ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

「日本には世界に冠たる製造業がある」ってか?

2022年09月10日 | 日本経済コメント

「企業不正リスト」とwikipediaで検索すると我々がよく知っている大企業だけで驚くほどの不正事件の一覧が示されます。

主に単独企業の事件

 

  私はこのトピックを取り上げようと以前から思っていたのですが、今回遂にそれに踏み切ったのは、今週キリンビバレッジのニュースを見てからです。

9月6日の時事通信ニュースを引用します。

「ジュースの商品パッケージに不当表示があったとして、消費者庁は9月6日、キリンビバレッジ(東京都)に対し、景品表示法違反で再発防止などを求める措置命令を出した。メロン味の「トロピカーナ」に100%と表示していたが、実際に含まれていた果汁は約2%だった。対象となったのは、「100% MELON TASTE」や「厳選マスクメロン」などと表示し、原材料のほとんどがメロン果汁であるかのように表示していた。実際は、ぶどうやりんご、バナナの果汁が約98%を占め、メロン果汁は2%ほどだった。現在はパッケージの表示を変更して販売を続けている。

引用終わり

 販売を続けている???

飲料大手のキリンが、なんと恥知らずなと思ったしだいです。

 

  このところの大企業の不祥事は目に余るものがあります。この企業はおとり潰しにする以外ないと思われるほどひどい最近の例を上げます。

日刊工業新聞9月5日「日野自動車製造停止」から引用します。

日野自動車のエンジン不正問題の影響が、トラックの国内販売台数に大きく表れてきた。8月の普通トラック(積載量4トン以上の大型・中型トラック)の国内販売台数は、前年同月比69・1%減と大きく下落した。日野自は8月22日までにトラックほぼ全車種の国内出荷を停止。トラックを販売できない事態に陥っている。長期化することで物流への悪影響が懸念されている。 2021年に普通トラックの国内販売台数で4割近いシェアを握った日野自が窮地に立たされている。トラック業界関係者がまとめた、8月の販売台数は大型が同73・9%減、中型が同62・1%減だった。日野自のエンジン性能試験の不正をめぐっては、対象車が拡大している。3月、データ偽装が4機種で見つかり、型式指定を取り消す処分を受けた。8月には外部の特別調査委員会の調べで、生産する13機種でも不正が判明。中大型トラックなどの出荷を止めた。残る小型エンジンも国土交通省の立ち入り検査で不正が発覚。同月、小型トラックの出荷も停止した。」

引用終わり

 

  ほぼすべての車種で製造停止とは、驚く以外ありません。会社ぐるみの悪事を長期にわたり製品全体に行っていたとは、あきれてものが言えません。おとり潰しの理由をご理解いただけると思います。そして昨日、9月9日遂に国交省は日野自動車に「是正命令」を出しました。昨日の時事通信を引用します。

「日野自動車によるエンジン試験不正問題で、国土交通省は9日、同社に道路運送車両法に基づく是正命令を出した。また、新たに4機種のエンジン生産に必要な型式指定を取り消すことを決めた。是正命令は、相次いで発覚した自動車メーカーによる完成検査不正を受け、2019年の同法改正で導入された。適用されるのは初めて。」

引用終わり

 

  そもそも日野自動車はトヨタの連結子会社です。いったい親会社のトヨタはなにをしているのでしょうか。

  こうした不正は日本では圧倒的に強いブランドネームである三菱系の企業、三菱電機や三菱自動車でも起きています。

日経ニュース21年9月 三菱電機不正

2021年6月に長崎製作所で、鉄道車両用の空調設備などについての検査不正が明らかになったのを皮切りに、さまざまな不正の事実が明るみに出た。なかには20年、30年続いていた不正もあり、「不正の連鎖」は常態化していた

三菱電機は29日、鉄道車両向け空調装置の一部機種で「不適切な検査」を行っていたと明らかにした。製造を担う長崎製作所(長崎県時津町)で架空の検査データを顧客に報告するなどしており、不適切な検査は1980年代から30年以上続いていた疑いがある。

この不正の根は深く、なんとシステム上に不正をさせるプログラムがあることまで発覚している。

東急など鉄道各社が、車両のブレーキ設備を点検する。三菱電機がブレーキに使う空気圧縮機で不適切な検査をしていたことが発覚し、国土交通省が1日までに鉄道会社に対して一斉点検を要請した。三菱電機は「安全性に問題はない」と説明するが、不適切検査の全体像は依然判明せず、今後の対応について鉄道各社が頭を悩ませている。

引用終わり

  30年以上の不正とは、あきれるばかりです。

  また同じく三菱ブランドの三菱自動車も多数の不正がありすぎるので、燃費不正問題の例だけ取り上げます。しかも以下は三菱自動車のHPからの引用です。

引用

燃費不正問題の概要

  1. 内容

車両の燃費値測定試験において、当社は長年にわたり以下のような不正な取扱いを行っていました。当社は、これらの事実を真摯に受け止めるとともに、会社全体に関わる重大な問題として認識しております。

(1)法規で定められた惰行法※1によらない走行抵抗※2の測定

遅くとも1991年12月頃から、ほぼすべての車種について、法規で定められた惰行法※1を用いて走行抵抗※2を測定せず、さらに測定期日や場所などについて事実と異なる記載をして、型式指定審査を受けていた。

(2)走行抵抗※2の恣意的な改ざんおよび机上計算

遅くとも2005年12月頃から、燃費目標を達成するために、実測値、あるいは合理的根拠のある数値を用いることなく、恣意的に走行抵抗※2を引き下げて使用していた。さらに、過去の実測値をもとに、仕様の変更等に合わせて机上計算した数値を補正して、型式指定審査※3の際の走行抵抗※2として使用していた。

(3)eKワゴン/eKスペースに関する走行抵抗※2の恣意的な算出と引き下げ

2013年6月以降発売のeKワゴン(カスタム類別含む)、eKスペース、eKスペース カスタムは、いずれも燃費目標を達成するため、走行抵抗※2の恣意的な算出と引き下げを次第にエスカレートさせた。

(4)不正発覚後の走行抵抗※2再測定の際にも、測定方法の趣旨に反する取扱いがあった。

燃費不正問題が明らかになった後の再測定においても、国の確認試験と同様の方法を行わなかった。

(5)(1)~(4)に対して自浄作用が働かず、「測定現場における法令遵守意識の欠如と、経営陣のチェックの欠如」により、1991年から25年にわたりその是正を行えなかった。

 引用終わり

 もう一度申し上げますが、これはHP上の文章です。おいおい、どうなっているんだ、としか言いようがありません。

 次は東レです。これまた30年以上前からの不正です。 NHKニュース22年4月12日を引用します。

「製造している樹脂製品で第三者機関の認証を不正に取得していた問題をめぐり、弁護士でつくる調査委員会がまとめた報告書を公表しました。30年以上前から不正が行われていたと指摘しています。

東レは、家電製品や自動車などに使われている樹脂製品で、燃えにくさに関する第三者機関の認証を得る際、製品とは別のサンプル品を提出し、基準を満たしているように見せかける不正を行っていました。
この問題について、会社は22年4月12日、原因について調査を行った弁護士による調査委員会の報告書を公表しました。それによりますと、不正な対応は30年以上前から繰り返され、認証を取得した410の品種のうち122の品種で不正が確認されました。

引用終わり

 

東レはカーボン繊維では世界最大のシェアーを持つグローバル企業です。それがこの不始末とは、いったいどうなっているのでしょう。

 

これ以外にもいくらでも日本の製造業の不祥事があり、いずれも会社ぐるみの不正ばかりです。これでは「世界に冠たる製造業」どころではなく、「世界に冠たる不祥事のデパート」に成り下がっています。この投稿をお読みになった方の中には、多くの製造業出身の方がいらっしゃると思います。どのような感想を持たれるでしょうか。

 

  こうしてみると円安も単なる金融市場だけの問題ではなく、株式会社ニッポンの劣化問題が集約されているのかもしれません。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ザポロジエ原発の査察に疑義... | トップ | 株式暴落はアナリスト・ショ... »

コメントを投稿

日本経済コメント」カテゴリの最新記事