お約束した日になりましたので、林の回答をアップいたします。
ここまでに協力いただいたPuffinnさん、Genrechtさん、提案をありがとうございます。ぽんきちさんだけでなく、他の方も大いに参考になるアドバイスだと思います。
ではぽんきちさんへの林からの回答です。
ぽんきちさんのご質問を繰り返しますと、現在から19年後の2037年に向け建替え資金を米国債のゼロクーポン債で積み立て投資をしているが、次第に投資期間が短くなり、為替のブレーク・イーブン・レートが高くなってしまい不安を感じるので、何か代替案はないかというご質問です。
私の提案は、「本当に時期が接近してきて不安を感じるなら、何もしない」というものです。たとえリターンがよさそうな投資対象であっても、為替のリスクは大きいので、損失の可能性はあります。それに対する対処の決定版は「なにもしない」ことです。
私の著書をお持ちの方は、どうぞ「あとがき」の最後のページをご覧ください。そこには以下のとおり書いてあります。
ウォーレン・バフェットの座右の銘は「すべてのボールには手を出すな」。私の座右の銘は「バッター・ボックスに立つな」です。
バッター・ボックスに立つと、つい手が出てしまいますので、最初から立たないことがストレスフリーの資産運用の極意だと思っています。
それではいったい建替えより何年くらい前から投資を停止すべきかと申しますと、金利状況により変わりますので、一律の回答はないと思います。高金利であれば数年でも投資しうるし、低金利だと数年では為替のリスクが高すぎることになるでしょう。以上がひとまずの回答です。
でもこれだけではおもしろくもなんともありませんので、おまけの提案を差し上げます。ちょっと事を複雑にしてしまいますが、現在の投資方針にもかかわりますので、今後じっくりと考えるヒントにしてください。
おまけの提案1.例として10年以上の長期であれば不安を感じないとするなら、37年の償還にこだわらず10年後の米国債に投資し続ける
たとえばあと5年であっても10年後償還の債券に投資するという意味です。その結果が吉と出るか凶と出るかはわかりませんが、大きな意味でリスク分散になります。
「37年という1時点だけに為替リスクを集中するのは、本当にそれでよいのか」、という根本的疑問から、分散の必要性を提案しています。ちょっと不安を与えることになり申し訳ないのですが、大事なことなのでストレートに伝えました。
では償還1時点集中の為替リスクを分散する方策は他にないのでしょうか。いくつか方策はあります。それが提案その2です。
おまけの提案2.償還時期を37年より5年前から5年後までの10年くらいに分散する。
これだと37年以前の償還はかまわないのですが、金利をもらい損ねることになります。でも金利分くらいならあきらめましょう。そして37年以降に償還される債券は、その時点の時価がキャピタルゲインロス・為替のゲインロス次第で売却することもあればしないこともあるとしておく。売却しないと資金が不足するケースが生じます。為替ロスのため、売却したくないというケースです。その場合、不動産と米国債を担保にして借り入れを起こします。年齢が若ければ不動産担保だけでローンは可能だと思いますが、19年後64歳だと、ローンが下りるか少し不安です。ちなみに銀行に聞いてみる価値はあるでしょう。明確な答えはないかもしれませんが。
計算上はわずか5年の短期ローンで金額も小さいでしょうから、不動産担保だけでも十分可能ではないでしょうか。ローン後にキャピタルゲインが出たら、その時点で早期返済することも大いにあります。
また、64歳じゃだめでも59歳なら大丈夫かもしれません。特に仕事を持っていて現役であれば。だとしたら、59歳時点での建て替えも検討する価値はあるでしょう。
ぽんきちさんの方針のそもそものリスクの指摘から、いろいろ提案が錯綜しました。ただ大事なことなので、是非繰り返し読んで理解していただきたいと思います。
さらにもう一つ、指摘をしておきましょう。
それは、償還時期の短期化により、実はリスクは減少するという一般論です。
そもそも金利自体は、期間の長期化に伴い高くなりますが、それは長期間だとリスクが増すからです。これは理解できますよね。為替も同じです。償還までの期間が短いとブレーク・イーブンは高くなりますが、同時に為替の変動リスクは低くなります。なぜなら短期だから変動幅は少なくなると考えられるからです。
なので、実はぽんきちさんのご心配はかなり心理的なものだということなのです。絶対的ブレーク・イーブンは高い数値でも、そこまで行く可能性は短期間なので低くなるということです。
混乱に拍車をかけてしまったかもしれませんが、よく考えていただけば理解できることだと思います。
まとめますと、
・一般的に期間が短くなると、リスクも低くなる
・1時点の償還にこだわらない方法も十分に検討の余地がある
・ローンという手段も考慮する
ということで私の提案は終わりますが、ご質問があれば遠慮なく、なんなりとどうぞ。
以上
おはようございます。
詳細なお返事をいただき、ありがとうございました。
私の頭ではすぐに理解できない部分もありますので、
印刷して何度も読み返してみます。
また投資方針の変更等がございましたら、お返事を
させていただきます。
ここで恐縮ですが、ご提案させていただきます。新たに本の執筆をお考えいただけませんでしょうか?林先生の今までの新たな部分等のブログ記述を土台に、今の時代に合わせた内容を出版していただけると、皆が容易に要点を理解でき、よりストレスフリーが得られると思います。
以前、先生が執筆されたときのボツ原稿も入れていただき、個人的には、イールドカーブの解説と、そのイールドカーブや市場動向別の投資プラン等があればなおありがたいです。
今回のような内容を、Q&A方式で入れるのも面白い内容になるのではないでしょうか?
林先生の前著を色々な人に勧めましたが、反応は
リスク回避傾向の人からは「今は金利がまだ低くて米国債投資には躊躇するし、為替リスクは嫌だ」
リスク選好傾向の人からは「これくらいの金利だと株式投資の方がいい」
という意見ばかりで、なかなかそれ以上には進めない人が多いです。
もうひとつ、ご質問があります。
最近、ネットを見ますと、Direxion TMFという、米20年超長期国債に3倍のレバレッジをかけたETFに投資している人をちらほら見かけます。値動きは3倍ですが、おそらくレバレッジで短期金利を支払っているため分配は僅かな額です。
TLT (米20年超長期国債のETF) を買っている知人に、こんなのあるよ、と教えたら、買って市場暴落時に備えたい(売って暴落した株を買う)!と言っています。個人的には、米国債も持っていて、少しだけならこれもありや否や(金利上昇による株価下落は甘受する)?株式との分散効果あり?と思っていますが、これへの投資の可否やお考えを是非、林先生に伺いたく存じます。
論点がずれていて、的外れでしたら申し訳ございません。債券と株式は資産運用の要ですが、かなり意味合いは違い、株式投資は将来のキャッシュフローに賭け金を張るもの、債券はインデックスETFではなく米国債現物であるならば、それを買ったのではなく投資対象の発行体に償還時まで資金を貸し付けているだけだと理解しております。
であるならば、売り買いの投機対象になり、大きく変動する可能性があるETFではなく、買ったら利回りが確定する債券現物を集めて行くほうが無難だと思っています。
素人考えですみません。ぼくは相場は読めませんし、みなさんのように賢くはないので、林先生の書籍を参考にして、毎年ドル建てで同額を積み立てて行きます。
ここを読まれているのは賢者だけではなく、ぼくらど素人もいますので、内容が濃く、かつぼくらでも理解できる第二弾書籍を期待しています。
来月入院が決まったので、病院でも繰り返し読ませていただきます。
Genrechtさんへ
>リスクの考え方、大変勉強になりました。
それはよかったです。基本部分ですので、覚えておいてください。
>ご提案させていただきます。新たに本の執筆をお考えいただけませんでしょうか?林先生の今までの新たな部分等のブログ記述を土台に、今の時代に合わせた内容を出版していただけると、皆が容易に要点を理解でき、よりストレスフリーが得られると思います。
提案ありがとうございます。実はすでに大半を書き終えた原稿ができています。その中身はおっしゃるとおり、ここでみなさんにお教えしてきたことをベースに、まとめたものです。そして議論形式ではありませんが、みなさんからいただいたコメントもかなりの程度組み入れるつもりです。もちろんハンドルネームはそのまま出さず、イニシャル程度にするつもりです。
前回の著書の中身から、体裁はかなり変更しています。基本はより易しい方向への変更です。ある女性雑誌の編集長をされていた方から、「オバチャン」でもわかる投資の本にしたら、という提案がありました。オバチャン用一色ではありませんが。そもそもリスクはどこにでもあり、それに気づかないと損をしますよ、ということを含めています。
ただ、Genrechtさんからのリクエスト、「個人的には、イールドカーブの解説と、そのイールドカーブや市場動向別の投資プラン等があればなおありがたいです。」に関しては、イールドカーブという言葉が出たとたんに見向きもされなくなるとおもいますので、それは避けますが、期間のリスクについては易しい記述を入れています。
出版社も変更する必要があるので、どのあたりがよいか考え中です。2・3か月中にはタイトル案や目次をみなさんにご披露し、コメントをいただくことを考えていますので、その時はよろしくお願いします。
>Direxion TMFという、米20年超長期国債に3倍のレバレッジをかけたETFに投資している人をちらほら見かけます。これへの投資の可否やお考えを是非、林先生に伺いたく存じます。
こうした債券の投信は、教科書としての著書やこのブログでも口を酸っぱくして申し述べているように、私の提唱する純粋な債券投資とは関係のないただの賭け事です。用心棒さんのご意見どおりですので賛成できません。
御上梓の予定とのこと、おめでとうございます。ついうっかり書き込んでしまいました。是非、読みたいです!
林先生、用心棒さん
用心棒さんが指摘されたとおり、完全にトレーディング目的ですね。TMFを買うくらいなら、普通に3倍量の超長期米国債を買ったらいいじゃん、と言うのが私の結論です。
それにしても、毎月毎月、トレーディングを推奨する投資本の出版が何と多いことか!本屋に行くたびにチェックはしていますが、最近はほんの数分の立ち読みで飽きてしまいます。リスクフリーレートよりも超過リターンが得たい無謀な人が本当に多いなぁ、と思っています。グローバル分散インデックス投資家でさえもそう思えてきています。
私も、ウォーレンバフェットが言うように、「いつ市場が閉鎖されても持ちつづけられる」投資対象のみに絞りつつ、金利が上昇しつつありますので、米国債の比重をもっと上げて行こうかと思っています。
でも今後はそれにむけて徐々にスピードアップして行くつもりです。
いつもお世話になります。
その後投資方針について色々思案しております。
銀行にはいつも米国債を購入している証券会社
の担当者を通じて相談をする予定です。
借入も考慮して現役である59歳時点(2032年)
での建替えに変更し、かつ前後5年に償還期限を
分散することも考えていますが、1点問題がござ
います。
三菱UFJモルガンスタンレー証券のHPを見ると、
2031年から2035年を償還期限とする米国債が
すっぽり抜けています。この時期はなんらかの
事情で米国債が発行されていないのでしょうか。
お返事を宜しくお願いいたします。
存在します。
31年2月15日償還のものはありますが、その後空白期間があります。確認したところ、米国が
財政黒字であった年と30年債のコストに見合わない年( 意味は理解出来ておりません。 )は発行が無いとのことでした。
31年の後半から4年間ほど発行がありませんでした。発行が再開したのはブッシュ政権でテロ対策と対イラク政策で財政が悪化した為とのことでした。
私の場合、発行の前後に分散して増額購入して未発行期間分を補いました。
おはようございます。
お返事がおくれてすみません。
情報提供をいただき、ありがとうございました。
ないということがわかりましたので、次善の策を
考えてみますね。
救われた投資家さんのご指摘通り、財政が黒字化していたため、長期債の発行が必要のない時期がありました。
日本に比べると夢のようなお話ですね。
いろいろ考えているようですね。およその方針が決まったら、教えてください。
救われた投資家さんも、着々と投資を実行されているようで、なによりのグッドニュースです。