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大丈夫か日本財政17年版 その18 日銀保有の国債はどうなる 14

2017年09月07日 | 大丈夫か日本財政

  恒例のアメリカ財政の綱渡りサーカスは、綱を渡り始める前に幕となりました。とりあえずハリケーンのこともあり、3か月の先延ばしで決着です。もちろん3か月後もサーカスは開催されますが、結果が見えているためさほど面白い見ものにはならないでしょう。


  先週から今週にかけては北朝鮮のミサイルと核実験のニュースに翻弄されましたね。株価も大きく反応しました。その中でトランプは様々なジャブを繰り出しています。ほとんどが北朝鮮に対する直接のジャブではなく、中国とロシアに向けてです。トランプは、

  「オマエらが甘やかすからだ。もっと協力しろ。」と他人事にしています。はたしてそれで事は解決の方向に向かうのでしょうか。私には疑問です。

  その理由は、中国もロシアも北朝鮮のリスクなど日・米・韓ほど感じていないと思うからです。北朝鮮のミサイルはすべてアメリカと同盟国に向いているからで、きっと習近平もプーチンも、「トランプよ、ざまみろ」くらいに思っているのでしょう。

  それが証拠にプーチンは一昨日アメリカに向けてこんなことを言っています。「北朝鮮の制裁にロシアも協力しろだと。ロシアに制裁を課しているのはおまえらだろ。制裁を科している相手に制裁しろとはなにごとだ、ふざけんな」。

  まことにもって、ごもっとも(笑)。

  日本にとって北の脅威は「今そこにある脅威」で、決して笑い事ではないのですが、トランプのやることなすことは、なぜか笑いを誘うのです。

  

  そんな中9月3日の日曜日はクラブチャンピオン決勝戦の1回戦でした。私の予選通過は16人中16番目のギリギリだったので、マッチプレーで行われるトーナメント1回戦の相手は予選トップ通過の選手です。お伝えしたとおり彼は本当に300ヤードの飛距離を持つアスリートゴルファーでした。

  あの人は300ヤード飛ぶよ、という話はときどき聞くのですが、彼はめったにいない本物です。礼儀正しいナイスガイですが、飛距離を聞いてみると「平均は300ヤードです。飛んだときは330くらいです」とのこと。もちろんフェアウェーが平らで無風状態を前提にしています。決して下りの追い風などではありません。

  私がメンバーになっているコースには300ヤード前半のホールがいくつかありますが、その多くで彼はドライバーでグリーンサイドまで飛ばしたことがあるそうです。キャディーさんもそう言っていました。

   もっともそこまで飛ばすと危険がつきまとうため、予選でも今回の決勝戦でも半分以上のホールでドライバーを封印し、ティーショットは3番アイアンで打っていました。その飛距離は230ヤード。私のドライバーのナイスショットと同じくらいなので、ときどきアイアンでオーバードライブされました。

  前半の9ホールは取ったり取られたりを繰り返し、私の1ダウンで意外と善戦していました。後半に入り10番は一番長いパー4で、このあたりからは勝てないだろうと思っていたのですが、意外にも私がパーで彼はボギーとしてマッチ・イーブンに。

   11番は分けでしたが、12番から私のセカンドショットが乱れ始め、3ホール連続で負け。15番ホールは勝たない限り、引き分けても負けが決まるドーミーホールとなりました。そしてそれを取ることができず、あと3ホールを残して私の負けとなりました。

   もっと早く負けるだろうと予想していたのですが、15番まで来ることができたのは大満足です。涼しくて良い天気の中、年に一度のマッチプレーを楽しむことができました。

  ゴルフの専門用語ばかりですみません。これでゴルフのお話は終えます。

 

  さて本題です。前回は日本の財政と金融の将来を占うのに必要な世界の主要国の動向を取り上げました。アメリカはすでに金利引き上げから次のステップである中央銀行FRBが資産圧縮の段階に入りそうだ。欧州はアメリカには遅れるものの、テーパリングの段階に向かう可能性が出てきた、という内容でした。

  では日本はどうか。この先を展望しておきましょう。

  現在雇用は絶好調と言ってもよいのですが、そのひっ迫が逆に将来の経済成長の足かせになっています。そのため足元の成長率は高くても、先の見通しは楽観的になれません。雇用のひっ迫が強まっているのに、何故賃金が上昇しないのか。その理由についてはまた別途書くつもりです。

  日本国内のイベントでこの先注目する必要があるのは、もちろん20年のオリンピックです。以前私はオリンピック開催国の景気と株価の分析をみなさんに簡単にお示ししました。例にしたのは北京、ロンドン、そしてその時に進行中だったリオでした。「多くの投資家はオリンピックを頂点だと思っているが、実際にはその1年くらい前に景気や株価のピークが到来する」ということを数字で示しました。

  リオなどと違いすでにインフラ整備の進んでいる日本は、オリンピック景気に沸くようなことにはならないと私は思っています。64年のオリンピックは高度成長期にあったため、国全体でインフラを中心に整備が進められました。20年は東京都が主体ですし、大きなインフラ土木工事の必要性はありません。競技施設と選手の宿泊施設程度です。そのため直接的な経済効果はおおむね12兆円程度と試算されています。19年までにほぼすべてが整えられ、オリンピック特需もインフラ整備部分はピークアウトするでしょう。

  もちろんオリンピック開催中は外人旅行客が増え、東京のみならず日本中で宿泊客が増加し、買い物でおカネをおとしてくれるためある程度は潤うのですが、その分開催後には反動が来ます。

  すると世の中はオリンピック開催で沸き立っていても、先を見越す株価は19年くらいにはピークアウトし、その後実体経済もピークアウト。実際にオリンピックを迎える20年頃には、下降線をたどる可能性が強くなります。

  64年のオリンピックの時はインフラ整備の効果が大きく、すぐに不況にはならなかったのですが、その後2年目には「昭和40年不況」に陥りました。上場企業が何社か倒産し、山一証券に日銀特融が行われたため、証券不況とも呼ばれました。

  しかし60年代から70年代にかけてはなにせ高度成長期です。我々団塊の世代が巨大な塊として労働市場に参入し、大量消費を始めたのもその頃です。私はその世代の真ん中ですが、高校卒業が68年、昭和43年ですので多くの団塊の世代は73年には学校を卒業し終え、みな社会人になりました。日本経済が高度成長を続ける条件が整っていました。

  現在の人口デモグラフィ―はそうした後押しがないことを示しています。団塊の世代がすでにほぼ65歳以上となり労働市場から退出し、労働人口は確実に減少して潜在成長力を押し下げます。


  一方財政に目を向けると、来年度予算も概算要求では100兆を超え史上最高を更新するのは間違いなし。経済と税収が順調であれば、赤字を大幅に削り込んだ緊縮予算を組むのが当然のハズですが、そのような気配は全くありません。

  これまで20年以上にわたり効果のない「呼び水」と言われる財政出動を続けてきましたが、今年度も補正予算を組み、そして今後も「景気回復のため」と称する放漫財政が継続されます。

  税収以上の支出は、私はすべて景気対策のための財政出動とみなします。安倍首相はアベノミクスの成果を誇ってみせますが、誇れるほど成果が上がっているのだったらこれ以上の赤字垂れ流しはやめ、たまには黒字予算を組み、借金を減らしたらどうでしょう。もっともその提案に乗る政財官の人間は皆無でしょう。政治家という人種は、自分が貧乏くじを引くのがいやだから、タックスペイヤーのカネを使いまくります。

  19年末に策定される20年度政府予算では、「20年度財政赤字解消の国際公約」が果たせないことが見込まれるため、政府が言い訳をするハメに陥るでしょう。言い訳をすればするほど財政リスクの国際的注目度が高まります。

  そこにさらに、例の日銀の国債爆買いの限界が重なることになります。先日お伝えしたように、市場に出回る国債の枯渇です。その試算によると2019年が国債枯渇のヤマ場となります。

  つづく

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3 コメント

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Unknown (Owls)
2017-09-07 20:46:43
こんにちは
いつも興味深いお話しありがとうございます

私も2019~2020年あたりがピークで
それより先はもたないだろうと予想しています
現役世代で最も多い昭和46~49年生まれの人たちも
45歳以上になり盛りが過ぎる年齢になり
その下の世代は減る一方です
65歳以上の人口が全体の30%以上になるのもその頃
流石に限界点は来るでしょう

日本は確かによくもったと思います
しかし、何事も限界までやってしまうと手の施しようがない
昭和20年で戦局を挽回する策を考えろといっても不可能なように
今となって何とかする方法もないでしょう
返信する
北朝鮮そして2019年 (たーぱん)
2017-09-07 23:37:52
スキーにゴルフ。旅行に行くにも何かひと味違う理由がある林様のブログ。いつも楽しみに拝見しています。と同時に、仕事世代のウチに種は蒔いておかないとここまでは楽しめないだろうなーと感じます。現役世代、頑張ります。

北朝鮮を含めた各国の動きは本当に過敏で、声明はともかく、間髪入れずの軍事演習•軍備配置計画の発表、まったく慎重さが垣間見得ません。国防って、国のメンツってこんなに安っぽいものなんでしょうか?本当に皆どこへ行きたいのでしょう?会話でなんとかしたいのはロシアと中国と猪木さんだけ?たまらずに会いに行く、あと先考えずに。こっちの方がよっぽどまともな心情だと思うのですが。

プーチンのコメントは私も新聞で見て思わず「そりゃそーだ」でした。
もっと言ってしまえばアメリカに核兵器やめろと言われてる北朝鮮だって言ってるはずです「てめーは山ほど持ってるじゃねーか。減らすのもやめたくせにどの口が言うんだ」と。
オバマ大統、今にして思えば仏の様に思えます。トランプ氏に余計な事さえ言わなきゃ良かったのに。

2019年ですかー、すぐですね。
ひと通りの貯金はすでに米国債なんですが、長期出向で海外勤務していた頃の忘れていた10年郵便定期が先日満期を迎えて•••107円台まて下げた勢いで取り敢えずドルに替えて、タイミングみて米国債!が正解だと分かりつつ、趣味のアメ車、買うなら今でしょ!ラストチャンス!とキリギリスが笑いかけます。
あ、買いそうですね、私。腹の底でとっくに決めて迷った振りしてる自分を見た気がします(笑)。

おもいがけずヒートアップしてしまいました。長文失礼致しました。
引き続き、社会の先輩として、余暇を楽しむ趣味人として、愉快なトランプウォッチャーとしての活躍、期待しております。
返信する
たーぱんさんへ (林 敬一)
2017-09-11 16:49:35
いつもブログを楽しんでいただいているようで、なによりです。

アメ車が趣味ですか。
うちから自転車で行ける、所さんの世田谷ベースには、おもしろいアメ車がありますね。
お金かかりそうですが、楽しいでしょうね。

>2019年ですかー、すぐですね。

うーん、たしかに19年という示唆をしていますが、結論はまだちょっと早いと思います。

理由は本文にて。でも大半がすでに米国債であれば、安心ですね。

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