ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国が台湾統一をするならば2

2006-11-23 09:05:16 | 国際関係
●侵攻の時期はいつか

 平和的な方法で台湾を併合できなければ、いずれ中国は軍事的な手段をもって台湾の統一を試みるだろう。
 軍事行動に出る可能性が最も大きいのは、中国が台湾に対し、絶対的な軍事的優位に立ったときである。アメリカの国際評価戦略センターの報告によると、中国は、ベトナムやフィリピンなどとの領有権紛争でも見られたように、軍事バランスが中国側に決定的に有利になったところで、一気に軍事攻撃をかけるパターンがあるという。
 現在のところ、中国は台湾侵攻において制空権を得るだけの力がない。しかし、中台の軍事バランスは2010年代に入ると、中国側に有利に傾くと推測されている。その段階になると、侵攻を行なう可能性が高いと考えられる。2020年の前後5年ころという観測もある。アメリカ国防省の見方でも、中国共産党の見方でも、この年代には、中国は圧倒的な優位を確立していると見られている。

 独立を望む台湾人にとっては、中国が対外的に平和国家の路線を維持し、台湾に軍事的な優位を確立するまでの間が、独立を達成するために残された機会となるだろう。そのタイムリミットは、軍事的な観点からは、北京オリンピックが開催される平成20年(2008)年から、上海万国博覧会が開催される22年のころまでと見られる。この点で、2年後の総統選挙は、台湾人にとって、非常に重要な選択となる。
 平松茂雄氏は、「台湾にとってのタイムリミットは、同時に日本のタイムリミットを意味する」と言う。国際情勢の変化によって、こういう見方が当たるかどうかはわからないが、傾聴すべき意見だと思う。含意の説明は、次の項目に譲ることにする。
 まず平成20年から22年にかけての時期は、わが国にとって、安全と繁栄にかかわる重要な時期と考えて対処したほうがよいだろう。2年ないし数年のうちに中国と台湾の間で重要な事態が生じうると言っても、わが国の多くの人にはぴんと来ないだろう。戦後の日本はあまりにも平和であり、アメリカの保護のもとで、平和ボケ、保護ボケになっているからである。

 実は、中国国内には近年、「早期侵攻論」が主張され、平成18年(2006)つまり今年あたり侵攻すべきという論もあるという。台湾で独立派が優勢になる前に攻め取ろうというのだろう。中国全体がファッショ的な傾向を強めているから、こういう好戦的な意見の存在も軽視できない。
 もし台湾が独立の動きを起こしたら、中国はすぐさま警告と制裁を行うだろう。経済封鎖から段階的に行い、台湾がこれに屈しなければ、中国は、軍事的な有利であるか否かにかかわらず、軍事行動を起こすだろう。それだけ、中国にとって台湾の存在は重要なのである。

●日本にとっての台湾問題の重要性

 台湾の問題は、台湾だけの問題ではない。わが国にとっても、極めて重要な問題である。中国が台湾を併合すれば、日本は台湾海峡・バシー海峡というシーレーンの重要な拠点を押さえたことになる。バシー海峡は、台湾とフィリピンの間の海峡である。
 戦前の日本では、満蒙はわが国の「生命線」と呼ばれた。生命線とは、手相の話ではない。生きるか死ぬか、国が自存できるか否かがかかっている、絶対に守らなければならない地域のことをいう。今日、台湾はわが国の新たな「生命線」となっている。

 平松茂雄氏は言う。「日米からすれば、台湾は西太平洋防衛の要の島である。とくに日本にとっては生命線であり、ここが中国の手に落ちれば、日本が窒息することは必定である」「仮に台湾が占領され、日本のシーレーンが中国に扼された場合、そのとき日本は簡単に、その国の属国となってしまうだろう」と。(平松茂雄著『中国は日本を併合する』講談社インターナショナル)
 日本人でこのことを理解している人は、まだまだ少ない。わが国の産業も国民生活も、石油なしには成り立たない。中東と日本を結ぶシーレーンの要に台湾がある。台湾が中国の掌中に入れば、わが国の運命は中国の手に握られる。だから、台湾問題は、日本自体の問題となっている。政府もマスメディアも、このことの重大性を、国民に周知しようとしていない。
 平松茂雄氏が「台湾にとってのタイムリミットは、同時に日本のタイムリミットを意味する」と言うのは、上記引用のような事情があるからである。

●中国側の事情による行動

 仮に台湾人がここ数年、独立への道を選ばなかった場合、台湾の地位は現状維持が続く。一方、中国は、軍事力の増強を続ける。よほど政治的経済的に行き詰まるか、政策の大転換がされない限り、増強がされる。2010年代に入ると、台湾侵攻に十分な優位を得るだろう。そして、それまでに平和的に台湾を統一できていなければ、いずれ台湾統一に着手することになるだろう。そこからの時間の幅は、数年から15年以内くらいと見られる。

 中国が台湾に軍事行動を起こすとすれば、戦闘による損害、国際社会の反発、各国からの制裁等、リスクも大きい。この点について、黄文雄氏は、著書『米中が激突する日』(PHP)で次のように言っている。
 「おそらくあらゆる犠牲を覚悟したうえでの開戦であるから、やはりそれは、国内矛盾、亡国亡党の危機に直面したときではないだろうか。それにより、つまり追い詰められ、暴発し、賭けに出る形で武力行使をするという公算は決して低くはないのである」「最も大きな侵攻の危機(略)は共産主義体制が危機に直面したときである。この国は、それだけの理由で台湾に対して冒険的行動に出ると私は見ている。もちろんそのときには、アメリカは軍事介入し、これが米中戦争のきっかけとなるはずだ」と。
 黄氏は、中国の危機を強調し、日本の台湾への協力を強く求める論者ゆえ、政治的に割り引いて受け止めたほうがよいと思うが、中国については、バブルの崩壊や、格差拡大による暴動の頻発、環境破壊の恐るべき進行等が伝えられており、内部の矛盾が増大していることは間違いない。共産党支配体制が揺らぐとき、国民の不満をそらすために、対外的な軍事行動に打って出る可能性はあると思う。ただし、こういう行動は、最もリスクが大きいものであり、活路を求めての一か八かの行動となるだろう。

 次回に続く。