prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

2008年5月に読んだ本

2008年05月31日 | Weblog
prisoner's books
2008年05月
アイテム数:6
緒形拳を追いかけて
垣井 道弘
05月20日{book['rank']
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「絶対の愛」

2008年05月27日 | 映画

ちょっとヒッチコックの「めまい」の裏返しみたい。恋愛がらみで同じ顔に振り回されるか、違う顔に振り回されるかの違いで。後半のクレイジーな展開が見もの。
整形手術をもろに写すシーンなど、若干ハッタリくさい感じがする。
困ったことにというか、イケメンが全部同じ顔に見えるのだね。皮肉で描いているのかどうか。

彫刻公園、って訳されていたけれど、妙にエロチックな彫刻ばかり集めた、しかも潮が満ちてくると彫刻がちょうどいい具合に水に漬かる公園なんて実在するのだろうか。実在していたらすごいけれど。それぞれの現代彫刻はややゆるい出来ながら、映像にしてみるとインパクト大。
(☆☆☆★★)


「パルメット」

2008年05月26日 | 映画
原作は、ジェームズ・ハドリー・チェイスのJust Another Sucker。監督はなんと「ブリキの太鼓」のフォルカー・シュレンドルフ。なんでまた、アメリカでフィルム・ノワールを撮ったのか、と思わせる。監督・原作の名前を隠して見たら、ジョン・ダール監督・脚本の低予算クライム・サスペンスか何かと間違えそう。
もっとも期待しないで見ると、後半どんどんドツボにはまっていく展開が結構楽しめる。

ウディ・ハレルソンがタフな割にバカ正直で損をする、さらに女に弱いという典型的ハードボイルドヒーローをなかなか感じを出してやっているのだが、セクシーというよりやたらまるまるとしたエリザベス・シューが悪女役、ヘビ顔のジーナ・ガーションが同棲中の恋人役というのは、ちょっと逆ではないかと思わせる。

関係ないけれど「愛の嵐」のリリアーナ・カバーニが、パトリシア・ハイスミス原作のLiplay's Gameをジョン・マルコビッチ主演で撮っているけれど、日本未公開。「太陽がいっぱい」「リプレー」のトム・リプレー・シリーズもので、原作は「アメリカの友人」と同じもの。ちょっと見てみたいのけれど輸入物のVHSを買う気までにはならず。
(☆☆☆)


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「僕はラジオ」

2008年05月25日 | 映画

実際問題として、知的障害を抱えた男に性的警戒感を持つ、というのは特に女子生徒の保護者からすると無理からぬところがあるのではないか。知的障害者を天使みたいに扱うのは日本のテレビだけではないらしい。もっとも伊丹十三ですら「静かな生活」で知的障害者に性欲があるところをはっきり描いたら反発をかったものですからね。デリケートな問題ではあるのだけど。

施設に連れて行こうとする役人を悪役がかって描くのもルーティンだけれど、実際にどこまでケアしきれるのか、という問題に映画自体が答えているとはいえない。「感動」して終わりってわけにはいかないはずだ。生活は何十年も続くのだから。

実話ネタで、ラストで本物の「ラジオ」とコーチが出てくるのでなんとなく納得してしまうけれどけれど、「本当かなあ」と思わせる設定に「いや、実話ですから」とエクスキューズできる方便、という印象が強い。
(☆☆☆)


「ダメジン」

2008年05月24日 | 映画

なんだか思いつきを並べたみたい。こういう勝手な作り方って、見ていて自由より作者の押し付けを感じる。
ダメ人間というのはきっちり描かれると「まともな」人間とか社会のいかがわささを逆に照らし返したりするのだが、そういう批評性があるわけでもない。

旅行会社の人にカルチャーショックを受けたい人にはインド旅行を勧めると聞いたことがあるが、なんか(ガンジス?)川に漬かったりしている男といったインド風の描写がまぎれこんだりするけれど、それは日本で中途半端に再現されたインドですからねえ、何のインパクトもない。ガンガーに動物の死体が浮かんでいるのと、ここで猫が死んだり、ドラックを扱ったりする描写とがつりあうわけもない。
(☆☆★★)

「大いなる陰謀」

2008年05月23日 | 映画
上院議員とジャーナリスト、大学教授と学生、アフガンに派遣されているアメリカ兵たち、の三つの場面がかわりばんこに描かれるのだけれど、それぞれのつながりがいかにも「頭で作った」感じでまるで感情的に巻き込む力がなく、かといって緻密な議論を味わうというわけにもいかない。理屈っぽい割りにこれといって新鮮な切り口や視点はなく、今更の観が強い。

三大スター以外の無名の兵士たちの出番が一番手ごたえがある。レッドフォードの「まじめさ」が硬直した方に出てしまったみたい。残念。
邦題はレッドフォード主演の「大いなる勇者」にひっかけたのかもしれないけれど、あれ自体違和感のある邦題(原題は主人公の名前「ジェレマイア・ジョンソン」)だったものなあ。
(☆☆★★★)


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大いなる陰謀 - goo 映画

キー局では報道されないタシィ・ツゥリンさんの記者会見

2008年05月22日 | Weblog
全国区マスコミでは「台湾国籍」のとしか伝えなかった長野聖火リレーで威力業務妨害で逮捕されたタシィ・ツゥリンさんの記者会見を報道した朝日放送「ムーブ」の映像です。

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「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

2008年05月22日 | 映画
オープニング、赤ん坊の額に石油=黒い水を塗る「洗礼」をほどこし、ウィスキーを混ぜたミルクを飲ませようとするあたりからすでに反キリストの匂いが出ている。石油掘りの作業の最中に、サタンのようにしばしば穴に「墜落」するのだし。

主人公ダニエルが隣の牧師を偽預言者だと自己批判させるクライマックスはもちろんだが、教会の側にしてからがダニエルに「洗礼」を施し「悔い改める」のを条件にパイプラインの敷設権を認めるのだから、どっちが反キリストだかわかりゃしない。
ブッシュ政権を支えたキリスト教原理主義と、石油利権で権力を得てイラクに攻め込んアメリカ資本主義(貪欲主義というべきか)の自己中心的な原型が現れている。というか、ブッシュがどうこうというより根は深い。

アメリカのYou Tubeで「おまえのミルクシェーキを吸い取ってやるうっ」と半ばギャグみたいにして受けているらしいダニエルの狂いっぷりにしても、そのミルクシェーキというのはウィスキー入りの、生まれながらに頭をおかしくさせるミルクってことだろう。デイ=ルイスは神を欠いた人間を入神の演技で見せる。

主人公のダニエルの異母弟と名乗る男にせよ、兄弟をわざわざポール・ダノの一人二役で演じてさせている隣人の息子たちにせよ、ここに出てくる「兄弟」はニセモノばかり。兄弟はおろか、親子関係もニセモノの匂いがついてまわる。人間も風景もすごいくらい荒涼としている。善意がまるで通用しないのはもちろんだが、悪さえ成立しないくらい他との関係が壊れている。

ジョニー・グリーンウッドによる現代音楽の古典のような音楽が強烈。見てすぐサントラを買う。
(☆☆☆★★★)


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「バス男」

2008年05月21日 | 映画

冒頭で主人公がスクールバスに乗るのと、オタクっぽいところから「電車男」にひっかけたのだろうが、なんてえ邦題だろうね。
原題は「ナポレオン・ダイナマイト」で、なんと主人公の名前。世にも景気のいい名前とは裏腹のさえない男が一念発起「しないで」、そこそこいいところを見せて彼女ができる。
同じようにさえないメキシコ系の友人を担ぎだしたハイスクールの生徒会長選挙演説のあとのショー(アメリカだと選挙とショーが同じものらしい)に出て踊るのがクライマックスなのだけけれど、通常ありそうな伏線やドラマ的な組み立てなしでいきなりそこそこうまくいってしまう。

主演は「俺たちフィギュアスケーター」でオカマ風美青年スケーターをやっていたジョン・へダー。もともと演技でさえなく見せているけれど、主役を張るくらいの役者はとうぜん本当は華があるので、クライマックスも成立する。
ジャイアンみたいな理不尽なマッチョなおじさんが悪役風がジョン・グリース。もっとマッチョな奴にコテンパンにされたりして、見かけほど悪いわけではなくてそれなりにさえなくて苦労しているのがわかる描き方。

やたらチャットをやりすぎて通信代がかかっていけないなんて会話があるけれど、アメリカの田舎町は常時接続じゃないのか。
冒頭のタイトル・デザインからポップな色彩と洒落っ気を見せ、細かいところで飛躍と省略をしかけた編集が冴えている。
(☆☆☆★)

「恍惚」

2008年05月20日 | 映画
女医をしている妻が自分で金を出して娼婦を雇い、夫を誘惑させて浮気の情事の様子を微に入り細に穿ってしゃべさせて聞き入る、という話なのだが、本当に夫は浮気しているのか具体的な場面はまったく出てこないので、もしかするとまったくの娼婦の作り話ではないかとも思わせる。

虚実定かならぬ中、男が浮気の「話」を聞いて回春の手段とするとしたら谷崎潤一郎ばりの話なのだけれど、これが女の話となると別に夫との仲が一見して大きく変わるわけではないのが不思議な感じ。
途中から手詰まりになったのか狙いなのか、後半新展開がなくなるのでけだるい感じになる。

婦人科の女医という設定で、患者の乳房を触診しているさりげない情景などが、娼婦と共に「女だけの世界」を作ってしまうのとつながっているよう。
ファニー・アルダンとエマニュエル・ベアールが並んでいるとあまりにタイプが違うので半ばカップルみたいで、夫役のジェラール・ドパルデューは蚊帳の外という感じ。
(☆☆☆★)


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「ブレイキング・ニュース」

2008年05月19日 | 映画

オープニングの七分間に及ぶ長まわしの銃撃戦がすばらしく、犯人を取り逃がして面目を失った警察が香港らしいゴミゴミした高層アパートを舞台にして女性警視ケリー・チャンの指揮のもと映画の勉強をしたというスタッフがメディア用の警察の「活躍」報道を捏造して、これに反発した犯罪者側がメディア戦略競争をし返す構想が面白い。

もっとも、「ダイ・ハード」風の趣向と、あとスター映画でもあるわけで誰を配役序列のトップ扱いにするのか腐心してあれこれストーリーをいじった節があって、いささか欲張りすぎなのと、システムの扱いなど緻密さという点ではかなり欠けるのが惜しい。
警察・犯人の両者が人情味をアピールするのに食事をおごる場面を流すのが香港らしくて面白い。
(☆☆☆★★)


「マッチポイント」

2008年05月18日 | 映画
作家というのは年をとるとふっと作風が突然変わるみたいだが、克明な犯行の描写のうちに、え、いいのかと思わせる展開が混ざってくる手際は、今までのアレン作品になかったノワール的なタッチ。
ただ舞台がロンドンに移ったのでずいぶん意匠は変わっても、考えてみると結末のつけ方は「重罪と軽罪」の変奏。

新しい環境とともに、若い娘(スカーレット・ヨハンソン)から回春のモトをもらっている。
オープニングのテニスのボールがどっちに落ちるか、という映像が象徴的なのと同時に優雅。
(☆☆☆★)



「鉄人28号 白昼の残月」

2008年05月17日 | 映画

音楽が伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」なのにちょっとびっくり。伊福部節がいやでも連想させる「ゴジラ」が持つ戦争と戦後の匂いを出したかったのかな。

50年以上前の丸まっこいマンガの線を再現しながら今風のアニメのアングルや動きを組み合わせていく凝った作り。
(☆☆☆)

「ルワンダの涙」

2008年05月15日 | 映画

「ホテル・ルワンダ」に比べて、「良心的」な白人の無力ぶりの方に焦点が合っていて、特に国連軍の内政不干渉主義(それは一応帝国主義時代の内政干渉の「反省」から生まれたものではあるのだが)の硬直化批判が目立つ。
原題のShooting Dogsも、攻撃されなければ反撃できない、という理屈から、では死体を食べている犬を撃つのに「許可」はいらないのか、という複雑なアイロニーから来ている。

ルワンダ人は犬と一緒か、という意味もあるし、先にやられたのならやり返してもいい、という理屈は要するに真珠湾攻撃を日本攻撃の糸口にした陰謀と一緒で、相手に先手を取らせて「悪魔化」してではいくらでもやっつけていいとすり替える植民地支配の作戦と同じ理屈。

虐殺の描写を表に出したのは難しいところで、「本物」の虐殺写真がかなり自由に見られる現在、いささかウソくさく映る。
ルワンダで楽しそうに虐殺が行われる時に吹き鳴らされるホイッスルの音が、イギリスのオックスブリッジのスポーツのフィールドで聞こえて、かろうじて生き延びたルワンダ女性がびくっとするところに、スポーツの「フェアプレイ」の精神の底にある傲慢の暗示を感じさせる。
(☆☆☆★★)




「世界最速のインディアン」

2008年05月05日 | 映画

主人公は寅さんみたいに映画で見ている分には自由で魅力的に見えたりするけれど実際に近くにいたら結構はた迷惑な人だなあ、と思った。周囲がすごい善意の人ばかりだから喧嘩にならないけれど。
以前、「アクターズ・スタジオ・インタビュー」で“今の私は幸せだよ”と言って、イヤミに感じさせないアンソニー・ホプキンスの笑顔が重なって見えた。実は生の顔の方が魅力的に見えた。
乗り込む車の手作り感覚が面白い。
(☆☆☆★)