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マッチポンプ・トランプのウソ

2019年06月23日 | トランプのアメリカ

  私がしばらくトランプ叩きをしないうちに、すっかり世界を混乱させているので、ちょっと叩いておきます(笑)。

  イラン攻撃の寸止めは「オレ様が10分前に攻撃を停止させた!」と、相変わらず自分で火をつけたのに、消したのはオレだと自慢して、選挙向け票稼ぎに走っています。

   「爆撃の結果何人死ぬのかを確認したら、150人くらいだというので、寸前に停止させた」と見え透いたウソを言っています。そんなシミュレーションも示さずにアメリカ軍が大統領に命令を促すことなどありえません。この幼児のようなウソをつく大統領のやり口は、対メキシコでも発揮されました。

   トランプはメキシコの国境管理の甘さを非難し、しっかりと対策を取らなかったらメキシコからの輸入品すべてに5%の関税を課すと脅迫していましたが、それを取り下げました。新たにに関税を課すぞと脅して「課さないことにした」。これもまったく同じマッチポンプです。

  そして「メキシコが譲歩をしたので、関税はやめた」と演説で言ったのですが、ワシントンポストとニューヨークタイムズは、その「メキシコの妥協提案は、すでに今年の初めに決まっていたことで、脅しに屈したものではない」とばらしています。しかもその演説のすぐあとに「これがメキシコとの契約だ」とペーパーを持って記者会見をしたのですが、メキシコ政府は即日、「トランプと新たな契約などした事実はない」と真っ向から否定。まったくみっともない結末でした。

   一応、ロイターの記事を引用します。

「トランプ氏は7日、メキシコからの全輸入品に5%の関税を導入する計画を無期限で停止すると表明した。その代わり、メキシコは中米諸国からの移民流入を阻止するために治安部隊を派遣するとしている。

一見するとトランプ氏の勝利に見えるが、実際はそうではないかもしれない。ニューヨーク・タイムズ紙によるとメキシコ政府は3月には、国境に部隊を送ると約束していたし、米国への難民申請者を手続き中にメキシコに送還・待機させる案は、1月に米国土安全保障省が打ち出していたからだ。」

 

  ではホルムズ海峡に戻ります。この海峡の重要性はいうまでもありません。原油需給・価格動向の研究機関や専門家の見立てでは、「もしホルムズ海峡が封鎖されると、原油価格は現在の2倍、100ドル以上に上昇する」というものです。

  アメリカは原油を自国で賄える生産国ですから、痛くもかゆくもないのでホルムズ海峡を自国の切り札にしてしまいました。そのため怪しげな証拠でイランの責任を追及しています。今回の危機のきっかけになった2隻のタンカーへの攻撃をイランの革命防衛隊の仕業だと決めつけ写真を示しました。その証拠写真は、犯人が証拠隠滅のため爆破したタンカーに再度接近し、証拠とおぼしき物体を除去しているところだ主張しています。

   しかし待てよ、犯人がまた本当に戻るか? 私はそうは思いません。

  もし本当にそれを相手に気づかれずに写真や動画で捉えることができるなら、何故その犯人たちがイランに戻るところを最後まで追わなかったのか。きっと追っていったらイランに帰らなかったのでそれを示さなかった。というのが私の推測です。

   安倍首相がイランを訪問中に、いくらはねあがり連中だとしても日本のタンカーに攻撃を加えるでしょうか。ほかでもない最高指導者のハメネイ氏への訪問中なのですから。

  ついでにお門違いのイラン訪問をしたアベちゃんも、世界ではやり玉に挙げられています。そもそもアメリカとイランの関係悪化をとりもつとして訪問したのですが、世界のメディアの報道は「アメリカ大統領と一番仲がいい安倍首相は仲介役などできない。何しに行ったんだ」というものです。もちろん現地イランのメディアも、「トランプの犬が何しに来た」という論調だったそうです。そして彼がイランのローハニ大統領やハメネイ氏に言った言葉「核の合意から離脱しないでほしい」については、「そんなことはおまえの友達トランプに言え!離脱したのはトランプだ」という反応でした。

 

  この報道、まことにごもっともです。そもそも核合意の条件に反したという証拠もないのに、ユダヤ人票を集める目的でいきなり合意から一方的に離脱したのはトランプです。たとえタンカー攻撃やアメリカのドローン攻撃がイランの仕業としても、その原因を作ったのはトランプに間違いありません。そして湾岸への兵員を増強するなど、火に油を注いでいます。今後どう火消しをして票につなげるか、しっかり見ていきましょう。もし突発的戦闘状態に陥ったら、全責任はトランプにあります。

   このマッチポンプ・トランプに騙されるアメリカ人支持者に向け、先週フロリダでトランプは再選出馬宣言をしました。「Keep America Great!」が今回のうたい文句ですが、世界のメディアの論評は「新たな政策はなにひとつない」というものです。

   次回の大統領選挙、実はすでにトランプは大苦戦しています。それがマッチポンプの原因かもしれません。そもそも今世界が最も注目している経済問題は米中貿易戦争の行方ですが、トランプの目的は中国を叩くことで中西部のラストベルトの雇用・産業を復活させることでした。それに対する中西部の大事な選挙区の反応は、実はとても冷たいものです。

   よくメディアが書く「トランプの岩盤支持層の45%程度の支持率は全く崩れていない」という論調に対して、私はいつも正反対のことを言ってきました。「そりゃ逆だよ、トランプに反対する岩盤不支持層55%は全く崩れていない」でしょうと。

 

  大統領選に向けてすでにアメリカでは各選挙区での支持率調査が始まりました。現在までの調査結果は私の指摘を裏付けるものです。ちなみにトランプが前回勝利し、今回出馬宣言をしたフロリダ州でのトランプ対バイデンの支持率は、41:50でバイデンの優勢。なんと相手が社会主義者サンダースでも42:48でサンダース優勢。そして最もトランプが重要視し、前回勝利を収めたは中西部の諸州、たとえばウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア州などでした。その諸州のいずれもで、トランプ43~45%対バイデン53~55%程度と、すべてバイデンがリードしています。

   トランプがスリーピー・ジョーと呼ぶ元副大統領のバイデンや、バーニー・サンダースでさえトランプより支持率が高いということは、「トランプでなきゃ誰でもいい」ということを表していると私は解釈しています。

   ちなみに本日現在の世論調査のおまとめサイトReal Clear Politicsのこのところのトランプの平均支持率は44.6%、不支持率は52.0%と、上記の調査結果と符合しています。

https://www.realclearpolitics.com/epolls/other/president_trump_job_approval-6179.html

 

 トランプ再選という悪夢は見たくありませんが、相手がバイデンでは正直ちょっと心配です。

 

コメント (1)
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