ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

今度こそ中国バブルの崩壊が始まった~石平氏

2014-03-13 08:47:44 | 国際関係
 3月7日中国債券市場で初の社債デフォルトが起こった。市場では連鎖デフォルトによる混乱や「影の銀行」関連の金融商品への飛び火が警戒されている。8日に発表された中国輸出統計は前年同月比で18.1%減となり、市場への影響が広がっている。輸出の低迷は人件費の高騰や人民元高による中国製品の国際競争力の低下を物語っている。これらは、中国経済が深刻な事態に入りつつあることを示している。
 シナ系日本人評論家の石平氏は、昨年7月4日産経新聞に「中国経済のドミノ倒しか」と題した記事を書いた。私は下記のブログで紹介した。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6166dba6bbe55d06455f9a898a19cd4a
 昨年6月24日に中国上海株が急落し、中国金融市場がパニックに陥った。金利上昇によって中小の金融機関や企業の資金調達が難しくなり、政府が「影の銀行」をつぶそうとすれば、中国経済全体が崩壊しかねない状況となった。石氏は、それが中国経済崩壊の「ドミノ倒しの始まり」と見た。石氏はこれに加えて「不動産バブルの崩壊は当然、さらなる金融危機の拡大とさらなる実体経済の衰退を招くから、経済の果てしない転落はもはや止められない。世界第2位を誇ったこの国の経済はすでに、地獄への入り口に立たされているのである」と述べた。
 石氏は、この記事の約3か月後、昨年9月27日の産経新聞の記事に、不動産バブルの到来について書いた。本年1月9日の記事では、その後の中国経済の動向を伝え、「どうやら今度こそ、長年恐れられてきた、バブル崩壊という名の『狼』は本当にやってくるのである」と書いている。
 まず昨年9月27日の記事によると、その月、北京、上海、杭州、蘇州等の各地で破天荒な「地王」が続々と出現した。「地王」とは、中国国有地の譲渡でかつてない高値で土地を買いまく不動産王のことである。石氏は、「狂気とも思われるような地王」の続出について、経済学者・馬光遠氏の分析を紹介する。馬氏によると、「地王現象」は地方政府と不動産開発業者との共謀の産物である。全国の地方政府の負債総額が20兆元にも達している中、返済に迫られた各地方政府は巨額の土地譲渡金を獲得しようとする。一方、業者たちは一般の人々に物件購入を急がせようと乾坤一擲の販売促進をやっている。だが、同じ月、全国の商業銀行による住宅ローン業務停止の動きが急速に拡大した。金融不安が拡大している中で、保身のためにリスクの高い不動産関係融資から手を引こうとしているのだ。このままでは、「地王」は破滅する。彼らの破滅は不動産バブル崩壊の引き金となる。「不動産価格が暴落すれば銀行の不良債権はさらに膨らみ、金融不安の危険性はよりいっそう高まる。そうすると銀行はさらなる保身策に走り、ますますお金を貸さなくなる。その結果、不動産市場はさらに冷え込み、企業活動も萎縮してしまう。中国経済は、果てのない転落の道をたどっていくであろう」と石氏は書いた。
 そして、「今の異様な「地王現象」はまさに、中国経済の「最後の狂気」のように思えてしかたがない」と石氏は記事を締めくくった。
 次に、本年1月、石氏は大意次のように書いた。
 「昨年後半から不動産バブルの崩壊はすでに目の前の現実となりつつある」。中央政府直属シンクタンクのトップが、地方の中小都市では不動産バブルの破裂がすでに始まっていると公言した。「前代未聞の事態」である。「地方中小都市」の中で著しい経済成長で知られる浙江省温州市では、不動産平均価格が昨年末までに、最盛期の半分以下に落ちた。常州市、貴陽市、大同市なども「第2、第3の温州」となると予測されている。「地方都市の不動産価格の暴落はいずれ大都市に波及してくる」。香港屈の長江実業集団は昨年1年間、中国国内で持つ不動産物件を次から次へと売りさばき、中国大陸からの事業の撤退を急いでいる。
 石氏は、こうなった最大の理由は、「地方債務や『影の銀行』などの大問題を抱えて金融不安の拡大が危惧されている中で、中国の金融システムが保身のためにリスクの高い不動産関係融資から手を引いたことにあろう」という。
 今後の見通しはどうか。石氏は、次のように見る。「今年2014年は、地方負債の問題がさら深刻化してきている中で、金融の安全を第一義に考える中国政府は不動産業に対する金融引き締めを継続していくしかない。そうすると不動産はますます売れなくなり、価格のさらなる下落は避けられない。バブル破裂の動きはいっそう加速化するであろう」。
 そして、次のように記事を結んでいるーー「どうやら今度こそ、長年恐れられてきた、バブル崩壊という名の『狼』は本当にやってくるのである」と。
 バブルはいったん弾けだすと、止まらない。シナ大陸各地の地方都市から始まったバブルは、各地域の主要都市に広がり、段階的に全土に及んでいくだろう。
 以下は、石氏の記事2本の全文。

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●産経新聞 平成25年9月27日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130927/chn13092711190003-n1.htm
【石平のChina Watch】
「地王」の狂気 バブル崩壊の予兆
2013.9.27 11:17

 中国の不動産市場で今「地王」という新造語がはやっている。国有地使用権譲渡の入札で競争相手を圧倒する大金を出し意中の土地を手に入れた開発業者のことだ。今月初旬から各地で破天荒な「地王」が続々と出現したことが大きな話題を呼んでいる。
 まずは4日、北京市内の農業展覧館の敷地にある2・82ヘクタールの土地が21億元(約336億円)で取得された。1平方メートルあたりの単価で7・3万元(約117万円)だ。中国で国有地譲渡が始まって以来の単価最高記録という。
 翌5日、上海、杭州、蘇州の3つの大都市でも「地王」が現れた。上海市内の徐家匯界隈(かいわい)、杭州市内の華家池界隈、蘇州市内の金鶏湖界隈にある3つの1等地がそれぞれ、217億元、136億元、47億元で落札された。
 そして18日、天津市内の「黄金地帯」にある国有地が130億元で業者に譲渡された。これも天津市国有地譲渡史上の最高額である。
 狂気とも思われるような「地王」がなぜ続出するのか。著名な経済学者で中央テレビ局特約評論員の馬光遠氏は今月6日のブログでこう分析している。
 曰(いわ)く、今の「地王現象」は地方政府と不動産開発業者との共謀の産物である。全国の地方政府の負債総額が20兆元にも達している中、返済に迫られた各地方政府は巨額の土地譲渡金を獲得しようとする。一方、業者たちは「地王現象」を華やかに演出することによって、「今買わなかったら後になって不動産価格はさらに上がるぞ」との空気をあおり、一般の人々に物件購入を急がせようとたくらんでいるのである。
 つまり、業者たちは乾坤一擲(けんこんいってき)の販売促進のため、あえて「地王」となったわけだが、その大いなる賭けを支えているのはやはり、一般消費者が今後、より高い価格で不動産を大量に買ってくれるとの熱い期待であろう。しかしそこには、大変危険な落とし穴があるのである。
 ちょうど「地王現象」が話題を呼んでいるこの9月、全国の商業銀行による住宅ローン業務停止の動きが急速に拡大しているのである。
 国内紙の『毎日経済新聞』は11日、北京、上海、広州、深センなどで複数の商業銀行が住宅ローン業務を停止していると伝えた。数日内に多くの国内メディアも同じ情報を流したから事実なのであろう。それから1週間、成都・重慶・済南・南京・洛陽・合肥などの地方都市でも、多くの商業銀行が住宅ローン業務の停止あるいは貸し出しの制限に踏み切ったという。
 金融不安が拡大している中で、中国の商業銀行は保身のためにリスクの高い不動産関係融資から手を引こうとしているのだ。まさに、7月4日掲載の本欄が予想した通りの展開になっているのだが、問題は不動産市場に与える深刻なダメージである。
 「地王」たちが巨額の資金を投入して土地を購入すれば、当然それを高く売らなければならない。だが、銀行の住宅ローン停止が今後も続くなら、一体誰が彼らの作った高い不動産物件を買おうとするのだろうか。そのままでは、「地王」たちを待っているのは、もはや破滅的な結末でしかない。
 そして「地王」の破滅は結局不動産バブル崩壊の引き金となろう。不動産価格が暴落すれば銀行の不良債権はさらに膨らみ、金融不安の危険性はよりいっそう高まる。そうすると銀行はさらなる保身策に走り、ますますお金を貸さなくなる。
 その結果、不動産市場はさらに冷え込み、企業活動も萎縮してしまう。中国経済は、果てのない転落の道をたどっていくであろう。
 上述の馬光遠氏も指摘したように、今の異様な「地王現象」はまさに、中国経済の「最後の狂気」のように思えてしかたがない。

●産経新聞 平成26年1月9日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140109/chn14010912020003-n1.htm
【石平のChina Watch】
バブル崩壊、今度こそ「狼」は来た!
2014.1.9 11:58

 中国では昨年末から、不動産バブルの崩壊を危ぶむ声が聞こえてきている。例えば12月21日、北京中坤投資集団会長で全国工商連合会不動産商会副会長の黄怒波氏は、北京市内で開かれたフォーラムの席で、スペインにおける不動産バブル崩壊を引き合いに出し「スペインの現在は中国の明日、中国で次に倒れるのは不動産業だ」と喝破した。1週間後、同じ全国工商連合会不動産商会の常任理事を務める経済評論家、朱大鳴氏の論文が多くのメディアに転載された。その中で同氏は「不動産バブルはいったん破裂したら取り返しのつかないこととなる」と述べ、今後数年は「このような事態の到来に備えるべきだ」と提言した。
 中国の不動産業の中枢に身をおく2人が口をそろえて「バブル崩壊」を警告しているのだから、事態の深刻さは推して知るべきであろう。実際、昨年後半から不動産バブルの崩壊はすでに目の前の現実となりつつある。
 昨年10月30日、国内各メディアはいっせいに、国務院発展研究センター・李偉主任が行った、「地方の中小都市では不動産バブルの破裂がすでに始まっている」との爆弾発言を報じた。中央政府直属シンクタンクのトップが「バブルの破裂」を公言するのは前代未聞の事態である。これによってバブル崩壊が、すでに隠せない事実であることがよく分かった。
「地方中小都市」の中で著しい経済成長で知られる浙江省温州市では、不動産平均価格が昨年末までに、最盛期の半分以下に落ちていることが報道されている。「鬼城(ゴーストタウン)」の乱造で有名な常州市、貴陽市、大同市なども「第2、第3の温州」となると予測されている。そして、地方都市の不動産価格の暴落はいずれ大都市に波及してくる。12月24日付証券日報の掲載記事は、11月末以来、北京市内の中古不動産の平均価格が急速に下落していると報じている。それは都市部にも危険が迫ってきていることの信号であろう。
 新年早々、中国の各メディアがいっせいに取り上げたのは、香港屈指の財閥の李嘉誠氏率いる長江実業集団が南京市内で所有していた国際金融センタービルを売却した話である。実は昨年1年間、長江実業集団は中国国内で持つ不動産物件を次から次へと売りさばき、126億人民元(約2200億円)を回収して中国大陸からの事業の撤退を急いでいる。
 かつて香港財閥の中では率先して中国に投資し、未来を見る目の確かさで知られた李嘉誠氏の行動は当然、迫ってくる危険を察知した上での決断だと理解されている。冒頭の黄怒波氏や朱大鳴氏の警告のように不動産バブルの崩壊は避けられない必至の趨勢(すうせい)なのであろう。
 こうなった最大の理由は昨年9月26日掲載の本欄が指摘したように、地方債務や「影の銀行」などの大問題を抱えて金融不安の拡大が危惧されている中で、中国の金融システムが保身のためにリスクの高い不動産関係融資から手を引いたことにあろう。国内の各商業銀行が住宅ローンへの融資停止に踏み切ったのは昨年9月以降のことだが、10月末には早くも「地方中小都市でバブルの破裂が始まっている」という前述の李偉主任の爆弾発言が出た。金融引き締めの効果は一目瞭然である。
 もちろん今年2014年は、地方負債の問題がさら深刻化してきている中で、金融の安全を第一義に考える中国政府は不動産業に対する金融引き締めを継続していくしかない。そうすると不動産はますます売れなくなり、価格のさらなる下落は避けられない。バブル破裂の動きはいっそう加速化するであろう。
 どうやら今度こそ、長年恐れられてきた、バブル崩壊という名の「狼」は本当にやってくるのである。
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