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トランプの弾劾訴追

2019年12月19日 | トランプのアメリカ

  アメリカの下院が本日トランプの訴追を決議しました。上院による裁判では過半数を占める共和党が最終的には否決するので弾劾されることはないでしょう。なにの膨大な時間を使って弾劾プロセスを進行させる意味があるのでしょうか。

   ニュースコメントなどは、民主党としてはトランプの本質をあばく意味はあるとか、逆にトランプが無罪を勝ち取ることで大統領選挙では逆に有利に作用するのではないか、という見方をする人が多いようです。しかもウクライナ疑惑の核心部分は、民主党の大統領候補で依然としてリードしているバイデン氏ですが、バイデン親子がクロとなれば民主党は貧乏くじを自ら引くことになります。

   しかし私自身は少し違った見方をしています。民主党はたとえ選挙でリードするバイデン氏を失ったとしても、しょせんそれは候補の一人にすぎない。現時点での候補者のオッヅはあてにならない。前回のトランプも選挙の1年前は泡沫候補だったし、その前のオバマも泡沫だった。つまりこの時点での泡沫、あるいは泡沫に近い候補が最終的に勝ち残る可能性は大いにあるのがアメリカの大統領選挙なのです。

  ちなみに民主党の候補選びは2月に東部アイオワ州で幕が切っておとされますが、そこでのリードを勝ち得た候補が大統領にまで登りつめるケースは結構あります。アイオワで現在先頭を走っているのが若干37歳、無名のブーティジェッジ氏です。

   そうしてもう一つ言っておきたいことがあります。私はトランプが弾劾訴追を受けること自体がとても大事だと思うのです。弾劾の歴史の話になると、以下3人の大統領の名前が出てきます。

  下院で訴追を受け、上院の弾劾裁判までに至った2人、1868年民主党のアンドリュー・ジョンソンと1998年民主党のビル・クリントンです。2人はいずれも上院では無罪。そして1974年、下院による訴追まで行く寸前に辞任した共和党のニクソンです。

   100年以上前のことも歴史上の汚点として確実に名前が残ります。それに是非トランプの名前も刻んでやろうじゃありませんか。それくらいしかウサを晴らす手立てがないのです(笑)。そしてもう一つは、トランプに決してノーベル平和賞を与えないためにはよい理由になるに違いない! なので断固弾劾支持なのです。

   私のアメリカの友人たちはトランプを「アメリカの恥さらし」、それを支持する40%あまりのアメリカ人たちも同罪だと言い続けています。友人の一人は自分がアメリカ人でいることは耐えがたい苦痛だとまで言っていて、彼はフェースブックで週一回は反トランプのニュースを流してウサ晴らしをしています(笑)。

 

  弾劾裁判に進む現在でもトランプの支持率に変化はありません。18年3月くらいから現在に至るまで、平均的には支持43%前後、不支持53%程度でほぼ不変です。それ以前だと17年には支持37%、不支持58%と言うこともありましたが、この2年弱の波はさざ波でしかない。彼の支持率は40%を割らず岩盤のように固いのは確かです。しかし不支持率も常に50%以上で岩盤なのです。この3年で大きな波があっても彼の支持率が50%を超えたことは一度もありません。

   一方、一番大きな変化は共和党の国会議員たちのトランプ支持で、彼が大統領になりたてのころは2割程度の議員がトランプに対し表立って反旗を翻していました。それが就任後2年目の中間選挙が近づくにつれて不支持を表明する根性を持った議員がいなくなりました。

  もともとアメリカは日本と違い国会の議決にあたり、党の議員に党議拘束をかけることはしない自由投票です。ところが中間選挙の候補者選びの段階から、トランプは自分に盾突く候補への妨害が目立つようになり、そうした議員も黙らざるを得なくなってほぼすべての共和党議員を黙らせたのです。その結果本当にトランプ嫌いの有力共和党議員たちはみな選挙に立候補せず議会を去りました。

 

  さて、今後トランプが自分の裁判で何を叫ぶのか、楽しく見物することにしましょう。

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