prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ザ・リング2」

2005年06月30日 | 映画


水に、三日月に、燃える木といった視覚的モチーフが全体にわたってかなり細かく統御されている。
日本版の「2」が闇鍋みたいにごちゃごちゃした作りなのとは対照的。
ビデオを燃やす場面で夜空に三日月が見えたり、子供部屋の窓ガラスに星が描かれていて、大詰めの井戸の場面でも思わぬ形で三日月のモチーフが顔を出すなど、芸が細かい。
母と子供の関係の修復が全体のテーマだが、水と組み合わさった三日月は欠けた母性の象徴といったところだろうか。
サマラ(貞子)の実の母のキャスティングに納得。

その母が入っていた救護院がマクダレン修道院というのは、望まぬ妊娠をした女性から子供を取り上げ、神の意思に背くふしだら女として社会から隔離した(映画「マクダレンの祈り」にもなった)悪名高い実在の修道院から名前をとったものだろう。

犠牲者がくわっと口を開いて死んでいるのは、日本版「リング」の型を踏襲しているが、ただ口を開いているのではなくて骨格が歪んでいるように作っているのは手がかかっている。
水の操り方など、あまりCGに頼らず生の効果を強く出しているのは、見ていてどこかほっとする。

監督が日本人ということは見ていてあまり意識しない、監督が表に出ない作りだが、通してみると最近のハリウッド映画としては、けたたましくなくて結構、新鮮。
(☆☆☆★)



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あちこち故障

2005年06月29日 | Weblog
隣の寿司屋が、何のつもりか水道の蛇口が壊れたといってやってくる。うちで修理できるわけもないのに、何のつもりなのかわからないが、とにかく見に行く。パッキンが弛んでいるのだから、元から取り替えなければいけないのは素人目にも明らか。そういうと、納得していた。聞くまでもないと思うのだが。
とにかく、寿司屋の楽屋裏を期せずして見ることになる。小奇麗な店とは裏腹のごちゃごちゃした空間。コンロもシンクもごつくてむき出しな感じ。

借り物のiPodが突然動かなくなって慌てるが、また突然動くようになる。どこが悪かったのか良かったのか、不明。いじれる箇所は極端に少ないのだから、変な動作のしようがないはずなのだが。



「フォーガットン」

2005年06月27日 | 映画
もとをただせば、1889年のパリ万国博覧会にインドからやってきた母娘のうち母が失踪し、娘がいくら探しても誰もそんな婦人は見ていない、という実話が元なのだろうが(ヒッチコックの「バルカン超特急」もそう)、こういう話は辻褄合わせが難しい。
合理的に説明するとなーんだということになりかねないのだが、ここでは逆にトンデモに走って、なんじゃいこれは、になってしまっている。
オープニングの「ウエストサイド物語」ばりの真俯瞰ショットから予感されたことではあるけれど。

ハリウッド映画だと「家族」はほとんどジョーカーみたいな万能のカードになってるみたい。
ジュリアン・ムーアが白人にありがちなサメハダなのが、大画面で見ると苦しい。
(☆☆★★)



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「ザ・インタープリター」

2005年06月25日 | 映画
「コンドル」もそうだが、どうもシドニー・ポラックはサスペンスがうまくない。
国連ロケ、バスの爆破シーンなどリアルな迫力はあるが、この人誰だったっけとか、どうやって脱出したのかとか、筋がわからなくなるところが散見する。
ニコール・キッドマンの役の設定、国連の職員が身元がああ曖昧で通るものだろうか。

暗殺の標的になる独裁者がもともと抵抗の闘士だったという設定で、善玉悪玉の戦いではなく拳銃=復讐に走るか言葉=話し合いに頼るか(だから通訳という職を選んだという)の争いになるのは、まじめな作り。
キッドマンは美しいが、ショーン・ペンが年の割りにいやに老けて見える。
(☆☆☆)



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「炎と女」

2005年06月25日 | 映画
人工受精による子供を実の子供として認識できるか、といったモチーフは、製作当時(1967)としては普通の社会劇としても作れたのだろうが、何しろ吉田喜重監督(脚本は山田信夫と田村孟と共同)だから、おそろしく抽象的で観念的で高尚な作り。
その分、人工受精など珍しくもない現代になってもあまり古びていない。

子供(カメラ)に向かって親たちがえんえんとおよそ情緒を排した、論理的倫理的に親であるとはどういうことかという思弁を繰り返す。子供のかわいらしさをフォローしようなどとは薬にしたくもしていない(勝手にかわいく写ってますけどね)。

およそとっつきやすくないが、媚びないのは偉いとは思う。あるいはその逆に、偉いとは思うが、面白くはないとも言える。
(☆☆☆)



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劇場自らミリオンダラー・ベイビーお勧め

2005年06月24日 | Weblog


新宿ジョイシネマがわざわざ自分で作って掲示している賛辞で、こういう映画館が自分でお勧めするというのは、割とありそうでなかった。
本気で勧めていると思いますよ。

ところで、原作の英語表記だとMILLION $$$ BABYなのですね。



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「ホステージ」

2005年06月23日 | 映画


設定その他「ダイ・ハード」の本歌取りみたい。
ブルース・ウィリスがあそこで子供を誤射した黒人警官にあたる役を演じて、その苦悩の芝居ぶりを見よということだろう。
黒幕の人質の取り方や銃撃戦の血飛沫の生々しさ、悪役たちの仲間割れなど、いささか陰惨な感じが強い。なんでウィリスがプロデュースも兼ねたのかは、よおっくわかったが。
メインタイトルのデザインは3D化したコミックストリップみたいで、予告編からももっと洒落っ気を強調した作りかと思ったらまるで違う。
やたらと盛り沢山な趣向な割に脚本は大きな破綻はないが、ラストの燃える家の中のどこに誰がいるのか演出はさっぱり明確に示せないでいる。
監督はフランス人、キャストもフランス勢が混ざってるみたいで、タイトルデザインの担当もなんとかフランスといった工房。なんかおフランスも最近すっかり殺伐としてるな。それとも昔からか。
(☆☆☆)



ホステージ - Amazon

時差ボケ

2005年06月22日 | Weblog


時差ボケしてます。

工藤静香が「映画大使」に任命されたってニュースですけど、この人、

「爆走!ムーンエンジェル-北へ」(1996)
「極道の妻たち 危険な賭け」(1996)
「未来の想い出 Last Christmas」(1992)

の三本に出ているだけなのですが。




「クローサー」

2005年06月21日 | 映画
パトリック・マーバーの舞台劇を原作者自身が脚色。演出のマイク・ニコルズも、もともと舞台演出の経験が多い人。
だから、場面のつなぎ方が通常の映画とかなり違い、初めのうち飛躍の仕方が呑み込みにくく、台詞が猛烈に多いので、ちょっとうとうとした。
あと、舞台だと通して見せる一場を他の場とカットバックさせているようなつなぎ方が、あちこちにある。ただしそれとわかって見ると、演出に混乱はない。どころか、舞台映画双方を知った演出家でないとできない手際と思える。

エンドタイトルで名前のある役が四つだけ、この男二人女二人の、三人四人入り交じるのではなく、もっぱら一対一の息の長いやりとりで通している。
本当のことを言われると傷つき、嘘を言われると怒る、かといって何も話さずにいられない。
相手がライバルと寝たかどうかしつこく聞く一方で、寝る具体的な場はまったくなし。
純粋な対話がえんえんつ続く格好になる。

こういう男女の間でものすごくしつこく言葉で相手の意思を確かめようとする志向、スタミナというのは、あまり日本の風土には、少なくともドラマにはない世界と思える。あちらには、「バージニア・ウルフなんかこわくない」「ある結婚の風景」ほか、傑作がいくつもあるのだが。
(☆☆☆★★)



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「ミリオンダラー・ベイビー」

2005年06月20日 | 映画
条件がいいジムに移ってしまう選手のエピソードとか、かなりトレーナーの政治力が試合を組むのを決めるといったあたり、ボクシングの裏面まで繊細に描いている。
ヒロインが客の食べ残しを食べたり、家族が生活保護をあたまからあてにしているプア・ホワイトの生活の描写がリアル。
ナレーションで運ぶ作りはフリーマンの声の良さを生かしたものでもあるが、ラストともに映画の神話的なニュアンスを出した。
スワンクの文字通り体当たりの演技、フリーマンの惨めな姿の中の威厳はもちろんだが、役者としてのイーストウッドも、もっと評価されてよかった。
後半の展開は、「許されざる者」「ミスティック・リバー」に続き、消えない罪・原罪という言葉を思わせる厳しいもの。
(☆☆☆★★★)




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「ケイブマン」

2005年06月18日 | 映画
台詞としてははっきり出てこないが、統合失調症(精神分裂病)を患って洞窟暮しをしている男が探偵役という微妙な設定。どこかおそるおそるという感じの公開のされ方だったのはそのせいか。
幻覚シーンがキリスト教的にまがまがしい天使が乱舞するというもの。演出のセンスが伴わず、あまり迫力がない。
神父による性的虐待絡みというのも非クリスチャンからするとピンときにくい。
実は禿頭だからやたらヘアスタイルに凝れるのだというが、、サミュエル・J・ジャクソンが役に合わせて大がかりなレゲエ頭。



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「オペレッタ・狸御殿」

2005年06月15日 | 映画
「オペレッタ」にしても「狸御殿」にしても、今どきこんなん作る人間いないぞ、という映画。意外と昔の狸御殿ものに忠実。エンドタイトルにちゃんと「原案・木村恵吾」と出てくる。
薬師丸ひろ子が厚化粧ながら狸そのまんま。
チャン・ツィイーが色っぽく撮れているのは結構。
(☆☆☆)



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「宇宙戦争」(ワールド・プレミア)

2005年06月14日 | 映画
先日、武道館で予定されていたプレミアがセキュリティの問題で中止になって、今回(六本木ヒルズ)が本当のプレミア。
携帯を預かるわ金属探知機を通るわで、これほど物々しい警備も珍しい。

ポップコーンの類がロハというのは、得した感じ。
もっとも、ポップコーンとホットドッグとミネラルウォーターと、いつも買うのと同じメニューしか結局頼まなかった。

大林宣彦がいた、山田まりあがなぜかいた。

全席指定制で、前から二列目というのは近すぎるよ、と思ったが、トム・クルーズとスピルバーグを2メートルとない至近距離で見たのは、さすがに興奮する。

で、映画の中味なんだが、意外なくらいH・G・ウェルズの原作に忠実。
原作で印象的なところはつけおとしなく入っている。
かなり強引に家族ドラマに引き付けてはいるが。
(☆☆☆★)



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