ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

「希望」は膨らむか、しぼむか~小池氏不出馬、首班候補未定

2017-10-09 09:45:51 | 時事
 10月7日、ニコニコ動画の主催によるインターネット党首討論が行われました。8日には日本記者クラブの主催の党首討論会が行われました。いよいよ10日には衆院総選挙が公示されます。日本の運命に関わる重要な選挙です。先に週刊文春の選挙結果予想を紹介しましたが、他に自民優勢の予想や自公過半数割れの予想もあり、先行きはまだ混とんとしています。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/265a04fa1a234d0bc4e975011d016cc4

 安倍首相が解散総選挙を決断するに当たり、自民党内の調査による選挙結果予測で30減と出た数字を参考にしたと伝えられます。それくらいの議席減は織り込み済みということでしょう。楽観的な予測としては、サンデー毎日10月15日号で、選挙プランナーの三浦博史氏が「投票率が55%の場合(中略)自民党は18議席減らすものの、自公で304議席。3分の2の310議席には届かないが、過半数の233議席を優に超える」と予測。理由は「(希望の党は)首都圏限定の盛り上がりで、地方にはあまり波及しない」と述べています。一方、週刊現代10月14・21号は、「自民がよもやの野党転落 小池総理、誕生へ」、週刊ポストは「小池新党『東京で24勝0敗』首都完封」と書いています。現代・ポストは、朝日新聞に似て、自社の願望を書いて世論を煽っている感じですが。政治・外交について、めちゃくちゃな記事を書いて大外れしても、一切懲りない雑誌なので、確信犯でしょう。

 衆院選の台風の目は、勢いづいて大勝負に出た希望の党代表・小池百合子都知事。小池氏は「衆院選に出ない」と明言し続けてきましたが、10月5日、民進党代表の前原氏との会談でも、出馬を固辞。最初から全くその気がなかったのか、場合によっては出る気だったのが、状況を見て辞めたのかは、本人のみぞ知る。世論調査の政党別支持率では、希望の党は自民党より約10%低く、これでは都知事職を投げ打って出馬するリスクは取れないと考えたのかも。ここまで出馬を否定していて、これから10月10日までの間に、やはり出ますと前言を翻したら、人格を疑われるでしょう。

 小池氏は、希望の党の代表として、憲法改正賛成、安保関連法維持を民進党からの合流希望者の選別の基準として打ち出していました。ところが、同党の衆院選第1次公認名簿を見ると、安保関連法案に反対した議員がゴロゴロ。小池氏は、権力の獲得・拡張のためには、自分の信念を簡単に曲げることが明らかになりましたね。また、希望の党から公認を受けた元民進党の政治家は、私利(議席=食い扶持)のためには変節を恥じない輩がほとんです。そういう人物に国政は任せられません。詐欺師や変節漢に自分や国の運命を託すのは、愚か者のすることです。有権者は、詐欺師や変節漢の集団の術策に騙されないようにしましょう。

 小池氏が不出馬とすると、今回の総選挙で政権交代を目指すと強気の希望の党は、首班として誰の名前を挙げるのでしょうか。希望の党からなら、前原氏? それでは小池氏は新党を立ち上げず、民進党を自分が応援する形をとっても同じことだったことになります。有権者から見れば、民進が希望に看板を替えただけですから、前原氏が首班候補では得票は伸びません。細野氏? 前原氏よりずっと下がります。若狭氏? 経験不足すぎます。かつて新生党時代の小沢一郎氏が立てた日本新党の細川護煕氏のような隠し玉があるか、どうか。
 私は、与党の勝利と安倍氏の続投が日本にとって最善の道と信じますが、全国の有権者の選択次第。もし自公が過半数を割って、安倍首相が退陣という最悪の結果になった場合、自公と希望ないし維新の連立という可能性があると思います。その時の首相候補として、希望は誰を揚げるか。安倍氏に近い岸田氏の線はないとすると、石破氏? この節義のない挙動不審な人物が僥倖を得るような展開になってほしくないですが、希望の党から、首班候補に石破茂氏の名前が上がっていると報じられます。石破氏は「衆院選が終わった後の枠組みを今、議論しても意味がない」「選挙前にそんな話をするのは極めて不見識だ」と述べました。これに対し、評論家の八幡和郎氏が「『そういう提案があっても絶対に受けない』というべきだ。彼が少しでも可能性を残すことは、自公の票を減らし、希望の票を増やすのだから利敵行為だ」と批判。同感です。

 ここではっきり否定しない所に、石破氏の下心が表れているかも。世論では首相候補の第1位に上がるが、自民党内では支持者が伸びず、自身の言動で孤立気味になっている石破氏には、焦りの色がうかがわれます。希望側としては独自の首班候補をなかなか挙げられない事情ゆえ、逆に自民党に揺さぶりをかけているのでしょう。
 平成5年(1993年)、宮沢喜一内閣の時、野党が内閣不信任案を衆院に提出。野党は自民党の反宮沢派の政治家を首班候補に挙げました。確か小沢一郎氏だったと記憶します。この揺さぶりの結果、自民党が分裂。後に新党さきがけを結成する武村氏ら、新生党を作る小沢氏・羽田氏らが賛成票を投じ、不信任案が成立。宮沢首相は解散総選挙に。その結果、自民党は大敗。新生党の小沢氏は非自民・非共産連立政権を提案し、日本新党の細川護煕氏を首相に。38年ぶりの政権交代となりました。当時の自民党はひどかったが、他党はもっとひどかった。約2年後、混迷の中で迎えた戦後50年の年、阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が起こりました。人心の乱れるとき、天災人災こもごもいたるとは、このことかと慨嘆したことを、私は忘れません。

 10月8日のフジテレビ番組で、小池氏は、衆院選後の首相指名選挙で石破氏を担ぐ可能性について「考えていない」と否定しました。また、首相指名候補に関しては「全て結果を見ないといけない」と語り、選挙後に判断する意向を重ねて示しました。安倍首相は「選挙はどういう政策を掲げる党に日本を託すかということもあるが、誰に託すかということも当然ある」と指摘し、「首班指名の候補者を出された方が、国民にとってより分かりやすい選挙になるのではないか」と小池氏をけん制しました。
 石破氏、小池氏の双方が否定しても、水面下では結ばれていそうな石破=小池ラインは、安倍政権打倒どころか、自民党分裂さえ引き起こしかねない危険性があります。北朝鮮情勢が緊張を増し、来年早々にも米朝激突となるやもしれない現在、日本にとって必要なのは、有事に対応できる政権の安定と、与野党を超えた国民の団結です。有権者は、権力への野望にとりつかれた政治家の私利私欲の画策に振り回されないようにしましょう。

 勢いづいて大勝負に出た小池氏は、足元がぐらつき始めています。10月5日、都民ファーストの会の主要メンバーが離党。小池氏が国政に進出するまで、都民ファーストの会のマスメディア向けの顔となり、同会都議団の幹事長をやっていた音喜多駿都議と、都議選以降小池氏を支えてきた上田令子都議。音喜多都議は離党の理由を次のように語りました。「小池知事の政治姿勢に疑問を持った。二足のわらじが悪いわけではないが、都政は豊洲移転問題や東京五輪を控える中で、都政を片手間にして国政に手をかけることが果たして正しいのか」「小池氏は『都民』の代表を『知事に専念する』と言って都議選後に突然辞めた。国政政党をつくって代表になるのは受け止めきれない」「有権者の期待を裏切った面もあるし大変申し訳ない。掲げた政策を実現するスタンスに変わりはなく、長く知事を支えてきた私が離れるのは、よっぽどのことがあったと思っていい」「(都民ファーストの会は)意思決定のプロセスが不明瞭でブラックボックスな状態になってしまっている。言論規制もあるし、メディアで自由に発言できない。会派運営が未成熟。国政に手をかけるのは順番が違う」と。上田令子都議も、「(都民ファーストは)各都議から毎月、政務活動費15万、党費は6万円が徴収されている。毎月15万、55人で1千万に近い政務活動費は、まさに血税。いくら払うのかどういう契約なのか説明がないのは、まさにブラックボックス」と語りました。こうした発言が実態を暴露したものであれば、小池氏を代表とする希望の会が、同じことを繰り返すことが予想されます。

 ところで、小池氏は、希望の党の主要政策の一つに、アベノミクスに替わるユリノミクスなる経済政策を掲げました。「衆院選に出ない」「都政でしっかり頑張る」と言っている彼女が、自分の名前を冠して、日本全体の経済政策を掲げるとは、まことにおかしな話です。
 レーガノミクス等、指導者の名前をつけた〇〇ノミクスを、本人が言い出したのは、初めてですね。アベノミクスは、朝日新聞がレーガノミクスを模して安倍氏の経済政策を批判するために付けた名称。それが肯定的な意味で使われるようになったもの。小池氏は、自分で名づけて言い出したので、よほど自分を立派に、大きく見せたいのでしょう。虚栄心の現れと思います。
 そのうえ、ユリノミクス、英語ではとんでもない意味になることが指摘がされています。urine は「尿、小便」。urinomics は、weblio 辞書を引くと、"The identification of the totality of the constituents of the urine of an organism"。「有機体の尿の成分の総体を識別すること」ーーーお恥ずかしいことです。命名・発表前にネイティブ・スピーカーに相談して、チェックを受けるべきでした。そういうブレーンがいないのかな?
 小池氏はカタカナ語が多く、カタカナ語を知的なアクセサリーのようにして自分を飾る傾向があります。語学力に自信があるのでしょうが、小池氏は今や全般に自信過剰になっており、ユリノミクス発表は慎重さと謙虚さを欠いています。

 有権者は、候補者の人物・実績・能力を吟味し、また政党の実績・政策を確認して、貴重な一票を投じましょう。