北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

根元の力 ~ 見えない力の働き

2024-05-23 22:22:17 | 報徳

 経営の神様と言われた松下幸之助は、ある意味宗教的な見えない力を信じていたようです。

 彼が座禅を組んで瞑想をしていた時、ある人に「何をお祈りされているのですか?」と訊かれて「一つは根源に対する感謝や。今自分がここに生まれているということも根源の力のお陰げやからね」と行ったという話はつとに知られています。

 彼は昭和37年2月に京都の真々庵(しんしんあん)の一角に「根源の社」という宗教施設を建立しました。

 この「根源の社」はさらに1981年に松下電器本社の敷地に建設された創業の森の一隅にも設けられ、その設立の趣旨については社前の掲示に、下記のように説明されています。

 「宇宙根源の力は、万物を存在せしめ、それらが生成発展する源泉となるものであります。
  その力は、自然の理法として、私どもお互いの体内にも脈々として働き、一木一草のなかにまで、生き生きとみちあふれています。私どもは、この偉大な根源の力が宇宙に存在し、それが自然の理法を通じて、万物に生成発展の働きをしていることを会得し、これに深い感謝と祈念のまことをささげなければなりません。
  その会得と感謝のために、ここに根源の社を設立し、素直な祈念のなかから、人間としての正しい自覚を持ち、それぞれのなすべき道を、力強く歩むことを誓いたいと思います」

 物を作って売ることで利益を得る会社の創業者が、物の充実だけではなく、精神的な充実こそがより良い社業と社員教育に繋がると考えていたことがよくわかります。


     ◆


 ところで松下幸之助は、二宮尊徳の報徳の教えを良く学んだことでも知られています。

 その報徳には二宮尊徳が作った「報徳訓」という唱え文があります。

 漢字108文字からなる構成ですがこれを訓読みにして、常会ではまず参加者一同がこれを唱えてから会議が始まるというのが習わしで、ここには二宮尊徳の報徳の精神が凝縮して込められています。

 この報徳訓の一番初めに登場するのが「父母の根元は天地の令命にあり」という一文です。

 今私がここに存在するのは父母がいたからこそなのですが、その父母がいたことの根源が天地の令名だというのです。

 「令名」という単語を辞書で引くと、今では名声だとか良い評判というような意味しか出てきませんが、ここでは「天地の計らい」と理解すべきでしょう。

 その運命的な計らいによって父母が存在し、続いて「身体の根元は父母の生育にあり」と親の恩が述べられ、「子孫の相続は夫婦の丹精にあり」と子孫のために自分たちも夫婦になって子孫を育てるのだ、と述べられます。

 報徳訓では「根元」と言い、松下幸之助は「根源」と表していますが、その意味は「物事の一番もとになっている始まり」ということでは同じです。 

 物事が始まるという不思議とその力を信じることができるでしょうか。

 
 だんだん若者が結婚しなくなり子供が生まれなくなり人口減少社会が進んでいますが、自分を生んでくれた両親がいたという不思議な始まりの力を「信じる気持ち」も薄れているのかもしれません。

 学校に置かれていた二宮金次郎の銅像を学習すれば、その奥には「父母の根源である天地の令命」にまでたどりつくのですが、もはやそのような教養が失われつつあるようです。


 

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1 コメント

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マルテンサイト変態千年グローバル (鉄鋼材料エンジニア)
2024-11-14 04:19:26
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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