ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

現代の眺望と人類の課題115

2009-02-28 06:30:00 | 歴史
●アメリカによる対日経済戦争

 1993年(平成5年)、大統領に就任したビル・クリントンは、日本を「敵国」と名指しで表現した。バブルの崩壊後、深刻な不況にあえぐ日本に対し、ここぞとばかりに「経済戦争」を開始したのである。クリントン政権は、我が国に激しく経済的・外交的攻撃をかけてきた。対日経済戦争は、グローバル・スタンダードという名の下に、アメリカ主軸の世界を築くための戦略に基づくものだった。
 93年、宮沢喜一首相とクリントン大統領の首脳会談が行われ、日米包括経済協議が開始された。宮沢喜一とビル・クリントンは、ともにTCのメンバーだった。この首脳会談は、TCの日本への影響を象徴していると私は思う。
 宮沢・クリントン会談の翌年、94年(6年)10月から、アメリカによる「年次改革要望書」が毎年わが国に対して提出されるようになった。この文書が日米経済関係における決定的文書であることを発見したのは、関岡英之氏である。

 関岡氏の「拒否できない日本――アメリカの日本改造が進んでいる」(文春新書)は、衝撃的な事実を明らかにした。ここ10年以上の間、日本で「改革」と称して実行されてきた政策は、ほとんどアメリカの国益のためのものであったというのである。関岡氏は、これを「アメリカによる日本改造」と呼んでいる。この改造の「指針書」となっているのが、「年次改革要望書」だという。
 94年以来、毎年10月アメリカは日本に要望書を提出してくる。これを読めば、日本の構造改革はアメリカの指示によるものであり、「米国政府の、米国政府による、米国政府のための大改造」であることが理解できる。
 例えば、半世紀ぶりの商法の大改正は、アメリカ企業が乗っ取りをしやすいものとなっている。会計基準は、アングロ・サクソン諸国のルールを国際統一基準にする動きが進んでいる。時価主義会計の導入は、多くの日本の企業を破綻に追い込む。株価が安く、不良債権をかかえているからである。公正取引委員会の規制強化のため、アメリカは委員の人数まで要望し、郵政民営化に先だって所轄庁を総務省から内閣府に移させまでした。司法制度の改革も、アメリカ企業が日本の政府や企業を相手に訴訟しやすくするためのものとなっている。他にも、枚挙に暇がない。関岡氏が明らかにした日米関係の構造を知らずして、今日の日本は語れない。

●わが国の「第二の敗戦」

 アメリカによる「年次改革要望書」が提出されるようになってから、「アメリカによる日本改造」が強力に進められた。日米経済戦争が始って5年後の98年(10年)10月、決定的な段階に至った。アメリカの強い圧力によって、外国為替法が改正され、金融ビッグバンが起こった。金融の自由化により、外資が直接日本の銀行を買収できるようになり、日本市場への外資の進出が相次いだ。これによって、わが国は、日米経済戦争に、ほとんどなすすべなく大敗した。この事態は、「マネー敗戦」(吉川元忠)と呼ばれる。「第二の敗戦」ともいう。大東亜戦争の敗北に匹敵する出来事ということである。
 98年(10年)10月、「第二の敗戦」の結果、北海道拓殖銀行の倒産、山一証券の廃業等が続いた。山一をほぼそっくり買い取ったのは、メリルリンチだった。当時デイヴィッド・ロックフェラーが大株主だった大手証券会社である。このほかシティ・トラベラーズ(現シティ・グループ)、J・P・モルガン(現J・P・モルガン・チェイス)、GEキャピタル等、世界屈指の金融会社が続々と日本上陸を果たし、わが国の銀行、証券会社などを掌中に収めた。
 半世紀前、大東亜戦争に敗れ、焦土と化した日本に、占領軍が進駐して各所を接収した。今度は、経済的に「焼け跡」と化した日本に、アメリカ資本が乗り込み、日本人が戦後営々と築き上げてきた資産を奪い取った。かつては軍事占領。今度は金融による日本の再占領である。
 しかも、ただ奪うだけではない。アメリカは、日本の富を吸い上げ続ける構造を構築した。日本にドルを支えさせ、アメリカの借金を国債の形で背負わせる仕組みである。日本は金融的にもアメリカに属国化した。今日も日本は、金融的従属構造から抜け出せていない。
 アメリカに対する「マネー敗戦」と金融的属国化は、日本のアメリカへの再従属化だったといえる。この日本の再従米化は、双方の政府に影響を与える民間組織があればこそ、強力に推進された。CFRとTCが介在して大きな推進力を発揮し、ビルダーバーグ・クラブも深く関わった。アメリカへの再従属化は、同時に米欧資本による日本支配の過程でもあった。

 次回に続く。