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ゼロコロナとウィズコロナ、どちらが勝つか

2022年06月01日 | コロナショック

  中国がゼロコロナ政策で悪戦苦闘していますね。上海の都市封鎖の様子は日本からの特派員が多いせいか、その過酷さを手に取るように見ることができました。

 

  多くの特派員は家族とともに集合住宅に住み、封鎖中は家族数に関係なく配給される食料品などにしか頼れず、まるで戦争中か戦後の配給制度下にあるような悲惨な状況にありました。3日前の民放のニュースで、久々に2時間限定の外出許可を得た特派員が許可証を手に外出している様子を、スマホ動画に撮ったものが放映されていました。街に出てもほとんど人影がなく、とても東京の2倍の人口を持つ都市とは思えません。街角に立つのは一般人ではなく、紅衛兵ならぬ白衛兵と呼ばれる、白いコロナ防護服に身を包んだ当局の防衛隊だけでした。昨日やっと解除になりましたが、広い中国のこと、実は同様な事態が各地で起こっています。

 

  一方でアメリカからの帰国者からは正反対の様子が報道されています。連休中にハワイ旅行をして帰ってきた日本人に聞くと、どこでも自由に行動でき、マスクをしている人など皆無。アルコールや時間制限など全くなし。ニューヨークやワシントンに出張して帰国した人も同じような自由を満喫できたと話をしていました。

 

  世界の二大経済大国は好対照の政策を取っています。そこで私はタイトルを、「ゼロコロナとウィズコロナ、どちらが勝つか」として考察することにしました。

 中国は完全無欠政策、アメリカは感染することで集団免疫獲得を目指す荒療治。どちらの政策が奏功するのでしょう。

  希望的観測としては、習近平がゼロコロナ政策で失敗して3期目の政権を断念せざるをえなくなり、中国が超危険な習独裁体制から脱却してほしい。ついでにロシアのプーチンも小国ウクライナ侵攻に失敗し、自国民によりハチの巣にされてほしい、というものです(笑)。

  ではまず最近あまり報道されなくなったWHOによる世界の感染者数・死亡者数の統計から。5月23日までの数字を27日に発表しています。

 

       感染者数  死亡者数   死亡率 ワクチン2回以上接種率

全世界     5.3億人   630万人   1.2%    N.A.

アメリカ   8,300万人   100万人   1.2%    30%

中国     2,600万人       1.6万人   0.06%    50%

日本      873万人   3万人    0.3%      55%

ロシア    1,800万人   38万人   2.1%              N.A.

 

  アメリカは感染者数も多いが、死亡者数も非常に多く、犠牲をともなう集団免疫獲得の荒療治をしているように見えます。公式にそうした政策を取っているとは言っていませんが。逆に中国はゼロコロナ政策により、徹底的に抑え込もうとしています。そして感染者数の割に、死亡者数が少ない。日本はその中間。ロシアは感染者も多く、死亡率も非常に高い。

  しかし不思議なのは、国による死亡率の大きな差です。ワクチン接種率の差が影響しているのかもしれませんが、確定的ではありません。これに関するWHOの発表は見当たりませんでした。

 

 中国のロックダウンは上海ばかりが報道されていますが実は全国に渡っていて、影響を受けている人口は3億人をこえています。4月16日の毎日ニュースによりますと、

 

「新型コロナウイルスが再流行する中国の45都市で何らかの都市封鎖(ロックダウン)が行われ、対象者が3億7300万人に上るとみられることが分かった。調査した野村ホールディングス傘下の野村国際(香港)が16日までに明らかにした。全人口の26・4%が行動制限を受けている計算だ。」

 

  習近平は万全の体制を誇っていると思われていますが、最近はそうでもない事実が数多く報道され始めています。一つはコロナ禍開始以降の若者による静かな反乱で、専制主義中国の将来に希望が持てず、海外脱出者が増加しているという報道。少子高齢化の進む中国では大問題です。もう一つは最近暴露された、新疆ウイグルでの人権蹂躙の実態の詳細です。大量の記録などがハッキングで暴露され、我々が詳細に至るまで知るところとなりました。

  コロナ感染者がゼロになることなどあるのでしょうか。中国はオリンピックを前にしてあれだけ厳しい政策を続けていても、全国各地でロックダウンせざるを得ないほどの感染が拡がり、上海以外はロックダウンが長期化しました。広い中国ではいくら叩いてもモグラは無限に出てくるでしょうから、叩きつくすことなどできないでしょう。

 

  対するアメリカはどうか。すでにほぼ感染対策は解除されていますが、一週間ごとの感染者数はピーク時の10分の1程度にまで減少しています。その原因を推定すると、以下のニュースにあるように、どうやら真の感染率の拡がりに求めることができそうです。

  4月27日の朝日新聞オンラインニュースの引用です。

米疾病対策センター(CDC)は4月26日、米国人の約6割が少なくとも1回は新型コロナウイルスに感染した可能性があるとするデータを発表した。実際に報告された感染者数の約2・3倍がすでに感染した計算になる。

  この感染者の推定にワクチン接種者数をプラスできるなら、仮定の感染率はさらに上昇するでしょう。

 

  そこで私の勝手な妄想に近い推定です。ゼロなどというありえない政策を取り続ける愚と、すでに100万人の死者数を出しているアメリカの愚、いずれも極端で愚かな政策に違いないと思うのですが、経済的に回復していない中国と、雇用・経済が回復してインフレに進んだアメリカを比較すると、勝敗を付けたら勝ちそうなのはアメリカに思えます。

 

  日本は両極端に偏らず、中間的政策を取り続けていますが、実際には本当のコロナ勝者は賢い日本かもしれませんね。清潔好きで他人に迷惑をかけない日本人の心がけこそ、政府の政策に勝る勝利の秘訣でしょう。

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