恒大集団が実質破綻し、アメリカでチャプター11の海外企業向け版であるチャプター15を申請しました。この15の申請とは11と同じで、一応駆け込み寺として逃げ込み、債権者の追及を逃れ、あわよくば再生しようという方法です。しかし中国の不動産市況は悪化の一途をたどっていて、とても再生の見込みなどありません。
私は8月1日の投稿、「奢れる中国は久しからず」で行き過ぎた不動産投資は中国衰退の引き金になりうるという見解を示しました。日本のバブル崩壊とその後の長期低迷になぞらえています。人口減少も日本の踏んだ轍と同様です。
すでにこの恒大集団は2021年12月にドル建て債券のデフォルトを起こし、2022年3月には株式の売買も停止されていたため、アメリカではやっぱり来るものが来たかかという程度の受けとめをされています。集団の負債総額はなんと48兆円、けた違いの大きさです。
こうなると金融市場では次はどこかという犯人探しが続き、日本と同様バブル崩壊への道を歩み始めます。中国で最大規模の不動産開発会社「碧桂園」は、発行したドル建て社債2本(総額2,250万ドル)の保有者に対して、8月7日が期限だった利払いを履行できませんでした。30日間の猶予期間までに支払いができなければ、9月にデフォルトになります。金融市場は既に、碧桂園社債のデフォルトや大規模な債務再編を織り込んでいるといわれていて、同社の人民元建て債券は14日から売買停止、米ドル建て債券の価格は大幅に下落し、流通利回りは実に3,000%を超えています。もちろん株式時価総額も、ピーク時の2018年1月から9割以上減少しています。そして負債総額は恒大集団よりすこし少ないものの、未完成プロジェクトの規模は恒大集団のなんと4倍。デフォルトのマグニチュードは恒大より大きいものがあります。
すでに各地で大問題になっている完成しないマンション・鬼城問題も相まって、不動産の売れ行きは悪化の一途をたどり、家計の消費にも悪影響を与えています。このため度を超えたオマケ付き販売などが横行しています。たとえばマンション一軒買ったら、2軒目はタダとか、リゾートマンションを無料であげるとかです。完全に末期症状ですね。
中国政府はこうした大手不動産開発企業の状況悪化のニュースは、極力報道しないように規制しているそうです。すでに多くの国民は知ってはいても、さらなる大破綻ニュースは本格的動揺を招くため規制しているのだと思われます。実に姑息ですね。しかし一方で中国株式市場や通貨元の下落は隠しようがありません。
そして中国の深刻な経済状況は失業者の増加にも表れています。しかし「臭い物にはフタ」の中国政府が、若者の失業率発表を取りやめると発表。それがかえって疑心暗鬼を招いています。今朝のTV報道で中国の専門家である東大の阿古教授が次のようにおっしゃっていました。「16歳から24歳の若者の失業率は21%と報道されていますが、中国の専門家の話では実際には4割以上に達しているそうです。乖離の理由は求職活動をしない相当数の寝そべり族の若者が、失業者にカウントされていないから」とのこと。はたして今後政府が公表する若者の失業率が大きくなるか小さくなるか、見ものですね。
習近平というオレ様独裁者の経済運営は際どい局面に達しているので、要注意です。そのことが新たな危機まで発展すると、世界経済へのインパクトは非常に大きいものがあります。目くらましのための戦争でも起こさないといいのですが。
つい先日、私の中国人同僚から、ご両親が碧桂園のマンションを買った話を聞かされました。来年4月に完成、入居の予定とのこと。工事が断続的に続いており、ハラハラしているそうです。
ご両親は中国南部、ベトナム国境に近い人口4万人の町に住んでいるそうです。マンションは1フロア4件、26階建てのマンションで、110平米3LDKタイプを1000万円で買ったそうです。未入居ですが支払いが始まっているそうです。
4万人規模の街に、9棟の26階建てマンションを同時に建築しているそうです。友人のマンションの周辺には9棟単位のマンション群がすでに6か所建築済みとのこと。完成した未入居物件を買うより、建築中の物件のほうが大幅に安かっため、建築中のマンションを買ったそうです。
香港の中心地を切り出して、田舎町に移植したような感じなんでしょうね。ちょっと想像がつかないスケール感です。人口4万人の街に、高層マンションが群れなしているのは不思議な感じがします。
ニュースで中国の鬼城問題を聞いたことはありますが、本当のこととは信じられませんでした。知人から親の話しとして聞かされると本当に恐ろしく感じました。日本の不動産バブルも大概でしたが、中国の酷さは桁違いのようです。