北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

今度はゼンマイがすごい~同友会の会報より

2014-01-31 23:17:45 | Weblog

 先日ばったり、北海道中小企業同友会の知人に会いました。

 会うなり「あ、そうだ小松さん、この本を差し上げますよ」といって渡されたのが『北海道同友第62号』という広報誌。

 同友会の目的は三つあって、(1)良い会社を作ろう、(2)良い経営者になろう、そして(3)良い経営環境を作ろう、ということを掲げています。

 今回の特集記事の中身は、全道行事や支部例会で好評を博した珠玉の報告ということで、総ページが226ページにもなる大部です。

 なかでも興味深く感動した記事がありましたので、同友会さんの許可を得てご紹介させていただきます。


 ーーーーーーーーーーー【以下引用】ーーーーーーーーーーー

 「ローテク『ゼンマイ』で新市場をひらく」
        東洋ゼンマイ(株)(富山)代表取締役 長谷川公一


 ゼンマイは非常に歴史が古く、江戸時代のからくり人形の部品として既に登場しています。

 「機功図彙(きこうずい)」という図面には「ぜんまい」として記録されており、図面を見れば当時と同じようにからくり人形を作ることができます。

 今から300年も前にしっかりした図面を残している点で、日本の物作りは素晴らしいと思っています。


◆東洋ゼンマイの始まり
 当社の創業は、大正時代に黒部川に発電所が建設されたことに端を発します。大正初期に発電所建設計画が始まり、祖父が長谷川鉄工所を起こして、発電所の設備の一部を製作しました。

 その後、1930年に長谷川鉄工所から東洋ゼンマイに社名を変更し、以降ゼンマイ一筋でやっています。日本でゼンマイ製作を専門にしている会社は5者しかありません。

 当社のゼンマイは主に玩具や時計などに使用されており、特に玩具用では世界シェアの30%ほどを占めています。

 手がけるゼンマイの種類は500種類に及び、顧客の要望に合わせたゼンマイを作るのが当社の特徴です。

 ゼンマイは、ステンレスの薄い板を(1)スリット加工(それぞれのゼンマイの幅にカット)し、(2)ラウンド加工(両端を丸く削る)して安全性・耐久性・機能性を高め、(3)800度以上の熱で焼き入れ処理を施して硬性とバネ力を高め、(4)ゼンマイの形に巻いて完成します。

 
◆99%の仕事がなくなった
 高度成長期には、ゼンマイ式タイマーを搭載した家電が流行します。洗濯機、電子レンジ、トースターなどのタイマーは皆ゼンマイ式でした。おかげで業界は好景気にわいたものです。

 しかし、その後電子式タイマーが普及すると仕事が激減してしまいます。なんと99%の仕事がなくなってしまったのです。新しい分野の仕事を探す日々の中で無理がたたり、クモ膜下出血で倒れてしまいました。

 絶体絶命の危機を救ってくれたのが「チョロQ」です。このゼンマイ式ミニカーの流行により、危機を脱することができました。

 車の灰皿を動かすゼンマイは毎月3万個作っています。病院などでよく見かける、開けたら自動的に引き戸の中にもゼンマイが入っています。

 掃除機のコードを巻き取る仕組みにもゼンマイが使われています。皆さんは無意識のうちに生活の中でゼンマイを使っているのです。 

 ゼンマイはローテクですが、これからは「安全」や「環境に良い」など、新しい時代の要請の中で商品作りを進めていきたいと思っています。


◆ローテクとハイテクの融合
 当社が開発したもので、ゼンマイを利用した音声ガイド装置があります。現在150台ほど納入しており、北海道では三笠市の鉄道記念館に1台設置されています。

 この音声ガイドの中にはゼンマイ式の発電機が組み込まれています。ハンドルを回してゼンマイが元に戻る力で安定的に発電をすることができます。

 通常の手回し発電機はハンドルを速く回せば多く発電し、ゆっくり回すと発電しません。素早く回すのは大変なことです。

 ゼンマイ式の場合、回すスピードは発電量に影響しません。決まった回数ハンドルを回せば、老若男女変わりなく同量の発電をすることが可能です。こうして発電した電力で音声を再生したり、LEDを点灯させています。

 ゼンマイで発電できる電力はさほど大きくありません。。少ない電力で音声を再生することができたのは、電子機器が発達して省電力化・機能向上したことに寄るところが大きく、ゼンマイで出来ることの幅が広がったと思います。


◆ゼンマイで恒久的発電を
 私が病床にあった時、「電気を使わないゼンマイで電気を作る」という夢を抱きました。

 ゼンマイ式音声ガイドは小さな子供たちが喜んでハンドルを回しています。「小さな子供の力でも発電できるなら、小さな水の力でも発電できるのでは」と思いつき、水力発電の開発に取り組みました。

 ゼンマイは一定まで巻くとそれ以上巻けなくなり、ゼンマイが力を解放しきってもう一度巻くまでの間は発電することが出来ません。

 そこで、2個のゼンマイを使用し、ゼンマイAを巻ききる直前に巻く動力がゼンマイBに移り、これを交互に繰り返すことで恒久的に発電することが可能になると考えました。

 この発電機に、富山県で古くから脱穀などに使用されていた螺旋水車(らせんすいしゃ)を取り付け、水の力でゼンマイを巻く仕組みです。

 農業用の用水路に設置して発電することを想定しました。通常、水力で発電するには毎秒10リッターの流水と約1メートルの落差が必要ですが、ゼンマイ式なら毎秒3リッターの流水と30センチの落差で発電が可能です。

 まだ実用化には至っていませんが、昨年は土石流の監視用センサーの電源として活用する実験を行いました。

 今年は夜間のLED照明をの点灯を行っています。冬期間は用水路が凍って水車が回らなかったり、ゴミを巻き込んでしまったりと、課題もあります。


◆多様な展開を目指して
 ゼンマイは非常に歴史の古い動力ですが、新しい用途にも応用が可能です。

 ルームハンガーという、部屋干し用の物差し竿を上下させる仕組みにもゼンマイが使用されています。

 高所作業用の命綱の巻き取りにもゼンマイが使われています。まだまだ新しい可能性があると思っています。

 先程ご紹介した音声ガイドは、海外での展開も考えています。

 日本人観光客にも人気がある中国の九寨溝(きゅうさいこう)などはガソリン車の通行を規制するほど環境に配慮しており、そういった観光地で環境に優しい当社の音声ガイドが受け入れられるのではと考えています。

 冒頭でお話ししたとおり、ゼンマイは古くから使われてきました。電気の普及によってゼンマイはもうすぐ無くなると言われてきましたが、家電製品の部品として活用されました。

 車が誕生しても、内装の部品にはゼンマイが多く使われています。新しい文化が誕生するとゼンマイはその中で使用され続けているのです。

 私の仕事は、それぞれの地域の暮らしをよりよくするため、そこに住む方々にゼンマイの良さを伝えていくことだと思っています。

 東洋ゼンマイはゼンマイしか作っていない会社ですが、ゼンマイ水力発電は当社の社員の知恵を総動員して、国の助成金などもいただきながら開発しました。その際には色々な方々に御協力いただきました。

 本日仰いできた北海道の皆様とも、地域で役に立つ存在意義があるような取り組みができればと願っております。
 (2013年4月10日 札幌支部4月例会にて)


 ーーーーーーーーー【引用終わり】ーーーーーーーー--


 いかがでしょうか。

 いかにもローテクなゼンマイは、余計な電気や高価な装置を使わずにモノを動かしたりエネルギーを貯めたりすることができるスグレモノでした。

 チョロQが会社を救ったというエピソードも面白いですね。

 ゼンマイで駆動する小型水力発電装置についてはこちらに詳しい記事がありました。

 アイディアは無限です。

【ゼンマイ駆動の小型水力発電装置 J-Net21より】
 http://bit.ly/Lwrcna
 

  

コメント
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