意識の上でも決定打になっていると思える。

大島渚にはテレビ作品がかなり多いし、収穫も多い。映画監督のアルバイトといったレベルではないし、テレビの特性をよく生かしている。のちにテレビにさかんに出演するのも、さまざまな意味で興味があったからなのは確かだろう。

大島渚テレビ作品リスト



本ホームページ

邦画を彩った女優たち「清貧と魔性の間 女優 大竹しのぶ」

2013年10月24日 | テレビ
教師だった大竹しのぶの父親が病気で働けず、しかし清貧というのか療養生活の態度は端正なままで通したというのが、のちの娘の女優としてのあり方に影響を及ぼしたという捉え方。貧困を知っているというのが強さにつながっているということか。新藤兼人が惚れ込んだのも、そのあたり関係あるのではないか。

「一枚のハガキ」ではあらかじめ大竹の芝居を想定して動きを考え、さらにセットデザインまで決めてしまったというから驚き。ああいう真ん中に柱が立っている建物というのは実際には考えにくいわけだが、しゃがんだような格好のままで後ずさっていき、半ば柱にしがみつくといった芝居のために必要だったというわけ。普通ありえないような動きなのだが、それが成立してしまう。

浦山桐郎の「青春の門」では“出世”していく信介より取り残されていく織江の方に浦山が乗っていたという小栗康平の証言が入る。
自転車で織江が急坂を下っていき転倒する有名なシーンが入るが、あんまり急なのでよくこんなところ下させたなと思わせる。

早坂暁は大竹を「食虫植物」と例える。溶かされていく男の方が気持ちよくなっていくような、という。

最近、初期の出演作「事件」(テレビ版)を見て、何がすごいといってまるっきり山出しの素人にしか見えないのに一驚したばかり。

この番組では取り上げなかったが、蜷川幸雄演出の舞台「王女メディア」はあまりにも激しいヒロインなのでかえって生身の女優では演じきれないと抽象化した形で平幹二郎らの男優陣にやらせていたのが、大竹しのぶだったら演じられるとキャスティングしたという経緯があった。

チャンネル [BSプレミアム]
2013年10月19日(土) 午後10:00~午後11:00(60分)
ジャンル ドキュメンタリー/教養>カルチャー・伝統文化
映画>その他

清純派の天才女優ともてはやされた時代からスキャンダルに彩られた時代まで起伏に富んだ人生を歩んできた女優・大竹しのぶ。名監督を次々と虜(とりこ)にした真の姿とは?

出演者ほか【出演】大竹しのぶ,【語り】徳田章

女優の大竹しのぶが「青春の門」で映画デビューを果たしたのは17歳の時。以来、清純派の天才女優ともてはやされた時代から、スキャンダルに彩られた時代まで、起伏に富んだ人生を歩んできた。かれんで純情な表情を見せたかと思えば、男を破滅させる悪女の顔をのぞかせる…女優・大竹しのぶの真の姿とは?貧しかった子ども時代や名監督との映画制作の舞台裏など、知られざるエピソードを通して、その人生と素顔に迫る。

BS世界のドキュメンタリー オリバー・ストーンが語るアメリカ史「第10回」東京

2013年06月17日 | テレビ

オリバー・ストーンは、もともと批判を恐れず主張が先に立つ人ではあるけれど、最終回に至って当人が姿を現して直接呼びかける。このシリーズを通して戦死者などの数が出るたびに、オリジナル番組が採用している数だという注釈がついた。諸説あって確定していないということなのだろうけれど、大勢の犠牲者が出たことに変わりはないではないかと思ってしまう。

「ブラックホークダウン」がアメリカ軍を英雄的に描いてたっけとナレーションに違和感を覚えた。そのくせ画面はアメリカ兵がよってたかって殺される場面だったりする。

オバマに対しても結局、レーガン・ブッシュ路線の踏襲だと厳しい裁定が下される。まあ、最近では日本でも持ち上げる風潮は色褪せてますが。

冷戦の最大の勝利者はウォール街だと語られる。ストーンの父親がウォール街関係者なのは有名だけれど、二本の劇映画を含めて個人的なこだわりは続いているみたい。

あと、かなり共産主義陣営に対するシンパシーが強いのには違和感を覚える。ロシアでこの類の番組が作られたら、ゴルバチョフやエリツィン、あるいは毛沢東やカストロはどう扱われるだろう。

チャンネル [BS1]
2013年6月15日(土) 午前0:00~午前0:50(50分)
ジャンル ドキュメンタリー/教養>ドキュメンタリー全般
ニュース/報道>特集・ドキュメント
ニュース/報道>海外・国際

番組内容
映画監督オリバー・ストーンが歴史学者とともに独自の視点でアメリカ史を描き直す全10回の意欲作。第10回は、テロの時代が幕開けしたブッシュ、オバマ時代を描く。

詳細
映画監督オリバー・ストーンと歴史学者のピーター・カズニックが共同で脚本を手がけ、アメリカ史を新たな視点で描くドキュメンタリーシリーズの第3週。最終回は「テロの時代 ブッシュからオバマへ」。経済的繁栄をおう歌していたアメリカは、2001年9月11日の同時多発テロ事件を契機に光景が一変する。テロとの戦い、アフガン、イラクへの軍事介入。「アメリカ帝国」と呼ばれ膨大な軍事費を支出するアメリカの未来を考える

BS世界のドキュメンタリー オリバー・ストーンが語るアメリカ史「第9回」

2013年06月16日 | テレビ
しかし、フセインをアメリカが援助していたのを改めて映像でみせられると、アメリカの欺瞞ぶりがよくわかる。ノリエガやビン・ラディンも援助していた頃の映像は見られないが、同様だった。

レーガンがスター・ウォーズ計画という名前に酔っ払って核拡散を収束に向かわせるチャンスを逃したと批判している。このシリーズは劇映画を大幅に引用しているわけだが、現実の方が映画に接近して見分けがつかなくなっているのを踏まえてかもしれない。その延長上に「映画のよう」だった9.11があるわけだろう。

この頃のアメリカを象徴する映画として古代ローマを舞台にした「グラディエーター」が挙げられ、唯一の超大国となって傲慢になる帝国としてのアナロジーだと語られる。

「ボラット」でブッシュの物真似をするサシャ・バロン・コーエンが敵の血をすすってやると息巻いたそのすぐ後、本物のブッシュのアップがつながれる。オリバー・ストーンらしいあざといといえばあざとい演出だけれど、あまりにあからさまなのにちょっと笑ってしまった。

ゴルバチョフの評価がきわめて高いのに、やや違和感を覚える。アメリカの右翼メディアはもちろん、ロシアでも文句つけられるところではないか。ゴルビーの歴史的位置付けはこれからの作業だろうが。

チャンネル [BS1]
2013年6月14日(金) 午前0:00~午前0:50(50分)
ジャンル ドキュメンタリー/教養>ドキュメンタリー全般
ニュース/報道>特集・ドキュメント
ニュース/報道>海外・国際

番組内容
映画監督オリバー・ストーンが歴史学者とともに独自の視点でアメリカ史を描き直す全10回の意欲作。第9回は冷戦崩壊の後、“アメリカの一人勝ち”と言われた時代を描く。

詳細
映画監督オリバー・ストーンと歴史学者のピーター・カズニックが共同で脚本を手がけ、アメリカ史を新たな視点で描くドキュメンタリーシリーズの第3週。第9回「“唯一の超大国”アメリカ」は、冷戦終結の時代を描く。湾岸戦争も天安門事件も起きた激変の時代、“唯一の超大国”となったアメリカは、世界との関係を再構築できるチャンスではなかったのか、とストーン監督は見る。しかし、実際は従来の外交姿勢を崩すことはなかった

BS世界のドキュメンタリー オリバー・ストーンが語るアメリカ史「第8回」

2013年06月15日 | テレビ
このシリーズは劇映画の引用を頻繁にやるが、今回はオリバー・ストーン自身の二作「サルバドル」と「ウォール街」が出てくる。こういう一応リアル志向の、しかも自作と、「ランボー3 怒りのアフガン」みたいに今だとマンガにしか見えない映画とを、あまり頓着しないでごっちゃに扱うのが、おもしろいところ。雑駁ともいえるし、全体に作者の主張が強く出ている中で不協和音的な役割を果たしている感じもある。

それにしても、レーガノミックスというアベノミクスの明らかに元ネタになった言葉が今の経済的価値観一本やりのグローバリズムの基調を作ったことが改めてわかる。

連邦通信委員会(Federal Communications Commission 略称:FCC)が骨抜きになったことでFOXテレビのような一方的な政治宣伝をする右翼メディアが台頭したと主張。ちょっとこのあたりの事情はよくわからないが、名指しで他のメディアを批判するというのは日本では考えにくい。

レーガンの自伝Where's the rest of me(出演作の台詞の引用)をレーガンの欠落感の象徴のように扱っている。フィクション=ノンフィクションの線引きは限りなく低い。

チャンネル [BS1]
2013年6月13日(木) 午前0:00~午前0:50(50分)

ジャンル ドキュメンタリー/教養>ドキュメンタリー全般
ニュース/報道>特集・ドキュメント
ニュース/報道>海外・国際

番組内容
映画監督オリバー・ストーンが歴史学者とともに独自の視点でアメリカ史を描き直す全10回の意欲作。第8回は冷戦末期に起きた米ソ首脳による軍備管理交渉に光をあてる。
詳細映画監督オリバー・ストーンと歴史学者のピーター・カズニックが共同で脚本を手がけ、アメリカ史を新たな視点で描くドキュメンタリーシリーズの第3週。第8回「レーガンとゴルバチョフ」は、ソビエトのブレジネフ書記長死後の混乱を経て、ゴルバチョフが登場し、レーガン大統領との間で一連の米ソ首脳会談を行っていく。中でも1986年のレイキャビク会談は、核兵器削減交渉において「大きな歴史の分岐点だった」とする。
出演者ほか【解説】藤原帰一

BS世界のドキュメンタリー オリバー・ストーンが語るアメリカ史「第7回」

2013年05月09日 | テレビ
このシリーズはニュースフィルムや宣伝映画、商業映画といったさまざまな種類の映像をコラージュする、オリバー・ストーンの劇映画とすると「ナチュラル・ボーン・キラーズ」で極端なかたちとして採用したのと基本的な方法をとっていて、センセーショナルなプロパガンダ的なニュアンスはかなり強い。

ストーン自身の映画の引用はされていなかったのは、屋上屋を重ねることになってしまうからでもあるだろう。
ジョンソン大統領がお気に入りだったという「パットン大戦車軍団」の星条旗を背にしたパットンの演説、「地獄の黙示録」の「ワルキューレ」に乗ったヘリ軍団の殲滅作戦、「ランボー 怒りの脱出」の人質救出シーンなど、特に興奮をかきたてるシーンが選ばれている。
それらは思想的にはこのシリーズの仮想敵扱いなのだが、手法としてのセンセーショナリズムという点ではストーン自身との体質と地下水脈が通じてしまっているようなところは、やはりある。

ストーン自身が個人的にべトナムに行った体験については番組内部では一切触れられておらず、感情的に批判的なトーンとして溶解している。

持てる者と持たざる者との格差と対立というのが今になって始まったのではなく、もともと飽くことなき獰猛で貪欲な資本主義体質の内部に胚胎していたものに思える。

ジョンソンの「私が要求するのは絶対的な忠誠心だ。デパートのショーウィンドーで俺のケツの匂いを嗅いで、バラの香りがいたしますと言えるくらいのな」といった発言の品性の悪さに今更ながらげんなりする。

「共産主義」に対する恐怖というのは現実の共産国に対するものではなく、アメリカの権力者たちが猜疑心から敵の中に投影していた自身の暴力性に対する恐怖だったのは間違いないところ。
今だとその歪んだ鏡の名前が「テロリスト」や「イスラム」になっているということだろう。

チャンネル [BS1]
2013年5月9日(木) 午前0:00~午前0:50(50分)
ジャンル ドキュメンタリー/教養>ドキュメンタリー全般
ニュース/報道>特集・ドキュメント
ニュース/報道>海外・国際

番組内容
映画監督オリバー・ストーンが歴史学者とともに独自の視点でアメリカ史を描き直す全10回の意欲作。第7回は、監督自身も従軍したベトナム戦争の過ちを鋭く問い直す。

詳細
映画監督オリバー・ストーンと歴史学者のピーター・カズニックが共同で脚本を手がけ、アメリカ史を新たな視点で描くドキュメンタリーシリーズの第2週。
第7回は、泥沼化するベトナム戦争中の核兵器使用の検討など、力で押し切ろうとした政府高官たちの行動を描く。そして、大義なき戦争を“組織的に美化”し、教訓を得ようとしなかった政治家たちの姿勢や、今もなお続くアメリカ社会の分断を厳しく指摘する。

出演者ほか
【語り】鈴木省吾

BS世界のドキュメンタリー オリバー・ストーンが語るアメリカ史「第6回」

2013年05月08日 | テレビ
オリバー・ストーンは「JFK」でえんえん暗殺の陰謀論を描いているが、今回はそこに至るまでを埋めた感。
ケネディが政権についてからアイゼンハワーの戦略にひっぱられるところに始まり、数々の判断ミスを犯し、キューバ危機で本当に世界が破滅するぎりぎりのところをフルシチョフとともに辛うじて乗り越えるあたり、いかにもドラマ的なうねりを持った構成。

ここで「悪い父親たち」にひっぱられたのを振り切ったことが後に憎まれて暗殺に至ったというまとめ方をしていて、初めから敵対していたというより途中から離反した分激しく憎まれたともいえる。そしてその「悪い父親たち」がケネディ以降の大統領の座に着き続けたとも。

東京大空襲をはじめ日本中を爆撃したカーティス・ルメイがソ連に向かって、「あのクマ公の脚を折ってやる。それからタマをつぶしてやる」と言い放ったというエピソードが紹介され改めて猛烈に腹が立った。今更ながらなんという下劣低劣な人間か。本当に世界が滅ぼされかねないところだ。

世界が滅びてもかなわない、ソ連に一人残り、アメリカに二人残れば勝ちだと本当に考えていたらしい。「博士の異常な愛情」の抜粋が再び使われていて、あの映画でシェルターで核戦争を生き残ったあとは男一人に女大勢のハーレム状態の方が人口を回復するのに貢献できるというセリフがあったが、アメリカで生き残る二人は男と女一組であるべきだろうなどという宣伝映画らしき映像の抜粋が見られる。アダムとイブ気取りだ。当然キリスト教原理主義ともつながってくるのだろう。

ソ連の原子力潜水艦がアメリカの駆逐艦の機雷攻撃を受けて核魚雷発射の一歩手前にまで来て副艦長の制止によってなんとか回避できたというあたり、「クリムゾン・タイド」のデンゼル・ワシントンそのまんまで、映画の方がそういう秘話をネタにしたのかとも思わせる。

フルシチョフが初め険悪だったケネディとともに辛うじて危機を回避してから勇者気取りの連中が学ばなかった何事かを学び政策に反映させるようになってから弱腰扱いされ無くなった後もまともな墓も作られなかったという。
何物も学ばない愚か者だけが勇ましいことを言っていられるのだろう。それがどうかすると「強く」見えてしまうアイロニー。

チャンネル [BS1]
2013年5月8日(水) 午前0:00~午前0:50(50分)
ジャンル ドキュメンタリー/教養>ドキュメンタリー全般
ニュース/報道>特集・ドキュメント
ニュース/報道>海外・国際

番組内容
映画監督オリバー・ストーンが歴史学者とともに独自の視点でアメリカ史を描き直す全10回の意欲作。第6回はケネディの登場と突然の死が歴史の分岐点の1つだったと説く。

詳細
映画監督オリバー・ストーンと歴史学者のピーター・カズニックが脚本を手がけ、アメリカ史を新たな視点で描くドキュメンタリーシリーズの2週目。
第6回はケネディの時代。冷戦と反共主義で弱体化した民主党のホープだったケネディは、キューバ危機で全面核戦争を回避。核軍縮と米ソの平和的共存を訴えた。しかしソ連に対して弱腰だと軍部や保守派の怒りを買い、その死後、後継者たちは再び核の大量保有に進んでいく。

出演者ほか
【語り】鈴木省吾

BS世界のドキュメンタリー オリバー・ストーンが語るアメリカ史「第5回」

2013年05月07日 | テレビ
引用される劇映画が「ゴジラ」「博士の異常な愛情」「影なき狙撃者」など、アメリカが核と反共に囚われた時代だったことを如実に示す。第五福竜丸の実写映像がゴジラの直前に置かれているところなど、心得たもの。
この頃のアイゼンハワーの核抑止力政策が、今の日本の原子力政策に直接つながっているのもわかる。

実物のマッカーシーが議会にいる共産主義者の数を聞かれるたびに違う数字を挙げるが、これが「影なき狙撃者」にマッカーシーの風貌を含めてまるまる再現されていること、アルドリッチの「キッスで殺せ」で箱を開けると強い光が中からさしてくるシーンなど、劇映画が当時の状況の非常にはっきりしたメタファーの役割を果たしているのがわかる。
それは赤狩りによってあからさまな表現ができなかった裏返しでもあって、劇映画の引用が前回までに比べてより複雑で切迫したニュアンスを持つ。

軍人として広島の原爆投下に批判的だったアイゼンハワーとウォーレスが、政治家の道を歩むか否かによって、核と反共に対して寛容な道を選ぶかどうか道が分かれるのが興味深い。

アカとして生きるより死んだ方がまし、核によって滅びた方がましとまで言い放つアメリカの反共ヒステリーにちょっとめまいがしてきた。


チャンネル [BS1]
2013年5月7日(火) 午前0:00~午前0:50(50分)
ジャンル ドキュメンタリー/教養>ドキュメンタリー全般
ニュース/報道>特集・ドキュメント
ニュース/報道>海外・国際

番組内容
映画監督オリバー・ストーンが歴史学者とともに独自の視点でアメリカ史を描き直す全10回の意欲作。第5回は1950年代の米ソの核開発競争の激化をみていく。

詳細
映画監督オリバー・ストーンと歴史学者のピーター・カズニックが共同で脚本を手がけ、アメリカ史を新たな視点で描くドキュメンタリーシリーズの第2週。
この回は、冷戦構造が確定し、核開発競争が繰り広げられるアイゼンハワー大統領の1950年代。国内では軍事産業の隆盛により繁栄と平和をおう歌する一方、対外的にはおびただしい数の核兵器を配備し“力の外交”によるアメリカン・エンパイアーを確立していったと締めくくる。

出演者ほか
【解説】東京大学大学院教授…藤原帰一,【語り】鈴木省吾

プレミアムドラマ 「どくとるマンボウ ユーモア闘病記 」

2013年03月12日 | テレビ
北杜夫役が佐野史郎、喜美子夫人が羽田美智子、娘の由香さんが中越典子といったキャスティングによる再現ドラマ部分と、本物の家族のインタビューなどによるドキュメンタリー部分とを混ぜた構成。娘さんが父親そっくり。

それにしても躁状態になった時のはた迷惑ぶりは最近読んだ「パパは楽しい躁うつ病」斉藤由香著で話としては知っていたけれど、再現して見せられるとこれはたまらないなと改めて思う。
一度に複数の証券会社と取引している時のメモなど実物を見るとぐちゃぐちゃでなんだかすさまじいものがある。発症前に書かれた「楡家の人びと」の原稿の字と比べてみると、おかしくなっているのは一目瞭然。

なだいなだが「北さんと同じ病気ですよ」と患者に言うと素直に治療を受けるようになったと語る。「ゲーテと同じ」という言い方もあるけれど、ちょっと距離ありすぎるものね。

中島らももドラマにはできるだろうな、と思った。遺伝性の躁鬱の上にアルコール依存と医者の多剤処方と自分で勝手に飲んだドラッグが混ざっているから、もっと難しいだろうけれど。

※ 病気の認知度がまだ低い時代に、自身の躁鬱(そううつ)病を作品でカミングアウトした人物がいる。芥川賞作家で精神科医の「どくとるマンボウ」こと北杜夫。84歳で他界するまでの40年間、躁鬱(そううつ)病とつきあった。株での大破産 !?。マンボウ・マブゼ共和国の建国。騒動を繰り返す杜夫を支え続けたのは2人の女性、妻の喜美子と娘の由香だった。どんなピンチに直面しても笑顔を絶やさず、日々の暮らしの中にささやかな幸せを見つける。ユーモアあふれる愛情表現で病を乗り切った、ある一家の闘病記。残された膨大な写真やメモ、そして2人のインタビューを交えて、家族の固い絆を描きだす。さんざん笑ってホロリと泣ける、まさにプレミアムドラマ。
3月11日 20:00~20:59 BSプレミアム

パパは楽しい躁うつ病
斉藤由香 著
朝日新聞出版

太宰治短編小説集「駈込み訴え」

2013年01月31日 | テレビ
太宰の原作は「ジーザス・クライスト・スーパースター」を先取りしたような、ユダのキリストに対する同性愛的な愛憎を描いたものだが、これを転倒させて、女子高生の集団内に置き換えて描く。
イエスと十二使徒の世界が完全に男たちで閉じているのを女の子たちにしたら、愛憎ぶりがより際立って見えるのにちょっと驚く。

キリストが十二使徒の足を洗ってやるところを、足の爪にマニキュアをしてやるという具合に置き換えるなど、才気横溢。

小説の人物はもちろんもちろん男で、語りも男の声(警察官役の香川照之)で画だけ女の子たちという異化的な世界。
製作は2010年らしいが、女の子たちの中に剛力彩芽の名前が見える。

チャンネル [BSプレミアム]
2013年1月30日(水) 午後4:30~午後4:55(25分)
ジャンル ドラマ>国内ドラマ
ドキュメンタリー/教養>文学・文芸
ドキュメンタリー/教養>カルチャー・伝統文化

番組内容
太宰治の名作短編を映像化する「太宰治短編小説集」。今回は「駈込み訴え」(1940年)。映画監督・西川美和が現代日本を舞台に映像化。
出演者ほか香川照之,清水くるみ,日南響子

詳細
太宰治の名作短編を映像化する「太宰治短編小説集」。今回は「駈込み訴え」(1940年)。“申し上げます。申し上げます。あの人を生かして置いてはなりません。…”聖書や「最後の晩餐(ばんさん)」で知られる“裏切り者=ユダ”。ユダの密告の一部始終を、彼の一人語りで太宰独特の感情表現であらわした名作。映画監督・西川美和が、現代日本を舞台に映像化。

邦画を彩った女優たち「もっと演じたかった 女優 田中好子」

2012年10月21日 | テレビ
「黒い雨」の今村昌平が小津安二郎の言をひいて「テストと本番が変わらないのがいい役者」で、田中さんがそれです、原節子以来ではないかとすら言う。
しかし、原節子(1920年6月17日生)は今でも生きているんだな。今村昌平('26生)より年上だ。

「黒い雨」でカットされたカラーのお遍路姿の断片が見られる。バックには「網走番外地 悪への挑戦」('67)ののぼり旗が見える。

日本アカデミー賞受賞式の泣いている顔のアップ、あまりメイクしていないのかそばかすが見える。

「鏡の女たち」でも原爆がモチーフになっていたし、癌との闘病で放射線治療を受けて髪が抜けていた、という暗合。

チャンネル [BSプレミアム]
2012年10月20日(土) 午後10:00~午後11:00(60分)
ジャンル ドキュメンタリー/教養>ドキュメンタリー全般
映画>邦画
情報/ワイドショー>芸能・ワイドショー
番組内容去年4月、この世を去った女優・田中好子。命の尊さを伝える使命感を持っていた彼女が、死の間際に残した言葉「もっと演じたかった」の裏には、どんな思いがあったのか。
出演者ほか【語り】平田満

詳細2011年4月、惜しまれながらこの世を去った女優・田中好子。病の床から語りかけた言葉「もっと演じたかった」は強い印象を残した。“元キャンディーズのスーちゃん”としか見られない苦悩の中、巨匠・今村昌平監督らとの出会いの中で、演技派として目覚めていく。誰からも親しまれる母親役の一方で、命の尊さを伝える使命感を持っていたことは知られていない。死の間際に残した言葉の裏にどんな思いがあったのか、見つめる。

天皇の世紀 #11 #12

2012年10月17日 | テレビ
11 長崎と亀山社中

勝海舟や龍馬を世話した当時の商人・小曽根乾堂(けんどう)の子孫の小曽根邦二郎氏が証人として登場。
勝海舟が咸臨丸で出発した頃、勝の長崎の現地妻が妊娠五ヶ月で、勝の出立後生まれた娘が小曽根家に引き取られた、と語る。
妻のお龍が止まって月琴を弾いたとか、龍馬が他の侍と一緒にされないよう白袴をはいて闊歩していたとか。

海外渡航を勝手に企てて割腹した近藤長次郎の墓に刻まれた龍馬の文字を見せる。跳ねるような線が組み合わさった独特の字体です。

長崎の苦力街の三階建て木造の今にも崩れそうな建築の映像にかぶせて、上海生まれのチャイニーズに混じってかなり日本人がいたというインタビューが流れる。

長崎の史跡の保存が悪いのは、長崎の商人は旦那気質で番頭任せだったので開国とともに入ってきた旅の人(よそ者)に追いやられ、旅の人は保存には興味を持たなかったからだというのが邦二郎氏の分析。今ではどうなっているのか。あのボロい三階建てが残っているとは思えないが。

伊丹十三がタバコをすいながらインタビューする。今だと考えにくいですね。

12 勝海舟の長州談判

同志社大学に左翼のタテカンが出てます。

勝の大言壮語癖にツッコミが入る。
慶喜の命を受けてしぶしぶ長州征伐の尻拭いの調停を頼むにあたって自分の胆力で快刀乱麻を断つ如く解決したかのような老年(のメイクをしている)の勝の証言のあと、伊丹十三自身が若い勝をびしびし問い詰めるのが可笑しい。

勝が厳島神社に十両の金子をつけて奉納した刀というのを神社側に検証したら(検証役を勝に扮する山本學がやるのがまたおかしい)、賽銭箱の横に勝手に置いていっただけだ、と実物をみるとこれがチンケな刀なのです。

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天皇の世紀 #9 #10

2012年10月14日 | テレビ
9 龍馬と勝海舟 -客の座 1-

なぜか南北逆になっている当時の日本地図が、ちゃんと色刷り印刷されている。浮世絵はもちろん多色刷りだけれど、あれと地図(相当細かく描きこまれている)とは違うし、どうやって印刷したのか。
勝海舟(山口 崇)の役作りのところからメイキング風に見せる。ズラはつけないで、地毛をオールバック風にした方がいいな、とか。

10 龍馬と勝海舟 -客の座 2-

西郷と桂の会談を、終わった後どんな風に会談に臨んだのか並ばせてインタビューするという形式で描く。何やら芸能人の会見みたいな語り口になるのです。

このあたりは何度となくドラマ化されているところで、原作者も龍馬好きなところから、かえって新味はあまりありません。
龍馬(原口剛)がとにかく現代日本の道路をのっしのっしと歩き続けるイメージが印象的。

関係ないけれど、やたら維新や龍馬をダシにする奴ってイヤですね。
ウィキのこの番組の情報、相当に混乱してます。

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天皇の世紀 #7 #8

2012年10月11日 | テレビ
7 馬関の戦い

「優秀映画鑑賞会推薦」のタイトルが出るのが妙な感じ。
戦闘を見せるのに矢吹明彦のイラストを使う。検索かけてもあまり情報が出ないけれど、伊丹十三の「日本世間噺大系」の表紙を描いていた人かな。

長州藩主が「権謀を以って和を制する」と言っていたのが「信義を以って和を制する」ところりと代わるのに大笑い。
幕府もお粗末だが、長州の上の方もお粗末。
高杉晋作を演じているのが岸田森。

編集中のムヴィオラを動かしたり止めたりしているのを撮影して、再現フィルムを操ってみせる手つきが今のビデオのようでおもしろい。

8 外国艦隊 大阪に出現

幕末に黒船が大阪に来たのを、番組制作当時に空母ミッドウェイが横須賀に入港したのに例えているのが、今だと奇妙に聞こえる。今、横須賀にアメリカの空母がいるのに抵抗感を持つ日本人、どれくらいいるだろうか。
伊丹十三が紋つき袴でちょんまげ姿で徳川慶喜に扮し、横須賀市議会席からいかにも型どおりの答弁をする皮肉。

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警視-K #1 #2

2012年10月10日 | テレビ
「影武者」を降板した直後の勝新太郎が製作・監督・主演し、低視聴率で13本で打ち切られたことで逆に有名なテレビシリーズ。
テレビ版「座頭市」同様、シナリオはあってなきがごとしで役者のアドリブというか、監督(というより座頭=ざがしらと言った方がいいかもしれない)の勝新の口立てで役者のその時その場の反応を引き出していく作り。

そういう微妙な生理感というかリアリティを感知するには正直テレビ画面だと気が散るし、話がわからないセリフが聞き取りずらいといった当時よく言われた不満は今見てもある。

いきなり手錠を投げて悪者にがちゃり、なんて格好つけた場面が出てくるのがすごく唐突。
座頭市だったら居合抜きで悪者を切り倒す、という見せ場は確保されているけれど、現代の刑事ものではやたら殺すわけにもいかず捜査のプロセスがわからないと成り立たない。

合う人にはいいのでしょうけれどね。
日本映画専門チャンネルにて放映。

勝新太郎/奥村真粧美/川谷拓三/石橋蓮司
監督 原作
勝新太郎
脚本 公開年
高際和雄/勝新太郎 1980
上映時間 放送話数
49分 全13話

第1回「そのしあわせ待った!」今宿署勤務、賀津勝利<がっつかつとし>(勝新太郎)。彼は警視という身分でありながら、現場好きという理由だけで特別捜査室と二人の部下を持つという破天荒なデカ。そんな彼のもとに、選挙運動資金強奪事件が舞い込む。事件を突き詰めていくうちに、賀津は被害者の宮城(石橋)こそが狂言回しを演じているのではないかと疑り始める。

第2回「コルトガバメントM1911」血液を抜き取られた変死体が発見された。被害者から摘出された弾核は、ベトナム戦争時に使用されたコルトガバメント1911のものであることがわかった。入手経路を辿っていくうちに、賀津は身の毛もよだつような犯人に遭遇する・・・。

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