かねてより希望していた阿寒湖のマリモについて知りたくて、阿寒湖畔のエコミュージアムセンターを訪ねました。
こちらでは市役所の職員のWさんが、もう何年もマリモの研究を続けています。研究の目的は、学術的な意味でマリモの生態を明らかにしよう、ということと、もう一つは地域を特徴づける観光資源としてどうやってマリモを増やし、その関心を多くの人にもってもらえるか、ということ。
もともと天然記念物にまで指定されるほどの大切な資源でありながら、なぜか保護に関する研究は旧阿寒町で細々と行われてきて、それが合併後も引き継がれ、現在は釧路市の教育委員会として研究が継続しています。
※ ※ ※ ※ ※
さて、マリモは1898年に発見され、1921年に天然記念物、1952年からは特別天然記念物として指定され保護に努められてきました。
ところが最初のうちはその生態がわからず、保護活動が裏目に出ることも何度かあったのだそう。
たとえば、かつてマリモが大量に浅瀬に打ち上げられたことがあって、これではマリモが死滅してしまうというので、打ち上げを防ぐ護岸工事がなされました。
ところが天候によって浅瀬に打ち上げられることも全体的な生態としては十分にあるべきことだ、というのが最近の研究ではわかってきました。
ヒステリックで性急な取り組みは後にしっぺ返しをくらう苦い思い出として語られる保護活動の一つです。
※ ※ ※ ※ ※
昔はマリモが観光資源として人気を博し、湖畔から出る観光用フェリーに乗って生息地を巡るツアーもありました。
その後は保存のために生息地へ船で入ることはなくなり、代わりにできたのが阿寒湖に浮かぶチュウルイ島に作られたマリモ観察センターです。
私も阿寒観光汽船さんのモーターボートでチュウルイ島へと向かいました。

マリモ観察センターではマリモの生態や実物展示などがあり、直径30センチの巨大マリモに至ってはつつくことだってできます。ビロードのような細かい繊維質が繊細です。
案内してくれたWさんによると「かつてはものすごい人がここを訪れましたので、長々とした説明は避けて、ちょっと見たらすぐに帰ってもらうような工夫をしていたのですよ」とのこと。


最近では阿寒湖への観光入れ込み自体が苦しい時が続いていますが、Wさんは、マリモ観光も保護行政が行き過ぎてしまい、そのために人々がマリモに対する関心をほとんど失ってしまったことも原因の一つと考えています。
かつては阿寒湖に4か所あった自生地もいまでは2か所に減っており、このあたりは厳正な保護活動が継続しています。
Wさん外の研究により、次第にマリモの生態や丸くするための育て方も明らかになってきました。
「マリモはそもそもは藻類なのですが、丸くなる性質を発揮するためには湖底からの湧水や、ある程度の塩分濃度、さらには風による波でマリモがゆらゆらと動くことなどのいくつもの条件が合致して初めて丸いマリモができることがわかってきました。例えばマリモが転がるのに適度な波ができるためには湖面の長さが5km位必要だといった水理分野の研究などが知恵をもちよって、少しずつその生態を支える環境が明らかになっています」
またWさんは、「保護を進める一方で、消えてしまった自生地でマリモを新しく増やして、そちらのほうはマリモと触れ合えるような観光資源として使えないかという夢をもっています。そのために、生育の調査記録や育成を地域の子供たちに手伝ってもらっています。子供たちの関心が将来の愛着に繋がることを期待しているんです」と言います。
こちらの研究室では、割れたマリモを再び丸く育てる過程で、マイクロチップを埋め込み、一つ一つの個体で管理する方法を取っています。そのことで、一つ一つの大きさや重量などの変化を正確に記録することができるのです。
幸いにしてこれまでの研究の結果、大きな天変地異でもない限り、現存する群生地を維持することは可能なほど技術的な知見は高まっているとのこと。
マリモ観光が再び脚光を浴びる日が一日も早く訪れることを祈ります。

【このマイクロチップをマリモに埋め込みます】
こちらでは市役所の職員のWさんが、もう何年もマリモの研究を続けています。研究の目的は、学術的な意味でマリモの生態を明らかにしよう、ということと、もう一つは地域を特徴づける観光資源としてどうやってマリモを増やし、その関心を多くの人にもってもらえるか、ということ。
もともと天然記念物にまで指定されるほどの大切な資源でありながら、なぜか保護に関する研究は旧阿寒町で細々と行われてきて、それが合併後も引き継がれ、現在は釧路市の教育委員会として研究が継続しています。
※ ※ ※ ※ ※
さて、マリモは1898年に発見され、1921年に天然記念物、1952年からは特別天然記念物として指定され保護に努められてきました。
ところが最初のうちはその生態がわからず、保護活動が裏目に出ることも何度かあったのだそう。
たとえば、かつてマリモが大量に浅瀬に打ち上げられたことがあって、これではマリモが死滅してしまうというので、打ち上げを防ぐ護岸工事がなされました。
ところが天候によって浅瀬に打ち上げられることも全体的な生態としては十分にあるべきことだ、というのが最近の研究ではわかってきました。
ヒステリックで性急な取り組みは後にしっぺ返しをくらう苦い思い出として語られる保護活動の一つです。
※ ※ ※ ※ ※
昔はマリモが観光資源として人気を博し、湖畔から出る観光用フェリーに乗って生息地を巡るツアーもありました。
その後は保存のために生息地へ船で入ることはなくなり、代わりにできたのが阿寒湖に浮かぶチュウルイ島に作られたマリモ観察センターです。
私も阿寒観光汽船さんのモーターボートでチュウルイ島へと向かいました。

マリモ観察センターではマリモの生態や実物展示などがあり、直径30センチの巨大マリモに至ってはつつくことだってできます。ビロードのような細かい繊維質が繊細です。
案内してくれたWさんによると「かつてはものすごい人がここを訪れましたので、長々とした説明は避けて、ちょっと見たらすぐに帰ってもらうような工夫をしていたのですよ」とのこと。


最近では阿寒湖への観光入れ込み自体が苦しい時が続いていますが、Wさんは、マリモ観光も保護行政が行き過ぎてしまい、そのために人々がマリモに対する関心をほとんど失ってしまったことも原因の一つと考えています。
かつては阿寒湖に4か所あった自生地もいまでは2か所に減っており、このあたりは厳正な保護活動が継続しています。
Wさん外の研究により、次第にマリモの生態や丸くするための育て方も明らかになってきました。
「マリモはそもそもは藻類なのですが、丸くなる性質を発揮するためには湖底からの湧水や、ある程度の塩分濃度、さらには風による波でマリモがゆらゆらと動くことなどのいくつもの条件が合致して初めて丸いマリモができることがわかってきました。例えばマリモが転がるのに適度な波ができるためには湖面の長さが5km位必要だといった水理分野の研究などが知恵をもちよって、少しずつその生態を支える環境が明らかになっています」
またWさんは、「保護を進める一方で、消えてしまった自生地でマリモを新しく増やして、そちらのほうはマリモと触れ合えるような観光資源として使えないかという夢をもっています。そのために、生育の調査記録や育成を地域の子供たちに手伝ってもらっています。子供たちの関心が将来の愛着に繋がることを期待しているんです」と言います。
こちらの研究室では、割れたマリモを再び丸く育てる過程で、マイクロチップを埋め込み、一つ一つの個体で管理する方法を取っています。そのことで、一つ一つの大きさや重量などの変化を正確に記録することができるのです。
幸いにしてこれまでの研究の結果、大きな天変地異でもない限り、現存する群生地を維持することは可能なほど技術的な知見は高まっているとのこと。
マリモ観光が再び脚光を浴びる日が一日も早く訪れることを祈ります。

【このマイクロチップをマリモに埋め込みます】