ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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新学習指導要領案を評価する

2008-02-18 09:35:49 | 教育
 文部科学省は15日、30年ぶりに新学習指導要領案を公表した。公表されたのは、幼稚園用・小学校用・中学校用である。教科書改定を伴う完全な実施は、小学校で平成23年度、中学校で24年度からとなる。教育基本法の改正後、初めての改定なので、改正基本法の規定がどれくらい指導要領に反映されるか、関心を呼ぶところである。
 新聞報道によると、基本的には「生きる力」の育成という理念は変えずに、授業時間、学習内容を増やす方針である。現行の指導要領は、ゆとり教育を打ち出し、学習内容を約3割も減らした失策だったが、新指導要領案は、明らかにゆとり教育からの転換を、具体的にプログラム化している。また、言語活動、理数教育、伝統・文化の教育、道徳教育、体験活動、外国語教育の充実を6つの柱としている。私が評価したいのは、教育基本法の改正で教育の理念に盛り込まれた「伝統・文化の尊重」「公共の精神」を、各教科・科目に反映させようとしている点である。私は、小中学校では、道徳教育、国語教育、音楽教育を重視すべきと主張する者だが、新指導要領案は「伝統・文化の尊重」「公共の精神」という理念の実現につき、道徳・国語・音楽においては、なかなか工夫がされているようである。

 道徳教育は、教科化は見送られたものの、新指導要領案は、全教科で一体的に行うことを明確化した。また、道徳教育推進の中心となる道徳教育推進教師を新設し、全教師が連携して取り組むものとする。先人の生き方を新たに追加。偉人伝のような感動できる教材を活用させるという。道徳教育推進教師は、校長や教頭が自らするのが良いだろう。
 小学校国語では、桃太郎・金太郎・浦島太郎などのおとぎ話や、古文・漢文の音読などを取り入れるという。これは、大変良い方針だ。私は学力の基礎は、国語力だと思う。読み書きを通じて国語力が養われないと、ものごとを理解し、考え、表現し、伝達することはうまくできない。コミュニケーションと人格形成の基礎となるのが、国語力である。外国語にしても国語力がないと、本当に使える力はつかない。その国語力を養ううえで、おとぎ話や古文・漢文は、不可欠の教材である。
 音楽教育では、小学では、文部省唱歌などの歌唱共通教材の曲数を、各学年で1曲ずつ増やす。中学では、「赤とんぼ」「荒城の月」「早春賦」「夏の思い出」「花」「花の街」「浜辺の歌」の歌唱教材7曲を復活する。こういう美しい日本語の歌を教えることは、言語能力や感性の育成となる。また親や祖父母と一緒に歌える歌を持つことは、家族や世代間のコミュニケーションにも大切である。歌によって、日本の心が自然に伝わっていく。音楽には、そういう偉大な力がある。
 その他、低落おぞましい理数系の学力の回復には、基本の重視、基本的な計算・訓練の強化が必要だが、新指導要領案はその方向に転換していると思う。外国語教育については、私は小学校での英語教育は必要ないという考えなので、新指導要領案のこの部分はなくてよいと思っている。外国語の早期教育については、それよりまず国語力をしっかり養成すること、外国語は中学校からすればよい、実際に生活で使われている実用的な英語を聴く、話すを徹底的にやってから、読み書き文法をやるのがよいという考え方である。
 時間があるときに、新指導要領案を詳しく読んで検討したいと思う。
 以下は報道のクリップ

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●産経新聞 平成20年2月15日付

http://sankei.jp.msn.com/life/education/080215/edc0802151724003-n1.htm
新学習指導要領案改定の主なポイント(要旨)

 【国語】「言語力育成」の中核を担う。
 小学では記録、報告、解説などの言語活動を充実。ことわざ、故事成語、伝説、古文・漢文の音読など古典も重視する。漢字を読む機会も拡充。「ちょう戦」のような交ぜ書きを廃止し、学年別の漢字配当表以外には振り仮名をつける。
 中学では詩歌や物語の制作(2年)、報道される情報を比較するメディアリテラシー(3年)を復活させる。
 【社会】小学では4年で47都道府県の名称と位置を初めて追加。5年で世界の大陸と主な海洋、国の名称と位置、5、6年で縄文時代など狩猟採集生活を復活させる。世界遺産、国宝や重要文化財など伝統文化も重視する。
 中学では、現代史を重視。地理は現在、国内2、3地域、外国2、3カ国程度の調べ学習としていたのを、全国・全世界の地域的特色を学ぶ。
 【算数・数学】基礎基本の定着に向けて複数学年で指導内容を重複させる「反復指導」を採用。小学では台形の面積、小数点第2位や3けた×2けたの掛け算を復活。中学では、高校に移行した解の公式や、球の表面積、体積を戻す。
 【理科】小中で学習内容の一貫性を重視。選択項目を廃止する。
 小学では、選択だった火山噴火と地震による土地の変化の選択を必修化。中学ではイオン、日本の天気、遺伝の規則性、電力量などを高校から戻す。
 【音楽】邦楽指導を充実させる。小学では、文部省唱歌などの歌唱共通教材の曲数を各学年で1曲ずつ増加。中学では「赤とんぼ」「荒城の月」「早春賦」「夏の思い出」「花」「花の街」「浜辺の歌」の歌唱教材7曲を復活、各学年で1曲以上歌う。民謡、長唄など伝統的な歌唱指導も重視する。
 【技術・家庭】食育重視の観点から、小学で5大栄養素を復活。中学では、アニメーションなどのデジタル作品の設計・製作を新たに必修化。作物栽培か飼育のいずれかも学ばせる。浴衣などの和服の着方を扱う。
 【保健体育】運動習慣の二極化や体力低下に対処し、体つくり運動を小学1~4年でも行う。中学1、2年で選択必修の武道とダンスは男女ともに必修化し、伝統、礼儀作法を学ぶ。性教育では小中の総則で「発達の段階を考慮して」と明記。過激な性教育への歯止め規定を新設する。
 【外国語】小学5、6年で外国語活動を必修化。副教材「英語ノート」を作成、DVDなどの教材も活用しながらコミュニケーション能力を養成。中学では、授業時間を週4時間に増加。指導語数を1200語程度(現行900語程度)に増やす一方、必修単語は廃止した。教材の題材例にわが国の伝統文化や自然科学を追加した。
 【道徳】全教科で一体的に行うことを明確化。道徳教育推進の中心となる道徳教育推進教師を新設し全教師が連携して取り組む。先人の生き方を新たに追加。偉人伝のような感動できる教材を活用させる。
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