ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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外国人政策2~入管法改正の進め方は拙速・杜撰だった

2019-02-08 12:25:51 | 移民
●改正入管法には課題が多い

(1)改正入管法の内容
 本年4月に、改正された入管法が施行される。これまで日本は、外国人労働者の受け入れを、高度な専門的な能力を持つ人材に限っていた。今度は従来の外国人政策を大きく転換し、比較的単純な労働のために外国人労働者の受け入れを拡大することになった。
 受け入れを拡大するのは、農業や介護、建設、造船、宿泊などの14業種である。理由は、人手不足が深刻な産業分野だからという。政府は、来年度からの5年間で最大34万5,150人を受け入れるとの見込み数を提示している。
 日本に居て、生活や労働の出来る資格を、在留資格という。わが国はこのたび比較的単純な労働をする外国人のために、新たな在留資格を設けた。それを特定技能1号、2号という。
外国人のうち「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ者には、「特定技能1号」の資格を与える。1号は、在留期間は通算5年で、家族の帯同は認めない。1号よりさらに高度な技能を持つ者には「特定技能2号」の資格を与える。2号は、長期在留や家族の帯同が認められる。現行法では、日本に10年在留すれば、永住権を獲得できるようになる。
 こうしたことを主な内容とするのが改正入管法である。

(2)法改正の進め方は拙速・杜撰だった
 入管法の改正案が国会で議論されていることが、広く知られるようになったのは、昨年秋である。マスメディアの報道が少なかったため、それまで改正への動きがあることは、国民にはほとんど知られていなかった。
 入管法の改正は、平成30年(2018年)2月に、経済財政諮問会議で検討が始められた。この種の法改正を行う場合、通常は1~2年を掛けて検討されるという。だが、今回の改正案は、検討開始のわずか4カ月後の6月15日に、「2018骨太方針」として全体像が発表された。これは、異常な速さだった。
 改正案に対し、与党・自民党の内部では反対論や慎重論が少なくなかった。11月2日の閣議決定に至るまで、自民党の部会で激しい議論が何日も続き、発言者の9割が法案に強く反対したという。だが、結局、外国人労働者の受け入れ拡大を大枠で了承し、法律の詳細は省令で決定するという異例の決着を見た。
 改正案の内容は、専門家が十分に検討したものではなかった。国会審議の過程で、野党の多くが問題点を指摘したが、もともと野党の多くは何でも反対するだけであり、また、立法者としての実力不足のため、議論の質が上がらなかった。論点が多岐にわたるにもかかわらず、与党は採決を急いだ。衆院での審議はわすか17時間余りだった。参院でも、この流れは変わらなかった。
 今回の法改正については、野党だけではなく、日本を愛する有識者や国民からも懸念の声が多く上がった。私も声を上げた者の一人である。だが、政府には、国民への理解を求め、国民的な合意を作ろうという姿勢が見られなかった。

(3)外国人政策の転換となる
 これまで日本は、外国人労働者の受け入れを、高度な専門的な能力を持つ人材に限っていた。限っていたと言っても、高橋洋一氏によると、わが国は大卒者、ホワイトカラーの外国人労働者の受け入れについては、アメリカよりもはるかに開かれていという。日本人がアメリカの大学に留学し卒業してもアメリカの企業で働く労働ビザは出ない。だが、日本の大学を卒業した外国人が国内で働こうとした場合、ほぼ問題なく就労可能なビザが発行される。海外の大学の卒業者であっても、求める職能にふさわしい学部の卒業生であれば日本では働くことが可能である。だが、外国人労働者については、あくまで高度な専門的な能力を持つ人材に限るとしてきたのが、わが国の外国人政策だった。
 近年、日本で働く外国人が目立って増えている。平成30年10月時点の外国人労働者は、146万463人で過去最高を更新した。10年間で3倍に増えた。ただし、これは、高度な専門的な能力を持つ人材を労働者として受け入れているのとは違う。ブルーカラー的な比較的単純な仕事で働く外国人が増えているのが目につくものである。また、外国人労働者の4割以上は、留学生アルバイターや開発途上国への国際協力を目的とした技能実習生である。留学生や実習生は、わが国が労働者として受け入れた者ではない。そういう外国人が外国人労働者の半数近くを占めるという歪な構造が続いてきた。今度は従来の外国人政策を大きく転換し、比較的単純な仕事のできる外国人労働者の受け入れを積極的に拡大することになったのである。
 今回の改正法は、外国人が一定の技能を持っていれば、日本で働ける道を開き、永住さえ可能にするものである。この背景には、若者の大学進学率が上昇するとともに、過酷な現場で働くことを嫌う青年が増え、比較的単純な労働分野の多くで人手不足となっているという事情がある。建設や介護など人手不足の業種では、外国人がいなければ仕事が回らないという声が多いという。
 政府は、こうした労働現場の実態を踏まえた法改正が必要だとして、改正を急いだ。急に国会に改正案が提出され、異例の速さで、改正法が成立した。改正法には問題が多く、このまま施行されると現場は混乱することが強く懸念される中での成立だった。

 次回に続く。