prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「夜明け前」

2003年04月29日 | 映画
「木曽路はすべて山の中である」という有名な文句のナレーションから始まるわけだが、徳川から明治にかけての歴史の大きな動きは山の中まで入ってこなくて、ちらちらとその片鱗が通り過ぎるだけの、一種舞台劇的な構成をとっていて、宮島義勇のカメラもあって重量感たっぷりだが、ちょっとかったるくもある。隣の若い男の客は、途中すやすやと寝息をたてていた。滝沢修が初め折り目正しい立ち居振る舞いだったのが、歴史と権力に翻弄されていくうちラストでは発狂状態になるのだが、これが初めからファナティックになると、同じ吉村公三郎監督「襤褸の旗」の三國連太郎になる。
(☆☆☆)


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「ネメシス S・T・X」

2003年04月27日 | 映画
自分との戦いっていうのは、戦う方が若くて弱くないと盛り上がらないと思うのだけれど、主役が貫禄たっぷりのピカード艦長なもんで、あんまり葛藤って感じしないのですよ。

エンドタイトルが出ていても席を立つ人が少ない。出来が良くて立たないというのとは少し違う。タイトルには出ていないのに「スター・トレック」シリーズのファンってことなんでしょうかね。劇場版はたまにしか見ないもので今頃気付いたのだけれど、操縦士をやっているレバー・バートンって、「ルーツ」のクンタ・キンテやってた人?

画面がちょっと暗すぎ。デザイン感覚がどうしてもテレビシリーズから離れられないので古い感じがする。
(☆☆★★★)


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「台所太平記」

2003年04月24日 | 映画
事実上のオムニバス。原作者の谷崎潤一郎らしき作家の家の女中役で、いろいろなタイプの若手女優がとっかえひっかえ現れるという趣向。作中ちょっと時代が変わっていくとナレーションで触れているが、今こんなに何人も女中を雇っている家がどれくらいいるのかとあるのかと思わせる。
家の調度の立派なこと(伊藤熹朔・美術 撮影・岡崎宏三)。あと若い女の子のありかたの変わりようにびっくり。左幸子のブキミでレズっぽい役だけは現代的。
(☆☆★★★)


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「黄金の腕」

2003年04月24日 | 映画
フランク・シナトラの麻薬中毒患者演技が売りの映画。製作当時('55)としてはショッキングな題材だったのだろうが(オットー・プレミンジャーはそういう素材を探してくるのが巧いので有名なプロデューサー=ディレクター)、逆にいうとそれひとつで映画一本作れてしまったのだから、今ほど深刻ではなかったということ。

身体障害者のふりをしてシナトラを引き止めているエリノア・パーカーの役は、今だとかえって描くのは難しいだろう。セット撮影主体なのだが、長いトラッキング・ショットを生かして生中継的なリアル感を出している。昔の映画のいいところで、傍役がいちいち雰囲気がある。
(☆☆★★★)


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「ヘヴン」

2003年04月21日 | 映画
イタリア語と英語がごっちゃに出て来て、特に英語の方に合わせていない作り方が好ましい。製作陣にシドニー・ポラックの名が見える。ケイト・ブランシェットの感情を蒸留したような演技。
随所に使われている省略法がストーリーの展開を早めるという以上に、抽象化・寓話化を助けているよう。空にヘリコプターが溶け込んでいくような名ラストシーン。
演出は「ラン・ローラ・ラン」とは別人のように集中度高し。これのように監督の遺稿が映画化されるということは割とあるが、脚本家の遺稿がされるというのは井手雅人の「女殺油地獄」くらいのもの。
(☆☆☆★)


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「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」

2003年04月20日 | 映画
詐欺師の話といっても、離婚による父親の喪失と永遠の少年といったスピルバーグ的モチーフが先行していてなりたい相手にフィクションの世界だけでもなりすますコンプレックスの代償行為という描き方。

唐突だが「復讐するは我にあり」をネガとした時のポジという印象。モチーフがあまりにもろに出過ぎている気はするが。ラストの肩透かしを重ねてどーんと来る手は昔のスピルバーグだったらもっとくどくやっていただろう。

スケールからすると小品に近いが、風俗の再現や映像の質などはさすがにゴージャス。ただし、タッチとすると割と軽い。タイトルデザインは、昔のソール・バス風。
(☆☆☆)


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「CUBE2」

2003年04月15日 | 映画
一作目とまるで同じパターンなので、逆にあれは一回性のアイデアだったのがわかる。CUBEに閉じ込められた連中の普段の生活がマルチスクリーンで描かれたり、物理学者やら大企業やらが思わせぶりに出てくる分、本質的な抽象性が壊れて白ける。
キャラクターに感情移入する作りではないし、やたらうっとうしいキャラが多い上、同じキャラが死んでもまた現れたりするものだから、色々なトラップが現れてもちっともはらはらしない。向上したのはCGだけ。

「第2段階が完了しました」なんてラストで言われるけど、三作目も作るつもりかい?
(☆☆★★)


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「近未来蟹工船・レプリカント・ジョー」

2003年04月14日 | 映画
おバカ映画かと思ったし、監督もそう言っているけれど、案外辛気臭い。「蟹工船」だものね。
なぜか水野晴郎が若い娘の活け造りを賞味しようとするグルメの役で出てくるが、あまり冗談に見えないのが怖い。
(☆★)


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「青の炎」

2003年04月12日 | 映画
蜷川幸雄の映画前2作はさっぱりだったので、あまり期待しないで見に行ったが段違いの出来。
横移動で人物を追うと手前や奥に別の人物がさりげなく入ってくる、など映画的な芝居の組み方。アイドルをきちっと役者として使う腕(舞台でもけっこうやっている)。
松浦亜弥など、テレビで見るイメージとまったく違うので驚いた。ラストカットの長い無言のアップなどなかなか出せるものではない。

海辺の道や切り通しなど、鎌倉のローカルカラーの出し方。中村梅雀の善人面で凄みをある刑事役。アル中おやじが山本寛斎なのにもびっくり。車道を走る自転車をわざわざ反対車線の上の方にカメラを突き出して移動して追うカットなど、アングルが凝っているだけでなく、実は後の伏線になっている。

駅で主人公たちが半ば抱き合っているところにぞろぞろ電車から降りてくる客が通りかかるところがあるが、全員ほとんど無視している。数からして多分隠し撮りだろうけど、無関心なものですね。

抗酒剤を酒に混ぜて昏倒させるというのは、ひっかかった。酒をまったく呑めない人が無理に酒を呑んだのと同じ状態になるのだから、眠くなるより先に頭痛や動悸、吐き気などが先に来るのではないか。ラストの刑事の恩情(?)も、警察はこういう隙は見せないだろと思わせる。
(☆☆☆★★)


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「アナライズ・ユー」

2003年04月11日 | 映画
英語の台詞が全部わかったらだいぶ違うのだろうが、あまり優れたギャグがあるとは思えない。エンドタイトルのNG集って、カンフーアクションの失敗を見たりすると(大変だなあ)と感心もするが、台詞のトチリではあまり面白くない。ギャング役者がずらっと並んで歩いてくるところは、図体がでかいだけに迫力あり。
それにしても、なんで「ウエスト・サイド物語」なんだ? 若い時見た映画ということか?
(☆☆★★★)


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「リベリオン」

2003年04月09日 | 映画
ストーリーは「華氏451度」のエピゴーネンとしか言いようがない。だけど、“管理社会”で感情を抑制するか? 管理する側は大衆の感情を<>するのであって、なくなられてはむしろ困るはずだ。それに、こんなに情報の管理が甘い“管理社会”があるものか。
それで“反逆”に走った主人公が何をするかというと、とにかく敵をばたばた倒すだけで、その他のキャラクターは使い捨てられるだけ。これじゃエリート主義と<>をでっちあげて倒せばいいという独善性のアマルガムで、批判しているつもりの相手と思考・行動パターンがまるで同じ。あまりに幼稚な思想・世界観にげんなりする。
ガンカタ(銃=型)という、銃と弾丸が描く軌跡を殺陣の刀に見立てたような様式化されたガンファイトはかなり面白いだけに、余計なテーマ抜きでアクション・シーンを立てるように作ってもらった方がありがたかった。
(☆☆★★★)


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「黄龍 イエロー・ドラゴン」

2003年04月06日 | 映画
ストーリーがよくわからない。人間の身体能力を何倍にもする代わり赤血球を破壊して死に至らしめる薬“黄龍”の副作用を除く抗体の持ち主を探すわけだが、原爆で体内に抗体ができたというすごい設定で、その娘に抗体が遺伝しているというのも変な話。
もっとわからないのが、つけ狙う連中が抗体の持ち主を殺そうとしているとしか思えないこと。殺しちゃまずいでしょうが。
カンフー・アクションは分量が多い割に切れ味が鈍い。ワイヤー・ワークがいかにも吊ってますって感じ。

なぜか前の回が終わると、小学校低学年くらいの児童がぞろぞろ二十人近く出てくる。
(☆☆★)


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「リロ&スティッチ」

2003年04月02日 | 映画
悪くはないけど、アカデミー賞で「千と千尋」でなくてこれがとってたら怒るぞ。なんか有色人種の描き方を知らないみたいな画。センス合わず。
DLP上映はフィルムより透明感がある気がする。実写では少しマチエールがプラスチックがかるが、アニメには向いている気がする。
(☆☆☆)


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「日本列島」

2003年04月02日 | 映画
日本がサンフランシスコ条約が結ばれた後でも実質的にアメリカの占領下にあり、そこでさまざまな謀略が行われているというのは、この映画が作られた38年前からまるで変わっていない。ただ、一般の感覚が悪く慣れてしまいこの映画みたいに真面目に悲憤慷概しなくなっているだけなわけで、今見ると謀略のおそろしさよりむしろ作り方のナイーブの方が印象に残る。 巧みにローキーの陰影を生かした撮影の見事さ。
(☆☆☆★)


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「エルミタージュ幻想」

2003年04月01日 | 映画
最初のうちの横板に鳥餅といった時間感覚と、ラストの茫洋たる風景はソクーロフだなあと思う。96分ワンカット、一日限りのワンテイク。外国からの使節の謝罪を聞く儀式のシーン、ちらっと二階の張り出しで人影が隠れるのが見えるが、あれくらいじゃNGにできないよねえ。
(☆☆☆)


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