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ふるさとの雪の思い出 その3

(掛川初馬のシダレウメ)

ふるさとで子供の頃には、雪が降ると、どんな遊びをしたのだろう。町場でも家の前には雪がうずたかく積まれる。雪かきした雪に加えて、屋根の雪下ろしした雪が加わる。積雪が1メートルにもなると、昔の木造家屋は雪の重みで、まず、障子や襖の建具の開け立てがスムーズに出来なくなる。放っておけば部屋の中に閉じ込められかねない。だから大屋根に登り雪を下ろすことになる。落す場所は道路しかないから、道路はたちまち雪で埋まる。もちろんとっくに車は通れなくなっているから、人の通行を妨げないようにして、道路は雪の置場に変じる。屋根の雪下ろしのあとは、再び玄関口の雪かきをして、その脇に雪の山が出来る。雪は現代と違い、そのままそこで溶けてなくなるまで置かれることになる。

子供たちにはその雪山が絶好の遊び場で、衣類が濡れて寒くなるまで雪と遊ぶ。最も簡単なのは、雪山にスロープを作り、雪の滑り台を作ることである。滑り台造りに使った、雪かき用の平たいスコップがそのまま遊び道具に変じる。スコップはどの家にもあり、雪かきが楽なように、スコップには蝋が塗られ、滑りやすくしてある。だから、雪の上を良くすべる。柄を前に、スコップに乗って柄に手を掛けスロープから飛び出せば、短い距離ながらすべることが出来る。雪の上だから怪我はしないし、雪が無ければ時々通る車や自転車が危ないこともあろうが、雪に閉ざされれば安全である。何度も何度も飽きるまで遊んだ。

雪が多ければ雪穴を掘ってかまくらを作る。掘り出した雪をかまくらの上部に次々に貼り付けて雪洞を大きくしていく。中に入れるようになれば、中から見て雪の色が暗い部分が雪壁が厚いから掘って言っても壁を崩すことにはならない。明るいところは壁が薄いから、外へ出て見当をつけて雪を張り付けて補強する。そして、かまくらは段々と大きく形が整っていく。かまくらの中に色々持ち込んで遊んだ記憶はない。造り上げたことで満足して終ったようだ。そんな風に造ったかまくらは、一晩置くと外も内も表面が凍り付いて、スコップが立たないくらいに硬くなる。だからなかなか壊れずに、地面から溶けて背が低くなり、入口も小さくなって、やがて中にも入れなくなる。

小学校のグラウンド脇にはスキー場と呼ばれた20メートル足らずのスロープがあった。グラウンドはかつて湿地を埋め立てた場所で、町より少し低かったから、その落差を利用したスキー場であった。戦時中はその斜面が芋畑になったと聞いていたが、子供の頃は草の生えた荒地に過ぎなかった。しかし雪が降ると一変して小さなスキー場になった。スキーをした記憶はないが、手製のそりのようなものですべった記憶はある。自分たちが小学校を卒業して間もなく、そのスキー場には季節が間逆のプールが建設され、夏には後輩たちの嬌声が聞こえてくるようになった。

子供は遊びの発明王だから、雪の遊びはまだまだたくさんあったのだろうが、なかなか思い出せない。
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