最近よく聞く言葉に、「リスクオン・リスクオフ」と言う言葉があります。
この言葉が為替変動に対して持つ意味は?
という質問をある方から受けましたので、今回はちょっと議論が戻るようですが、その質問に私なりの回答をしたいと思います。
リスクオン;投資家が積・極的にリスクを取る投資を行っている状態
リスクオフ;投資家がリスク資産から離れて消極的になっている状態
この言葉は一般的には次のように使われます。
「ユーロ危機で世界がリスクオフの状態にあり、円とドルの両通貨が買われる」
という具合です。
(注)この言葉、FXトレーダーの使い方を見ていると、自分がリスクを取っている状態、つまり相場を張っている状態をリスクオン、リスクから離れている状態、つまり相場を張っていない状態をリスクオフと使ったりしています。それはポジションを取った状態か、はずした状態かを指しているだけで、最近使われている意味合いとは違います。私の説明は上記のように使われている場合の説明です、念のため。
この言葉が為替相場の説明で使われるのは、
リスクオン状態;円とドルが売られる
リスクオフ状態;円とドルが買われる
というように使われます。
何故そうなるのかを、もうすこし説明しますと
・円とドルは、世界の中ではもっともリスクの少ない通貨と考えられている。
・リスクオン状態では投資家は積極的にリスク資産に投資を行う。
・リスク資産とは為替で言えば円とドル以外、つまり新興国通貨やポンド、そして最近はユーロ。また株式全般や新興国債券、そして商品などリスクの大きい資産を指す。
・要するに投資環境が明るく多くの相場が上昇するとき、マネーは安全資産である円やドルから離れてリスク資産に回るため、円とドルが売られる。
・反対にリスク資産の相場が荒れたり低迷したりしていると円とドルが買われる。
ではこの考え方がどの程度普遍性を持つか、見てみましょう。この10年程度の推移はどうだったかを大きな流れで検証してみますと、
・01年にITバブルの崩壊後に世界の株式相場はボトムを付け、リーマンショックまで上昇を続けリスクオン状態にあった。商品相場も大相場となった。その間に円とドルは売られるはずだが、実際にはドルは円に対して大きく買われ、01年の100円台から07年には120円台半ばをつけた。
・08年のリーマンショック後世界はリスクオフ状態になり、円とドルは買われるはずだが、その後一貫してドルは円に対して売られた。
・09年から10年には株式や商品相場もかなりの程度の戻りがあり、新興国の株や債券も買われリスクオン状態になって円とドルは売られるはずだが、その間も円はドルに対して買われ続けて11年には75円台まで円高になった。
こうして見て行くと、どうもこの説明は円ドルレートに対する説明にはなっていないようです。
もっともこのリスクオン・オフの説明はユーロが危機の状態にあると、比較的有効性を持っているように聞こえます。つまり初めに示したように「ユーロ危機で世界がリスクオフの状態にあり円とドルの両通貨が買われる」というようにです。
もちろん為替相場は円とドルのみの世界ではなく、ユーロもあればポンドもあり、その他の通貨も多くあるため、円であれば円以外の他通貨全体に対する、ドルであればドル以外の他通貨全体に対する実効為替レートを見る必要があるのですが、円とドルの占める割合が大きいことから、実効レートもさほど円ドルレートの推移と大きく変わらないようです。
さらに私に言わせればこのリスクオン・リスクオフの議論は、いろいろあいまいな点が多くて、いまいちクリアーな説明になっていないように感じます。例えば、
・リスクオン・リスクオフと言っても、相場が一様に強くなったり弱くなったりするのは実は10年レンジで見ればほんの1-2年のことで、あとはそれぞれの相場はまちまちに動き、オンとオフの境目がわからない
・リスクアセットの定義に例えば金(ゴールド)は入るのか入らないのかなど、範囲を決めることも難しい
・円とドルをけっこうマチマチに動くので、同時並行させて説明するのは、無理がある
などの理由から、つい厳密さを求める私の性には合わないのかもしれません。
以上がちょっと長くなりましたが、最近のはやり言葉「リスクオン・リスクオフ」が為替に与える影響は?に対する私なりの回答です。