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ガンドラック氏の予言、米国債金利6%は当たるか?

2018年12月01日 | 米国債への投資

早期退職希望者さんからコメント欄に以下のご質問がありました。みなさんも回答には興味を持たれるとおもいますので、本文にて回答することにしました。

>現在3%台で推移する米長期金利が6%になるのなら待とうか、という気になりますが、

林先生のご見解はいかがでしょうか?

   もしそれが実現すれば、私の著書の中で最初に例として取り上げたR氏のように、みなさんも金利生活者として幸せな未来が待つことになります。でも私は残念ながらそこまで高金利が実現するとは思いません。おもしろい記事ですので、以下に記事の内容を引用しながら、私のコメントを述べていきます。

 

>米国市場で「新債券王」と呼ばれる著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏は日本経済新聞のインタビューに応じ、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを進める中で財政悪化が続く状況について「非常に危険」と警鐘を鳴らした。現在3%台で推移する米長期金利は「2021年までに6%に達する」と予想した。

ずいぶん大胆な予測ですね。あと2年ちょっとで投資の世界が様変わりするという予想です。

>「中間選挙の結果、財政赤字の拡大がより早く進むだろう」。米中間選挙の結果、上下院で過半数を握る政党が異なる「ねじれ」が生じた。市場では新しい法案は通りにくく、政策は停滞するとの見方が多い。一方、ガンドラック氏は「下院の民主党がトランプ氏の選挙公約である中間層向けの10%減税に賛成し導入される」とみる。民主党は従来の税制改革では富裕層や企業に恩恵が偏っていると主張していたからだ。中間層向けの減税実現に向けた財源確保は難しい。下院の民主党は現行の減税策見直しを提案しそうだが、トランプ大統領や共和党が反対するのは確実だ。結局、財政赤字の拡大を容認する形で中間層向け減税が導入されるというのが同氏の見立てだ。

  ここまでの内容は、一見理屈は通っていそうに見えますが、実は無理があるようです。共和・民主が共同で財政のひどい赤字拡大を本当に容認するでしょうか。

>「FRBが利上げを進める中で政府債務が膨らみ続ける状況は非常に危険。5年以内に問題になりうる」

これはその通りですね。でも問題化することが予測できるのに、議会は黙ってそれを通しますか?私はそうは思いません。

  アメリカには行政から独立した「議会予算局」という党派を超えた中立的な機関があって、財政の10年先までの将来予測を毎年出して放漫財政を警告します。今年も春先に、トランプ減税による今後の強烈な赤字を警告しています。この組織は実に重要な組織で、政権が代わっても財政の見守り機能は影響されないという特徴を持ちます。

>ガンドラック氏はトランプ政権と共和党が景気サイクル後期にもかかわらず、減税策や財政支出の拡大を進めていることに批判的だ。今後、政府の利払い負担が急速に増えかねないからだ。将来、景気後退期に入っても財政上の制約で十分な対策を打てなくなる可能性も出てくる。

もちろんこれはそのとおりだと思います。

>同氏によれば今後5年間で総額約7兆ドルの米国債が償還を迎える。一方、FRBは金融政策正常化の一環で利上げを進め、米国債の再投資は減らしていく。米国債の保有シェア最大の海外勢も為替ヘッジのコスト上昇で購入を減らしている。国内投資家がその穴を埋めるには、インフレ率を上回る魅力的な利回りが必要だ。従来は年2%程度の利払いで済んでいたが、ガンドラック氏は今後は3~4%に上昇するとみる。

そうでしょうか?まあ、3-4%ならありえなくはないでしょうが、最近のFRBはむしろ来年の利上げ回数を減らす方向ですよね。理由はもちろんインフレが高進しない、つまり景気のスローダウンを見ているからです。だとすると、長期金利が一方的に上昇するとは思えません。その中でもし長期金利が供給サイドの事情だけで上昇を始めたら、FRBはまた国債を買って金利を下げますよ。長期金利の上昇は住宅投資や自動車購入に冷や水をかけ、不況に突入してしまうからです。

>ガンドラック氏は16年夏、市場関係者の中でいち早く長期金利の底入れを主張し、予想通りの展開となった。18年10月に10年債利回りは約7年ぶりに3.2%台に上昇した。足元は3.0%台まで低下したが、同氏はまだピークは打っていないとみる。金利の上昇予想を曲げない裏には、米国の財政悪化が止まらないとの見立てがある。

  実は彼はこの大胆な見立てをどう理屈づけるか困っているのではありませんか。なので最初に私が指摘したように確固たる理由もなく財政赤字が無制限に拡大する、しかも矛盾したようなことを述べざるを得なくなっている。それが彼の見通しへの私のコメントです。

>「もし20年までに景気後退に陥れば、トランプ氏は次期大統領選に出馬しないだろう」。トランプ大統領はすでに2期目に意欲をみせている。ただ景気後退で株価が下落すれば、選挙戦で自身の経済政策を成果として誇れなくなる。最終的に「経済失速」の責任をFRBに転嫁し、次の大統領選からは撤退する――。ガンドラック氏はトランプ氏の性格を踏まえてこう予想する。

トランプが撤退だなんて、そんな世界の期待に応えるほど彼は甘くありません。再選を目指すから責任を転嫁するのでしょう。しかも共和党はすべての議員が中間選挙で彼に忠誠を誓って当選しています。誰がトランプを裏切れるでしょう。それが今の共和党のはまってしまった罠だと私は見ています。そしてトランプ支持こそ将来の共和党の命取りになるというのが私の見立てです。

>同氏が次の大統領選の争点になるとみているのは、所得格差問題と社会保障政策だ。景気後退に陥れば、国民皆保険などセーフティーネット(安全網)の拡充を主張する民主党の急進左派の勢いが増し、次の大統領がこの一派から誕生すると予想する。新政権の政策は財政拡張的になるだろう。ガンドラック氏はそこまで読んだうえで、今後の金利上昇シナリオを描いている。

誰でもいいからトランプ以外が大統領になってくれ、それが私の願い、世界の願いです(笑)。

  ということで、きちんと整理してかかれば、6%の金利はありえないことがわかると思いますが、みなさんのご意見はいかがでしょう。

コメント (14)
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