北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

クリーニングセミナーで、メンテナンス思想の変化を知る

2018-03-08 23:53:06 | Weblog

 

 札幌商工会議所では、会員企業が講師になる様々なセミナーを主催しています。

 そんな数あるセミナーの中から今日は、生活関連商業部会のクリーニング分科会が主催する「クリーニング出張講座」に参加しました。

 講義は四人の講師が「クリーニングの概要について」「クリーニング店の利用について」「実演:職人のアイロン掛け」「クリーニングメニューの付加価値・クレーム例について」と題して、クリーニングを各方面から分析して教えてくださいました。

 クリーニングと家庭での洗濯は何が違うのか、なんてあまり考えたことがありませんでしたが、クリーニング業の定義って、「溶剤または洗剤を利用して、衣類その他の繊維製品または皮革製品を原型のまま洗たくすることを営業とすること」というものなんだそう。

 クリーニング業でも水を使うことがありますが、両者の大きな違いはまず「水温」です。家庭ではせいぜい夏場でも30℃くらいですが、プロの業者さんでは40~70℃の温湯が使われます。
 
 そして二つ目の違いは、洗浄方法の違いです。家庭では一般に渦巻式なのに対してプロはドラム式でかつ容量もずっと大きいので洗浄力が勝ります。

 そしてドライクリーニングという、溶剤を使って汚れを衣類の繊維から引き剥がす洗濯方法では、水を使わないので繊維を傷めないのが特徴。

 特にウールなどの繊維は、水につけると繊維の表面がけば立ってしまい、繊維同士が絡んでしまうので、水洗いだと縮んでしまいます。

 それが溶剤だと、けば立つことがなく洗っても繊維に傷みが出にくいのが特徴。

 会場で、溶剤のサンプルを見せてもらいましたが、溶剤の中にトイレットペーパーを入れてあったのに、水じゃないのでトイレットペーパーが溶けないというのは印象的でした。


    ◆


 私も単身赴任時代は、家で洗濯とアイロンまでかけて過ごしましたが、プロに言わせると、「家庭の洗濯では皮脂汚れが取り切れないので、二回か三回に一度はクリーニングに出すと良いのですが」とのこと。

 スーツなど、季節が変わって衣替えでタンスの奥にしまうときには、通常のドライクリーニングだけではなく、お値段は高くなりますが、ドライと水洗いの両方を行う、ダブルクリーニングで依頼すると溶剤では取れない水溶性の汚れも取れてよりきれいになるそうですよ。

 三番目の講師は、全国ワイシャツ仕上げ競技大会で大会会長賞を受賞した本間利吉さんで、プロのアイロン掛けの技をじっくりと見せていただきました。

 

 今はお店のアイロンも機械プレスが多くなり、6kgもあるような電気アイロンを使ってワイシャツにアイロンをかける職人は極めて少なくなっているそうですが、その代表的な存在が本間さん。

 一枚のアイロンを5分ほどでピシッとかけますが、コツは「常にアイロンを掛ける方向に生地を引っ張りながら作業すると皺が伸びますよ」とのこと。

 かけ方は、袖口→袖→襟→背中→前身頃という順番ですが、畳むところまでが滑らかな手つきで見惚れました。

 
 講師の話の中で、「最近は、皆さんの可処分所得の中でクリーニングに使われる費用の割合が減少傾向にあります」という発言がありました。

 季節代わりの時でも、クリーニングをして仕舞うのではなく、季節が終わったらそのままで次のシーズンに切る直前にクリーニングをするという人も増えたとか。

 理解しにくいところもありますが、それだけお金のかかる時期を後ろ回しにしたがったり、そもそもクリーニングをあまり利用しない人が増えています。

 その背景には、高価なブランド服を着て、それをクリーニングして大事に着続けるというライフスタイルが消えかけていることが感じられるのだと。

 服やシャツが安くなり、お金と手間をかけて大事に着続けるよりも、不衛生ではない程度に着まわして、汚れたら買い換えるという事が多くなっていると感じます。

 モノを大切にしない文化がまん延し、トータルコスパがかからないような暮らし方が支持を得ているようで、そういう考え方は、高いお金をかけた施設をメンテナンスして長く使うというインフラの管理の在り方にも影を差しているように思えました。

 日本人のメンテナンスに対する思想や信仰にも変化が表れているようで、これも時代の流れと言えるのでしょうか。

 クリーニングを通じてメンテナンスに思いの及んだ示唆に富むセミナーで、非常に面白い時間でした。
 

コメント
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