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●小説(ミステリー)・・ 「高校殺人事件」-松本清張作品-

  主人公の高校三年生の少年は、クラスメート内の仲良しグループの一員だった。そのグループ内の友達の一人、変わり者でポーやランボーに心酔する、少年詩人が自分の創作詩の構想を練るために近隣の山々に散策に入り、夜間の山中の沼近くで妙な笛の音を聞く。

 翌日、その話を主人公の少年にして、ちょっとした言い合いになり、笛の音の確認のために少年詩人は再び、次の夜も山の中に入り沼にまで行く。少年詩人はそのまま帰って来なくて行方不明となった。

 クラス担任の教師や仲良しグループが中心となり、警察も出動して大々的に山々の捜索を行う。友達の少年詩人は見つからず、仲良しグループや担任教師は独自に捜索を続けた。捜索の途中、沼付近の森の中で、怪しい素振りを見せる若い僧に出くわす。

 やがて警察は沼の中の捜索を行い、沼の水中から二つの死体を引き揚げ、その内一体が行方不明になっていた友達の少年詩人だった。

 担任教師の提案で仲良しグループは、寺に保管される非常に珍しい草花の写生を口実に、例の怪しい若い僧が勤める、沼近くの寺に訪問し中の様子を探る。だが何も解らなかった。

 その内、独自に事件の謎を追っていたらしい担任教師が失踪し、乗っていた自転車だけが少し離れた川で見つかる。担任教師は行方不明のままとなる。

 主人公少年は寺近くの山で浮浪者然とした中年の男と出会う。身体の悪そうなこの男は海外の戦地帰りで、寺の住職と旧知のようだ。男は少年に寺付近の山々の案内を請う。友達の死体が揚がった沼や防空壕跡の山麓の穴などを案内させる。

 寺は若い僧も不気味だが住職も態度が怪しい。少年はクラスの仲良しグループと事件について話し合いを繰り返す。その内、寺の直ぐ隣に郷土記念館ができた。住職と旧知の身体の悪そうな男は、この郷土記念館の管理役となる。管理役にはもう一人サブの男も居た。

 やがて戦地帰りの身体の悪そうな男は、郷土記念館の中で死亡する。警察は建物内部での首吊り自殺と見るが、記念館の内部を念入りに観察した少年は、自殺死因に不自然さを覚える。

 そうこうする内に夏休み中に九州の同年代の従姉妹が遊びにやって来る。この従姉妹は活発な性格で行動力もあり、探偵小説マニアだった。彼女は従兄弟や従兄弟のクラスメートたちの抱える謎の事件に興味を抱く。

 主人公少年と推理マニアの従姉妹の少女の殺人事件の捜査が始まった。沼から上がったクラスメート親友の絞殺死体、突然建立されたあまり意味のなさそうな郷土記念館、その記念館の管理役に納まっていたのに自殺してしまった戦地帰りの身体の悪そうな男、失踪したまま行方の解らない担任教師、不気味な寺の若い僧、不審な動向の寺の住職や記念館のサブ管理人…。

 少年探偵団的な様相の仲良しグループに主人公少年の従姉妹少女が加わり、怪事件の謎は一気に解決へと向かって行く…。

 というのが、日本ミステリ小説界のレジェンド、松本清張の1960年の作品、「高校殺人事件」のおおまかなストーリーです。単行本上梓は61年ですね。

    

 この間、松本清張のミステリー小説「高校殺人事件」を読んだ。この小説は僕が松本清張の作品で一番初めに読んだ小説で、高二の春に読んだ。だから実に四十年以上の間を開けた再読になる。

 「高校殺人事件」は松本清張唯一のジュヴナイルと言われる小説で、1960年当時の学研の「高校コース」に連載された長編推理小説です。

 高二の初めに転校して来た不良の文学青年、まだ高二くらいだから文学少年かも知れない、MT 君が僕に文庫本の小説を二冊貸してくれて、その内一冊は五木寛之の短編集、もう一冊が松本清張の短編集だった。

 高二の春、16歳の僕はそれまで活字の本は児童向けの本しか読んだことなかった。高一のときに学校の図書館から、新しく出てた江戸川乱歩全集の分厚いの三冊くらい借りたことがある。中のカラー挿し絵を横尾忠則が描いてたヤツ。頭のデキのあんまし良くない僕は当時三冊とも挫折して、ろくに読まずに返却してる。

 せっかくMT 君の貸してくれた大人が読むような文庫本を、頭のあんまし良くない僕がちゃんと読めるのか自信がなくて、学校の帰りに子供の頃からよく通ってた書店に行って、松本清張の小説で一番読みやすそうなのを捜した。

 光文社の新書版カッパノベルスに、少年少女用に書かれた推理小説「高校殺人事件」があった。僕はこの本を買って、MT 君が貸してくれた松本清張の短編集を読むにあたってのウォーミングアップに「高校殺人事件」を読むことにした。

 もう、このときMT 君が貸してくれた五木寛之の短編集と松本清張の短編集に、どんな短編作品が収録されてたのか覚えてはいない。松本清張の短編集は「黒い画集」だったか「黒地の絵」だったか、それとも他の短編集だったかはっきりしない。

 もともと頭のデキがあんまり良くなくて活字本の読書慣れができてない僕は、ジュヴナイルである「高校殺人事件」でさえ読むのに手間が掛かってた。だから借りた二冊を読み上げるのにかなり時間が掛かって、MT 君に本を返すよう言われて、まだ読み終わらないのかと呆れられながら文句を言われたのを覚えている。

 その後、もう一回くらいMT 君から文庫本を借りていると思う。やはり五木寛之と松本清張の短編集だと思う。長編の大人の読むような小説本を読み上げる自信がなかったのだ。MT 君から小説の文庫本を借りて読んだのはせいぜい二、三回で、後は自分で本屋で買って読むようになった。文庫本は買っても割りと安価だと気付いたのだ。

 しかも文庫本の中に五木寛之の作品も松本清張の作品もいっぱい出ていた。頭が悪くて遅読だからせいぜい一週間に一冊ペースだ。これなら安価な文庫本は買って読める。また、不良の文学少年 MT 君と学校で毎日話す内に、いろんな作家の話も聞いた。太宰治の話などもしていたが、当時の流行作家のエピソードが多かった。だから、そこから五木寛之·松本清張以外の作家の文庫本を買って来て読み始めたのもある。

 高校生時代、僕の家は大貧乏だったから、当然のように小遣いなどなく、途中から母親手作りの弁当持って行くのをやめて、昼食代として月曜から金曜まで毎日百円を貰うようになった。高校生時代は昼飯を抜いて百円を貯めて文庫本を買ってた。当時は文庫本なんて二百円台くらいであったから週に一冊読み上げるとして充分だった。通ってた高校は家から近かったから、別に昼食べなくても帰宅部で4時頃家に帰れば、朝の残りの味噌汁と生卵がある。家帰って直ぐ、毎日のようにどんぶり飯に味噌汁と卵掛けて掻き込んでた。

 後々から思えば、この時代、市の図書館を利用すれば良かったのにな、と思った。歩き通学だったし学校と家からだと反対方向に遠回りになるが、距離的にはいつもの通学路の二倍半くらいの歩きになるだけだし。

 高校の図書館で借りた本は高一のときの江戸川乱歩全集の中の二、三冊と忍者の解説本と漫画の「のらくろ二等兵」くらいだけだったな。多分、高二·高三時は学校図書館で借りてない。乱歩全集の二、三冊はろくに読んでないし。ただ忍者の解説本は、エンターテイメントの忍者ではなくて、戦国時代の実際の忍者について実在した上忍の名前と共に、階級社会や道具や鍛錬などあれこれ解説していて面白い本だった。

 僕が高校生時代読んだ本、特に文庫本は当時の流行作家のものばかりだったから、多分当時通ってた高校の図書館にはあの時代先端の流行作家のものは置いてなかったんじゃないかなぁ。文庫本くらい昼飯抜けば買えたし、途中からもう昼飯抜いて帰宅して4時頃味噌汁ぶっかけ飯を食うのに身体が慣れたんだろうな。

 松本清張が「高校殺人事件」を執筆したのは59年末頃から61年の初春くらいまでで、初単行本化は光文社の新書判、カッパノベルスで61年の12月。

 当時の高校生の少年が主人公で、1960年当時の高校生や大人の生活が背景に描かれてるけど、2019年から考えて今から60年近く前に書かれた小説といっても、読んでてそこまで違和感はない。まぁ、昭和の風景感はあるけど。僕は四歳五歳の時代だけど、僕は昭和を知ってるもんな。パソコンもネットも携帯電話もスマホもSNS もない時代の現代を描いてると、今の若者が読めば、やはり大昔感があるのかもな。僕が高校生だったのは70年代前半だから、物語中の高校生たちと特に変わりは感じないもんな。ただ物語中には、まだ戦後感が残っていて、太平洋戦争中に海外の戦地に行っていて敗戦後日本に帰って来た大人たちのエピソードとか出て来るけど。

 カッパノベルス版の1961年初版本の定価は230円で売り出されてるけど、ネット画像で見た73年版カッパノベルスの定価は430円だった。僕がこのカッパノベルス版で購入したのが71年だから値段は410円くらいだったのかな?あの時代の僕がよくこんなお金持ってたな。60年代~70年代の雑誌や書籍って毎年だいたい10円づつくらい値上がりして行ってたもんな。

 この僕の拙ブログ、「Ken の漫画読み日記。」は、僕の読んだことある漫画作品のコトゴト、仮に読んだことなくても知っている漫画作品のコトをイロイロ書いて行ってるブログなんですが、松本清張の小説作品のコトを書き込むにあたって、基本「漫画読み日記」だから、もし松本清張作品にコミカライズされた作品があれば、建前にそれを挙げて、主要内容は小説「高校殺人事件」の話を書いて行こうとしたんですが、調べても、松本清張の小説で漫画化された作品はありませんでした。だから、まぁ、カテゴリを小説(ミステリ)にして記事アップすることにしましたが。

 僕は高二の春にクラスメートの MT 君から、五木寛之と松本清張の短編集の文庫本二冊を二回くらい借りて読んで、後は商店街の本屋で買って、五木寛之も松本清張も主に文庫本で次々と読んで行きました。松本清張作品は高校生時代にけっこう多数読んだのですが、当時面白かった作品を順位付けでいうと、1位「影の地帯」2位「蒼い描点」3位「ゼロの焦点」4位「黒い樹海」といったところですかね。

 「高校殺人事件」はTVドラマ化されてるそうで、1977年にNHKで、ドラマタイトル「赤い月」で、夕方6時台の20分ワクで全20回で放送されたようです。無論、僕はドラマ版を見たこともないし知りませんでした。小説で読むとそこまで長く感じなかったけど、20分を20回というのは随分長い時間掛けてドラマを描いたんですね。当時の「少年ドラマシリーズ」という番組ワクの中での放送で、このシリーズは当時、夕方に毎週3、4回(日)放送していたようですね。

 

高校殺人事件 (光文社文庫) 文庫 松本 清張  (著)

影の地帯 (新潮文庫) 文庫 松本 清張  (著)

蒼い描点 (新潮文庫) 文庫 松本 清張  (著)

黒い樹海 (講談社文庫) 文庫 松本 清張  (著)

高校殺人事件 (光文社文庫)Kindle版 松本 清張  (著)

ゼロの焦点(2枚組) [DVD] 広末涼子 (出演), 中谷美紀 (出演), 犬童一心 (監督)  形式: DVD

砂の器 デジタルリマスター版 [DVD] 丹波哲郎 (出演), 加藤剛 (出演), 野村芳太郎 (監督)  形式: DVD

黄色い風土 (講談社文庫) Kindle版 松本清張  (著)


 「高校殺人事件」が初出連載されたのが、1959年から61年までの学研発行の「高校コース」。昔は学習·学年誌という教育系児童雑誌は、小学館の「小学一年生」から「小学六年生」まであり、学研発行の「一年の学習」「一年の科学」から「六年の学習」「六年の科学」まであった。また中学生以上向けの教育系雑誌になると、学研からは「中一コース」から「中三コース」が出ていて、旺文社からは「中一時代」から「中三時代」が出ていた。

 高校生向けには旺文社から「高一時代」から「蛍雪時代」、学研からは「高一コース」から「大学受験·高三コース」が刊行されていた。

 子供の頃の僕は、小学館の学年誌はタマに買うことはあっても、中学生からの「時代」や「コース」は、中学·高校とも一冊も買ったことはない。僕が小学生や中学一年生頃、親戚の家に泊まり掛けで遊びに行ったとき、親戚の家の僕より三つ四つ歳上の従兄弟の「時代」だったか「コース」だったかがあって、パラパラ捲って見たのは記憶している。

 僕の小学生時代は、学研の「学習」「科学」は小学校の中で予約販売していて、僕は「学習」の方はタマに購読することはあった。購読ってあの頃の馬鹿ガキの僕は活字はほとんど読まず、一本だけの何ページかの漫画と綺麗な図版(写真)を見てただけだったな。

 小学校時代の「学習」「科学」の購読って、発売日に小学校に雑誌が来てたけど、支払いってどうしてたんだろうな?どういう支払い方法してたのか全く記憶してないな。

 松本清張作品は、高校生時代にけっこう読んで行ったし、特に短編集はいっぱい読んでると思う。長編も読んで行ったけど、「波の塔」と「けものみち」が当時、読み上げるのは最後まで読んだけど、小説があんまり面白いと思わず、その辺から松本清張は読まなくなったのかな。松本清張をいっぱい読んでたのは高二までで、高三になってそんなに読んでないと思う。高三は野坂昭如·遠藤周作·柴田翔·庄司薫·北杜夫·柴田錬三郎とかかなぁ。五木寛之は高二までは短編集をいっぱい読んでて、高三は五木寛之の長編小説を読んでたな。

 あ、高三時は吉行淳之介の長編小説も何作か読んだな。エッチな内容で驚いたが文章表現がとても綺麗だった。こういう“文学”もあるんだなぁ、って思ったな。松本清張は高校卒業して大人になってからは、読んだのは「Dの複合」と「湖底の光芒」の二冊だけだな。

 「Dの複合」は浦島太郎伝説になぞらえた現代の謎解きの面白さが光る長編推理小説で、当時楽しく読み上げたと思うが、「湖底の光芒」の方は下請け中小企業の経営の苦悩を描いていて、謎解き部分があんまりなくて、当時は僕は小説がそんなに面白いと思わなかったと覚えている。まぁ「Dの複合」も「湖底の光芒」もあらすじも内容はほとんど忘れてしまってますけど。

 

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