ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

現代の眺望と人類の課題49

2008-10-30 08:54:19 | 歴史
●1960年代後半~70年前後はいかに大きな危機だったか

 今日の日本人、また人類の多くはまだ、1960年代後半から70年前後、日本及び世界がいかに重大な危機に直面していたかを、よく理解していない。
 大塚寛一先生は、1960年代はじめ、もし世界核戦争となれば、人類の大半が滅亡し、文化は一度に破壊される。さらにもし極度に原水爆が地球の半面で連鎖爆発すれば、人口衛星が飛び出すように、地球が天体の軌道から外れ、消滅するかもしれない、と強く警告された。(3号P44)
 そして、世界がいよいよ重大危機の只中にあった1969年(昭和44年)半ば、大塚先生は、大意次のように説いて、警告された。
 もし70年(45年)6月に日米安保条約が破棄され、アメリカが日本から引き揚げたら、日本に侵攻する外国軍を阻止することは、日本にはできない。日本をソ連が占領すれば、ソ連は世界を征服することができ、共産中国が占領すれば、中国がソ連を押えることができるようになる。日本の工業力とそれを生み出した日本人の知能を手にした国は、世界を風靡することができる。だからソ連も中国も、もし日本が他国に奪われたなら非常に不利になるから、日本を奪い合うようになる。その中ソの前哨戦が、中ソ国境紛争である。
 もしアメリカが社会党・共産党等の反米運動に捨てばちになり、日本から引き揚げると、中国・ソ連・北朝鮮等の軍隊が、日本に襲いかかってくる。そして、日本が共産化すれば、アメリカはアジアから手を引かざるを得ず、共産主義が全世界をおおうようになる。だからアメリカも、砂糖に群がったアリのように、中国軍・ソ連軍が日本に満ち、互いに奪い合っているところに、原水爆を日本に撃ち込む。これと同時に、世界は大混乱に陥り、第3次世界大戦が勃発する、と。

 1968年(昭和43年)から72年(47年)にかけて大塚先生は、多数の講演をされ、その記録は膨大である。今後、1960年代後半から70年前後の危機の大きさが認識されるようになるにつれ、人類は大塚先生の偉大さを理解するようになっていくだろう。ちょうど、先生が1939年(昭和14年)9月から時の指導層に送付された「建白書」の警告が的確無比だったことを理解する人が、徐々に現れているように。
 大塚先生の理論と実証を知るには、著書「真の日本精神が世界を救う」(イースト・プレス)が最良の手引きとなるだろう。

●危機を乗り越えた人類の前進

 1960年代後半から70年前後の危機を乗り越えてから、日本人は、日本の伝統や文化を再認識するようになった。共産主義だけでなく、近代西洋文明の根底が問われ、東洋や自然に回帰する生き方が見直された。
 大塚先生は、戦前から既に、世界は西洋物質文明の時代から東洋精神文明の時代に大転換すると説いてこられた。そして、1970年(昭和45年)前後から世界は、一日にたとえれば、夜から昼に変わるような大変化の時代に入ると説かれた。また、この時代においては、東洋・アジア、特に日本人に重大な使命があると強調された。

 15世紀以来発展を続けた欧米は、今世紀から衰退期に入った。西欧は二度の大戦で大きく後退した。アメリカもピークを過ぎ、覇権の維持に汲々としている。
 1972年(昭和47年)、アメリカは中国と結んで、ソ連に圧力をかけた。冷戦は終わり、1991年(平成3年)にはソ連が解体された。東欧諸国でも共産政権が次々に崩壊した。20世紀を席巻した共産主義は、西洋物質文明を極度に進めたものだった。その共産主義が矛盾を暴露し、大きく後退した。共産主義が後退した国々では、大衆は精神文化に心の渇きを癒している。先進国では、共産主義に理想を描いていた多くの人々が、幻想から覚め、共存調和の生き方を求めている。
 アメリカでは、1960年代から東洋の宗教や瞑想を評価する文化運動が起こり、西洋文明・物質文明の相対化が進んだ。原子物理学者は「老子」「易経」や仏典に表わされている宇宙の姿と、相対性理論や量子力学が描く世界像とが近似していることを発見した。東洋の神秘と想われていたものの背後に、深遠な認識や知恵があることが、欧米の知識層に理解されるようになっていった。

 その一方、アジアは活動発展期を迎え、大きく動き出した。日本が1960年代に高度経済成長を遂げたのに続き、70年代には韓国、台湾、香港、シンガポールなど、NIES(新興工業経済地域)と呼ばれた国々が急速に発展。80年代にはタイ、マレーシア、インド等も工業化政策を進めて経済開発に成功した。80年代後半以降は、日本の海外投資により東アジアの経済成長はさらに加速し、「東アジアの奇跡」「世界の成長センター」などと称されるまでになった。90年代からは、市場経済を導入した中国も経済成長の軌道に乗った。
 21世紀の今日、アジアは、まさに世界の経済的中心地域となっている。人口、生産力、発展可能性等で他の地域を大きく上回っている。アジアが経済的に発展するとともに、アジア諸文明の精神文化の再評価がされ、日本、シナ、インド等の精神的伝統が、人類に新たな精神文化の創造を促している。
 
 こうしたここ半世紀ほどの世界の変化を見るにつけ、大塚寛一先生の慧眼は、他に比類なきものであることが感じられる。21世紀は、西洋物質文明の欠陥を是正するため、東洋に精神文明の興隆が期待されている。とりわけ日本の精神的伝統のもつ潜在力が大きく開花する時を迎えているのである。

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