弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

法律事務所の誘致

2010年05月14日 | 経験談・感じたこと
新潟県柏崎市が開業する弁護士を補助金付きで公募しているようです。

柏崎市:弁護士さん、わがまちに来て!! 誘致へ、300万円補助制度 /新潟

開業資金の一部の補助が受けられるとはいえ、事務所開設後、最低でも5年間は営業義務があるようです。


独立を経験した一弁護士としては、初期費用を押さえられるという点では非常に魅力です。
が、条件となっている「5年継続」について、果たして維持できるのか正直よく分かりません。


おそらくは見込まれる経費として、最低でも…

・人件費25万円程度(事務員1名、社会保険等の事業主負担含む)
・賃料15万円程度
・電気・電話代 3万円程度
・リース代(コピー機やIT通信、サーバー代など) 1万円程度
・弁護士会費 4万円程度(新潟県は分かりませんが…)
・その他諸々 5万円程度(?)

の合計55万円くらいは発生すると思います。

上記経費に自分の生活費を上乗せする必要がありますので、仮に自分の取り分を30万円(税抜き、保険料控除前)とした場合、売上としては85万円は必要になります。


そうすると、開業した場合に「85万円をどうやって売り上げるか」を検証することになるのですが、

・法律相談のみであれば、1時間1万円として85回。月の開業日数を20日くらいとして、1日平均4回以上の相談をこなす必要有り。
(物理的に可能なように見えても、集客することが不可能だと思います)

・法律相談のみで事務所運営を成り立たせることは現実的ではないので、何らかの案件を受任するにしても、仮に法律相談無料で集客し、案件受任で運営するのであれば、着手金を1件当たり10万円とした場合、月8件以上の受任が必要。
(もちろん業務が流れ出せば、案件終了時に報酬金も発生するでしょうから、必ずしも着手金オンリーで考える必要は無いかと思いますが、最初の数ヶ月は着手金のみになってしまうでしょう)

ということに数字の上ではなります。


一見簡単なようにも見えますが、少なくとも現在大阪で開業している私の営業能力(?)では、大阪という地に置き換えた場合、継続的に上記のような数字通りの法律相談や受任案件を引っ張ってくることは難しいです。


要は、有料でも弁護士に依頼しようとする需要が柏崎市及びその周辺でどの程度あるのかにかかってくるのですが、この点は当然、柏崎市も教えてくれないでしょうし(というか分からないでしょう)、他の弁護士に聞いてもおそらく回答できないと思います。



弁護士過疎の問題がいわれて久しいですが、弁護士は一民間事業者に過ぎない以上、どうしても経営面の問題を抜きにして、弁護士過疎の問題を解決することは出来ないと思います。

柏崎市の試みは面白いとは思うのですが、5年間開業してくれる責任ある弁護士が来てくれるのか、ちょっと気になるところです。



※よろしければこちらもご覧下さい。
インターネット・電子(IT)取引、労務・労使・労働問題、フランチャイズ、債権回収を中心業務にしている弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の法律情報ページ


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