ある会合で、知人から「いやあ、頭の上がらない先輩から、筋の悪い依頼事があって困っているんだ」という話を聞きました。
「『ある原稿を本にしてくれ』と言われているんだけど、引用物の著作権のクリア問題とか、結構ハードルが高いんだ。でも消極的な態度を見せると、『なんだお前!ちゃんとやれ!』と無茶な檄が飛ぶ。やりきれないよ、まったく」
どうやらあまり気の乗らない案件を頼まれて、断るわけにもいかず悩んでいるようです。
「小松さん、どうしたらいいと思う?」
そう訊かれたので、こう答えました。「なるほど、自分が傷つかないように、依頼に対してやんわりと異を唱えるにはどうするか、ということですね」
「そうなんだ。でもまともに反対すると激怒されちゃうしなあ」
「そういうときは、他人に仮託するという方法がありますよ。『会議に諮ったら、こういう問題を指摘した人がいたんですよ』と言うんです」
「あ、なるほど。自分の意見として反対するんじゃないんだ」
「そうです。自分が言うと怒られそうなことも、他人の口を借りて、『こんなことを言う人がいたんですよ~』と言うんです。言いにくいことも人が言っている風にして、問題があればそれを指摘するということもあるでしょう」
「それいいなあ。やってみるよ」
ちょっと言いにくいことを上手に言うテクニックって、役に立つときがありますね。
さて、彼の結果を聞いてみることにしましょうか。うまくいくかな?