ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

キリスト教116~米国独立宣言とキリスト教の思想

2018-11-05 09:29:27 | 心と宗教
●独立宣言とキリスト教の思想

 独立宣言は、起草委員会でトマス・ジェファーソンが草案を作成し、ベンジャミン・フランクリンとジョン・アダムスが若干の加筆修正を行って成案した。
 独立宣言は、前文の主要部にて言う。「われわれは、自明の真理として、すべての人は平等に造られ、造物主(Creator)によって、一定の奪いがたい天賦の権利を付与され、その中に生命、自由および幸福の追求の含まれることを信ずる。また、これらの権利を確保するために人類の間に政府が組織されたこと、そしてその正当な権力は被治者の同意に由来するものであることを信ずる。そしていかなる政治の形体といえども、もしこれらの目的を毀損するものとなった場合には、人民はそれを改廃し、かれらの安全と幸福とをもたらすべしと認められる主義を基礎とし、また権限の機構を持つ、新たな政府を組織する権利を有することを信ずる」と。
 独立宣言は、上記の部分で、自然権、社会契約思想、「合意の支配」、革命権を謳っている。この内容は、ロックの思想を発展させ、自然権と社会契約説に基づいて人民の抵抗権を主張し、圧政下にある植民地の人民が自由独立の国家を建設することを公言したものである。
 独立宣言は、権利の根源を「造物主」に置く。ここにおける「造物主」は、基本的にはキリスト教的な神である。キリスト教では、神(God)が天地を創造し、人間は神が創造したものであり、神の前で人間は平等であるとする。より正確に言えば、これはユダヤ=キリスト教の教義である。独立宣言は、その世界観に立って、すべての人間は平等に造られ、造物主によって、一定の不可譲の権利を与えられているとする。こうして人権は、普遍的・生得的な権利であるという思想が、宣言の形で打ち出された。
 植民地アメリカの人民が本国から独立を勝ち取ろうとすると、イギリス本国の歴史や国王の存在から自己を断絶する必要があった。そこで、人々の権利は、歴史的・社会的・文化的に形成されたイギリス臣民の「古来の自由と権利」ではなく、神によって賦与された権利であるという論理が打ち出された。

●アメリカにおけるキリスト教とフリーメイソン

 アメリカ合衆国の独立・建設は、フリーメイソンの活躍なしには、なしえられなかった。また、フリーメイソンの思想が独立宣言にも溶け込んでいる。
 フリーメイソンは、イギリスで発展し植民地アメリカに入った。メイソンたちは、各地にロッジを開設した。ロッジは情報交換や人材交流の場となり、13に分かれていた植民地を共通の理想のもとに結びつける役割を果たした。独立戦争の導火線となったボストン茶会事件は「自由の子ら」というグループの仕業だが、そこには多くのメイソンが加わっていた。アメリカ独立革命の指導者の多くは、ピューリタンまたはキリスト教を信奉するフリーメイソンだった。ベンジャミン・フランクリン、ジョージ・ワシントンは、メイソンとして有名である。トマス・ペインも、確証はないがメイソンだった可能性がある。ペインには「フリーメイソン団の起源」という論文があり、メイソンと相当の関係があったことは間違いない。ヨーロッパでカトリックから破門にされたメイソンは、アメリカ独立革命の推進力となったのである。
 独立宣言の起草の中心となったのはジェファーソンだが、起草委員会にはメイソンのフランクリンが一員となっている。また独立宣言に署名した56人の中にもメイソンがおり、フランクリンを含め9人から15人がメイソンと見られる。
 独立宣言は、権利の根源を「造物主」に置く。この「造物主」は、理神論に立てば、ユダヤ教・キリスト教・フリーメイソンに共通する宇宙の創造者となる。独立宣言は、建国の指導者たちが共有し得る世界観に立って、すべての人間は平等に造られ、造物主によって、一定の不可譲の権利を与えられているとしたものだろう。それゆえ、この造物主は、単にユダヤ=キリスト教的な神ではなく、ユダヤ教・キリスト教・フリーメイソンに共通する神の理念ととらえたほうがよいだろう。
 アメリカの独立と建国にいかに深くフリーメイソンが関わっていたか、消しようもないほど確かなものは、アメリカ合衆国の国璽である。国璽の裏には、フリーメイソンの象徴のひとつであるピラミッドが表されているのである。国璽とは、国家を表す印章である。大統領の署名した条約批准書、閣僚や大使の任命書など公式文書などに押印されるものである。それが、1ドル紙幣の裏側に印刷されている。国璽のピラミッドは、13段まで積み上げられた未完成のもので、13は独立時の13植民地を意味する。冠石に相当するところには、三角形の中に書かれた「万物を見る眼」が置かれている。古代エジプトを思わせるもので、ユダヤ=キリスト教発祥以前の文明を象徴している。
 ただし、フリーメイソンは、キリスト教を否定するものではない。フリーメイソンの象徴主義の最も古く、最も確実な基礎は、ヨハネ派のキリスト教的秘教主義とされる。ヨハネ派とは、バプテスマのヨハネと福音史家のヨハネを崇拝する宗派である。フリーメイソンはカトリック教会からは何度も弾圧されているが、イギリスでは上流階級の社交クラブのようなものとなり、国王が代々フリーメイソンの名誉会長を務めているという。そうしたフリーメイソンがアメリカ合衆国というキリスト教国家の独立・建設に深く関与したのである。

 次回に続く。