ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

旧宮家男子を皇族に迎えるべし~百地章氏

2014-12-01 10:10:24 | 皇室
 10月5日に高円宮典子女王と出雲大社神職・千家国麿氏とのご婚儀が執り行われた。神話の時代から連綿と続く御家系間のご結婚を、21世紀の今日に目の当たりにし、感激を覚えた。世界の他のどの国にも、このような慶事は考えられない。
 このたびのご婚儀を契機に、女性皇族のご結婚後のあり方をめぐって、あらためて議論が起こった。その中で、日本大学教授・百地章氏の見解は、正鵠を得たものである。百地氏は旧宮家を視野に入れた抜本的解決をはかるべき時が来たとし、「皇室活動のご支援と皇位の安定的継承の確保という2つの目的を同時に解決する唯一の方法は、旧宮家の男系男子を皇族に迎えることしかない」と述べている。全く同感である。
 百地氏は、産経新聞10月30日の記事で、こうした見解を記した。その記事には、皇室に関する最近の動向が書かれている。
 一点は、女性皇族の尊称保持案についてである。百地氏は、この案に関する動向について、「これに対しては、『内親王』や『女王』といった尊称は皇室典範により女性皇族のみに認められた称号であって、尊称案は新たな身分制度を作りかねないとの批判があった」。そこで出てきたのが、「宮中晩餐(ばんさん)会や外交使節の接待などの皇室活動を支援して戴くために、活動の場を提供することを主目的とする新たな案」である。「皇室活動を支援して戴く際に、尊称でなく事実として皇室とのご関係を示す『皇女』(天皇の女のお子様)や『王女』(皇族の女のお子様)の語を冠すること」ができるようにするものである。昨年6月、仏大統領を迎えて行われた宮中晩餐会に元内親王の黒田清子さんが出席された例もあり、「『閣議決定』で定めることも可能ではないか」と百地氏は書いている。
 尊称保持に替わる呼称は記されていない。とりあえず敬称使用案と呼ぶことにすると、敬称使用案は、尊称保持案と同じく、女性皇族が民間人と御結婚され、皇籍を離脱した後も女性皇族のご公務分担が可能となる。その点で私も賛成だが、女性皇族一代限りのことであり、一時的な方策に過ぎない。
 もう一点は、唯一の解決策である旧宮家の男系男子を皇族に迎える案についてである。百地氏は、最近の動向として、10月2日のBS11の番組で、女性宮家賛成派の神田秀一氏から「旧宮家のお若い男子を皇族に」との発言があったという。また、10月7日のBSフジの番組で、女性宮家問題のヒアリングでは旧宮家の復帰に消極的だった所教授が、明治天皇や昭和天皇の内親王が嫁がれた旧東久邇宮家などの男子であれば皇族に迎えてもよいと発言したという。加えて、百地氏は、女系天皇容認を結論付けた小泉内閣時代の有識者会議で座長代理を務めた元最高裁判事の園部逸夫氏が、『週刊朝日』8月22日号で「(旧皇族に)適格者がいらっしゃれば養子を考えてもよい」と述べ、元朝日新聞の岩井克己氏が「旧皇族の現状や、ピンチヒッターとして皇族に復帰するにふさわしい方がいるのか」調査を、と応じていると書いている。
 百地氏は「間違いなく、潮目が変わってきたといえよう」「安倍晋三首相の英断を期待したい」と述べている。注目すべき動向である。
 以下は、百地氏の記事の全文。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●産経新聞 平成26年10月30日

http://www.sankei.com/column/news/141030/clm1410300001-n1.html
2014.10.30 05:01更新
【正論】
旧宮家の男子を皇族に迎えよ 日本大学教授・百地章

 10月5日に高円宮典子女王と千家国麿氏とのご婚儀が執り行われた。これを機に、再び女性皇族のご結婚後のあり方をめぐってさまざまな議論がなされている。男性、女性ともに皇族が減少する中、この問題は速やかに解決する必要があるが、更に一歩進め旧宮家を視野に入れた抜本的解決をはかるべき時が来たのではないか。

≪潮目が変わった宮家論議≫
 ご婚儀を挟んだ10月2日と7日、BS11の「報道ライブ21」とBSフジの「プライムニュース」が相次いでこの問題を取り上げた。BS11では露木茂氏らの司会で皇室ジャーナリストの神田秀一氏と筆者が、BSフジでは反町理氏らの司会で参議院議員の西田昌司氏、京都産業大学名誉教授の所功氏、それに筆者らがこの問題を論じたが、2~3年前とは明らかに変化が見られた。
 両番組とも、初めから「女系天皇」など問題外といった雰囲気が大勢を占めていたし、「女性宮家」についても、さまざまな問題を抱えているとの認識ではほぼ一致していたと思う。とりわけ興味深かったのは、女性宮家賛成派の神田秀一氏からも「旧宮家のお若い男子を皇族に」との発言があったこと、女性宮家問題のヒアリングでは旧宮家の復帰に消極的だった所教授が、明治天皇や昭和天皇の内親王が嫁がれた旧東久邇宮家などの男子であれば皇族に迎えてもよいと発言されたことである。
女系天皇容認を結論付けた小泉内閣時代の有識者会議で座長代理を務めた元最高裁判事の園部逸夫氏も、『週刊朝日』誌上(8月22日号)で「(旧皇族に)適格者がいらっしゃれば養子を考えてもよい」と述べ、元朝日新聞の岩井克己氏が「旧皇族の現状や、ピンチヒッターとして皇族に復帰するにふさわしい方がいるのか」調査を、と応じている。間違いなく、潮目が変わってきたといえよう。
 女性宮家の問題点については本欄でも2度指摘したことがあり、ここでは繰り返さない。この対案として出されたのがいわゆる「尊称案」であった。つまり女性皇族については、旧皇室典範44条にあったように、婚姻によって皇籍を離脱した後も特例として「内親王」「女王」の尊称をお与えし、皇室活動のお手伝いをして戴(いただ)いてはどうかというものである。

≪結婚後も皇室活動の支援を≫
 これに対しては、「内親王」や「女王」といった尊称は皇室典範により女性皇族のみに認められた称号であって、尊称案は新たな身分制度を作りかねないとの批判があった。
そこで出てきたのが、宮中晩餐(ばんさん)会や外交使節の接待などの皇室活動を支援して戴くために、活動の場を提供することを主目的とする新たな案であった。これであれば、昨年6月、仏大統領を迎えて行われた宮中晩餐会に元内親王の黒田清子さんが出席された例もあり(読売新聞平成25年6月8日)、先日の本紙報道(10月20日)にあったように「閣議決定」で定めることも可能ではないか。
 そして皇室活動を支援して戴く際に、尊称でなく事実として皇室とのご関係を示す「皇女」(天皇の女のお子様)や「王女」(皇族の女のお子様)の語を冠することができるようにしようという訳である。対外的には「プリンセス」ということになろう。先のヒアリング後の政府の「論点整理」(概要)でも、第II案として「皇籍離脱後も皇室の御活動を支援していただくことを可能とする案」が示され、「その際、御沙汰により称号を賜ることは考えられないことではない」との説明があった。

≪皇統を支えた4世襲親王家≫
 他方、皇室活動のご支援と皇位の安定的継承の確保という2つの目的を同時に解決する唯一の方法は、旧宮家の男系男子を皇族に迎えることしかない。
旧11宮家の臣籍降下については、形式的には自ら願い出たものとなっている。しかし実際には、GHQ(連合国軍総司令部)の圧力、具体的には約9割に及ぶ過酷な財産課税や経済上の特権剥奪による収入途絶などによって臣籍降下を強いられたものであって、昭和天皇はこれに反対ないし抵抗しておられた。今回の昭和天皇実録の公開によってこの間の事情がより明らかになればと期待するものだが、これまでにも「諸般の情勢により秩父、高松、三笠の三宮を除き、他の皇族は全員臣籍に降下する事情に立ち至った。まことに遺憾であるが、了承してもらいたい」(高橋紘・鈴木邦彦『天皇家の密使たち』)とのお言葉が伝えられている。
 室町時代以降、男系の皇統を支えるために創設されたのが4世襲親王家であった。うち3宮家(伏見宮、有栖川宮、閑院宮)から三方の天皇が誕生している。また第119代の光格天皇から第122代明治天皇まで、成長された親王はお一人だけという危機的状況が続いたが、その際、4世襲親王家や幕末から明治にかけて創設された諸宮家が皇統を支えたことを想起すれば、速やかに宮家の充実を図っておく必要がある。安倍晋三首相の英断を期待したい。(ももち あきら)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

関連掲示
・拙稿「皇位継承問題――男系継承への努力を」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion05b.htm
・拙稿「女性宮家よりは尊称保持、だが根本的改善は旧皇族の活用」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion05.htm
 目次より13へ