ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

オバマ東京演説に注目する

2009-11-15 15:34:20 | 時事
 11月12日天皇陛下御即位20年をお祝いする奉祝行事が行なわれた。その翌日、オバマ米大統領が来日した。14日天皇、皇后両陛下は大統領を皇居・御所に招いて、ご昼餐(昼食会)を催された。大統領は両陛下に「お会いできてうれしいです。大変光栄です」と述べて何度もおじぎをしたという。握手をしながら深々と礼をする大統領の所作は、西洋式ではない。日本人の所作に見習ったのだろうか。私は単なる儀礼以上のもの、心を感じている。
 オバマ氏は平成21年1月の大統領就任以来、中国重視の姿勢を示してきた。日米同盟の重要性を口にしながらも、実際は中国優先の対応が目立つ。もともと日本への関心が薄く、政権の枢要部には親中派の政治家・財界人が多い。一方、わが国では9月に鳩山由紀夫政権が成立した。鳩山首相は日米地位協定の改定や米軍再編、在日米軍基地のあり方の見直しを打ち出し、また氏の論文がアメリカで反発と疑問を引き起こすなど、日米に隙間が生じた。いまや普天間基地の移設問題が、日米間の重大な懸案となっている。
 そうしたなか、オバマ大統領は13日鳩山首相と会談して、共同声明を発表した。続いて14日午前、都内のサントリーホールで演説を行なった。私は演説の内容に驚きを覚えた。大統領は「日米同盟が発展し未来に適応していく中で、対等かつ相互理解のパートナーシップの精神を維持するよう常に努力していく」として日米同盟の重要性を述べ、「米軍が世界で二つの戦争に従事している中にあっても、日本とアジアの安全保障へのわれわれの肩入れは揺るぎない」として日本とアジアの安全保障への取り組みに変わりはないことを強調した。
 その上で特に注目したいのは、オバマ氏が「私はハワイで生まれ、少年期をインドネシアで暮らした米国の大統領だ。環太平洋地域は私の世界観を形成してくれた」「私は米国初の『太平洋大統領』として、この太平洋国家が世界で極めて重要なこの地域においてわれわれの指導力を強化し持続させていくことを約束する」と述べたことである。オバマ大統領は、自分がアジア太平洋地域で生まれ育ったことを強調し、合衆国を「太平洋国家」と呼び、「太平洋大統領」と自称して、アジア太平洋地域に積極的に関与することを明言したのである。
 これは、稀代の演説の名手による日本とアジアに向けた巧みなリップサービスだろうか。それとも、オバマ政権のアジア太平洋地域に関する認識に変化が起こっているのだろうか。その点、私にはまだわからないが、ここで鳩山首相に望みたいことは、日米関係の重要性を真に理解し、日米関係を主軸としたアジア太平洋地域という構想に転換することである。東アジア共同体というアメリカ軽視の構想ではなく、アメリカを含むアジア太平洋地域の国際体制の整備への転換である。鳩山政権がそうした転換をせず、従来の反米媚中的な姿勢を続けていたら、アメリカが態度を硬化し、日米関係に亀裂が入る恐れがある。オバマ大統領の東京演説は、英知ある転換への貴重なチャンスとすべきメッセージだと思う。

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●産経新聞 平成21年11月14日

http://sankei.jp.msn.com/world/america/091114/amr0911142321018-n1.htm
オバマ演説を読む
2009.11.14 23:15

 オバマ米大統領が14日、東京・赤坂のサントリーホールで行った演説の要旨は次の通り。
  
日米同盟
 大統領就任直後から、われわれは結束の強化に努めてきた。2カ月後に日米同盟は50周年を迎える。アイゼンハワー大統領が日本の首相の隣に立ち、われわれは「対等と相互理解」に基づいた「不滅のパートナーシップ」を生み出していくと語った日だ。
 半世紀がたち、日米同盟は安全保障と繁栄の礎となってきた。日本は世界でより大きな役割を果たすようになり、イラク復興、「アフリカの角」(アフリカ東部)での海賊対策、アフガニスタンやパキスタンの国民への援助などに貢献してきた。日米同盟が発展し未来に適応していく中で、アイゼンハワー大統領がずっと前に述べた、対等かつ相互理解のパートナーシップの精神を維持するよう常に努力していく。
  
米国は大平洋国家
 大西洋沿いの港と町の連なりで米国は始まったかもしれないが、何世代にもわたって太平洋国家でもあった。アジアと米国はこの偉大なる大洋で切り離されているのではない。われわれはこの大洋で結びついているのだ。私はハワイで生まれ、少年期をインドネシアで暮らした米国の大統領だ。環太平洋地域は私の世界観を形成してくれた。
 これら(日米、米韓、米豪など)の同盟は、この地域の国々や諸国民が機会や繁栄を追求できるよう安全保障と安定の基盤を提供し続けている。米軍が世界で二つの戦争に従事している中にあっても、日本とアジアの安全保障へのわれわれの肩入れは揺るぎない。
  
対中関係
 米国が中国の台頭をどう見ているのか疑問を感じる人が多くいることを知っている。米国は中国の封じ込めを求めてはいないし、中国との関係の深化が(日米)二国間の同盟を弱めることも意味しない。それどころか、強力で繁栄した中国の台頭は、国際社会の力の源泉とも成り得る。だからこそ、われわれは戦略、経済対話を深めるよう努め、双方の軍の意思疎通も向上させる。

アジア地域
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)は地域間の通商と繁栄を促進し続ける。東南アジア諸国連合(ASEAN)は東南アジア地域の対話、協調、安全保障の触媒であり続けるだろうし、ASEAN諸国の指導者10人全員と面会する初の米国大統領となるのを楽しみにしている。
  
経済・環境問題
 われわれは今、経済回復間近であり、その持続を可能にしなければならない。世界規模の景気後退に至らしめた、にわか景気と不況のサイクルに戻るわけにはいかない。均衡を失った発展へと導いた政策を継続することはできない。
 米国はこの10カ月間で、気候変動に関する取り組みを近来では例のないほど講じてきた。最新の科学を取り入れ、新たなエネルギーに投資し、エネルギー消費効率基準を定め、新たな協力関係を結び、国際的な環境の交渉に関与してきた。コペンハーゲン(気候変動枠組み条約第15回締結国会議)での成功が容易だという幻想は抱いていないが、前進への道のりは明らかだ。すべての国が責任を受け入れなければならない。
  
核なき世界
 (演説したチェコの)プラハでは、核兵器廃絶に向けた米国の取り組みを誓約し、この目標に到達するための包括的な課題を設定した。日本が(米国の)この試みに加わったことは喜ばしい。これらの兵器が何をもたらすかを地球上で最も良く知る両国だからだ。われわれはともに核兵器のない未来を追求しなければならない。
 これはわれわれ共通の安全の基礎であり、共通の人道的試練だ。こうした兵器が存在する限り、米国は韓国や日本を含む同盟国の防衛を保証する強力かつ効果的な核抑止力を維持する。しかし、この地域で核武装競争がエスカレートすれば、長年の発展と繁栄を損なうことになると認識しなければならない。

北朝鮮
 数十年にわたり、北朝鮮は核兵器の追求をはじめとする対立と挑発の道を選んできた。この道が導く先は明らかだ。われわれは平壌(北朝鮮政府)に対する制裁を強化した。
 大量破壊兵器に関する活動を制限するため、最も徹底した国連安全保障理事会決議を採択した。脅しには屈しないし、言葉だけではなく、行動を通じて明白なメッセージを発信していく。北朝鮮が国際的義務の履行を拒否すれば、その安全保障は弱まりこそすれ強まりはしない。
 北朝鮮が未来を実現する道は明白だ。6カ国協議に復帰、核拡散防止条約(NPT)への復帰を含む従来の誓約を順守し、完全かつ検証可能な朝鮮半島非核化を行うことだ。近隣諸国との関係正常化も、拉致被害者について日本の家族が完全な説明を受けて初めて可能になる。これらの措置はいずれも、北朝鮮政府が国民の生活向上と国際社会への参加に関心があるならば、取り得るものだ。
  
ミャンマー
 長年にわたる米国の制裁や他国の関与政策でも、ビルマ(ミャンマー)国民の生活向上には至らなかった。われわれは今、指導部と直接対話し、民主的な改革への具体的取り組みがない限り現在の制裁を続けるとはっきり伝えている。われわれは、統一され、平和で繁栄し、民主的なビルマを支持する。ビルマがこの方向に進めば、米国との関係改善も可能となる。
 取られるべき明確な対応として、アウン・サン・スー・チーさんを含む政治犯の無条件の釈放、少数民族との紛争終結、将来構想を分かち合う政府と野党、少数民族との対話がある。
  
米国の決意
 こうした手段を通じて、米国はアジア・太平洋地域での繁栄と安全、人間の尊厳を向上させていく。この地域での取り組みの中で最も重要となる日本との緊密な友好関係を通じ、(そして)太平洋国家として、この地域にも育まれた大統領によって、それを行う。
 私は米国初の「太平洋大統領」として、この太平洋国家が世界で極めて重要なこの地域においてわれわれの指導力を強化し持続させていくことを約束する。
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