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ニセコの変貌から見えるもの

2019年03月14日 | 旅行

  旅行と著書の取り組みで、最近記事が減っていますね。でもしっかりネジを巻きます(笑)。  

突然ですが、質問です。

 「2018年の市町村基準地価ランキング上昇率1位はどこでしょう?」

   答えは北海道倶知安町(くっちゃん)です。理由はニセコがあるから。年間の上昇率はなんと33.3%。今後もスキー場周辺は大規模開発が続くので、まだまだ上昇しそうです。毎年同じスキー場に行っているのでよくわかるのですが、周辺地区の変貌ぶりはすさまじく、終わる気配は全くありません。

   スキー場周辺の大規模開発といえば、越後湯沢を思い出す方が多いと思います。バブル時代に高層のリゾートマンションを作りまくり、それがバブル崩壊とともに一気に暴落。今やゴーストタウン一歩手前です。価格は3千万~4千万円程度で売り出されたものが、今や数万円~数十万円と100分の1から1,000分の1。時にはただ同然で売られています。管理費を払うのが負担になり、タダでもいいから売りたいのです。都会で1部屋5万円の安いアパートに住んでいる老夫婦がただ同然のマンションに引っ越し、同じ5万円程度の管理費だけを払って3倍の広さの部屋に住めますし、暖房や給湯も込みです。

  ニセコもいずれ将来は、と思うのは間違いです。去年もレポートしましたが、開発主体は海外のリゾート開発業者が中心で、かなりしっかりした開発計画を持ち、需要も海外中心のため、日本特有のバブルとは色彩が異なります。

   昨年の同時期に私はニセコの不動産に関して以下のようにみなさんに報告しています。

引用

驚異的なのは、この2-3年で建てられたコンドミニアム群です。ゲレンデに面していたり、街なかに建てられていたりするのですが、外国人のデザイナーによる素晴らしい外観とインテリアで、驚くほどの高価格です。英語の不動産情報を探すと、

・リフト5分、330平米、ツイン4部屋+シングル4部屋、リビング、キッチン 価格3億5千万

・リフト5分 223平米、ツイン4部屋、リビング、キッチン 価格2億8千万

・ゲレンデに面するコンドのペントハウス277平米、4部屋、4億9,800万円

引用終わり

  いわゆる億ションばっかり。

  そして今年新たに目を引いたのは、ニセコでも海外スキーヤーがほとんどの花園スキーエリアの大規模開発でした。我々は滞在しているヒラフ地区からリフトを乗り継いで花園まで滑走して行くのですが、ふもとには建設中のリゾート物件、ハイアットリゾート・ホテル&レジデンスがゲレンデ横に4棟も並んでいて、写真に写りきらないほどの規模になっていました。ゲレンデの最下部なのでリフトのすぐ脇、スキーヤーにはとても便利な一等地です。  

  開発主体は香港のパシフィック・センチュリー・グループで、ホンコンフラワーから身を起こし世界でも有数の金持ちになった李嘉誠氏の一族です。これらの物件をホテルとコンドミニアムとしてハイアット・リゾーツが運営を受託します。コンドは一般オーナー兼投資家にも販売して、家主は自分が使わないときにホテルとして貸し出すこともできるようになっています。今世界の一流リゾートで、はやりのシステムです。

   こうした世界的なリゾート開発グループのやることですので、湯沢の轍は踏まないでしょう。そもそも日本人からの需要はあまり期待せず、世界の金持ちのための資産でありリゾートなので、景気の影響を受けにくいのです。北海道の大自然が迎えてくれるので、本州のチマチマしたスキー場とはわけが違います。

   遊びのバラエティも驚くほどあります。スノー・シーズンだけでも、ガイド付きバックカントリー(ゲレンデ外滑走)、スノーシュートレッキング(かんじきでのトレッキングです)、スノーモービル(エンジン・キャタピラ付きの雪上バイク)、テレインパーク(ボーダーがジャンプしたりレールを滑ったりできる施設)など。子供にはスノーパークやスキー教室が英語で用意されています。

   そしてみなさんがきっと心配されるオフシーズンですが、ニセコにオフはなく、グリーン・シーズンと呼び、様々なアクティビティーが用意されていて、どれも本格的です。ゴルフはもちろん、激流でのラフティング、渓流でのカヌー、ちょっと野蛮ですがキャニオニングと呼ばれるスケルトンでの滝や渓流下り、フィッシング、絶景を楽しみながらのマウンテンバイク。これはスキー用のリフトを利用して上り、頂上から下るだけの比較的楽なバイクツーリングです。

  食の楽しみはホテルや街でもでも味わえますが、花園にはゲレンデ脇に今シーズンオープンした本格フレンチレストランがあります。このレストラン、ロケーションのよさと格式からしてさすがの野沢温泉ハウスサンアントンもかないません。ランチコース4,500円、ディナーは16,000円なりとかなり高級でスキー場のレストランとはいいがたいものがあります。北海道は食材の宝庫ですから、さぞかし美味しいでしょう。我々は高くて行けませんでした(笑)。

   では一体このリゾートに来るのはどんな金持ちか。例として今回出会った人々のお話しをします。まずはニュージーランドからのご夫婦です。彼らとは夕刻に倶知安のすし屋に行く往復のシャトルバスで知り合い、30分ほど話し込みました。彼らは我々がいつもベースにしているニセコのヒラフ地区に数年前から別荘を持っていて、今回の滞在予定は2か月とのこと。もともとニュージーランドのスキー場のホテルのオーナーでしたが、それを売ってリタイア。日本とスキーとゴルフが大好きでニセコに別荘を買ったそうです。2か月の間に北海道の主なスキー場を巡り、本州に渡って蔵王をはじめとする東北のスキー場も車で巡りたいとのこと。さらに夏はゴルフをするために訪れるそうです。

  ご婦人はゴルフの腕前がハンディ4というトップクラスのプレーヤーで、アマチュア選手権に出場する腕前。ご主人は彼女のお供でただのダッファーと言っていました。ダッファーとはボールより芝生を飛ばすほうが得意な腕前だという意味です(笑)。北海道は優雅な暮らしぶりの人々にとって食事はもとより、夏冬両方楽しめる理想郷だと言っていました。私にスキー場とゴルフ場、たくさんあるけどこを巡ったらよいかという質問をぶつけ、熱心に聞いていました。答えているうちに別れの時間が来てしまい、再会を期して別れました。

  次の例はオーストラリアのシドニーからの家族連れで、やはり日本の食と景色とスキーが大好きで、それに加えて日本人が親切なので、やはりニセコに別荘を買ったとのこと。ゴンドラの中のためわずか20分程度の会話でしたが、ご主人は不動産の販売業で財をなしたようです。彼らもスキーのほかに冬も避暑地として使っているとのこと。オーストラリアと日本は夏と冬が逆です。でも去年からオーストラリアの不動産は下落し始めたので、これから商売は厳しそうだと言っていました。

  私がなぜ便利で安いホテルでなく、別荘を買うのかと質問したところ、「ニセコに可能性を感じている」という不動産屋らしい答えが返ってきました。さらに「でも往復の運賃を考えたらペイしないでしょう」と聞くと、「いや、ここと同じ雪質を求めるならヨーロッパまで行かなくてはならないので、ニセコはとても手ごろだよ、時差もないしね。」というのです。多くの海外スキーヤーが世界でもトップクラスのパウダースノーを求めてニセコに来るのです。

  それにしてもここの地価が前年比で3割も上昇し、全国一番の上昇率だったのには驚きました。その上昇を支えているのはオーストラリア人ばかりでなく、資本としては中国資本も入ってきていて、開発も湯沢のように一つのリゾートマンションを単独で開発するといういかにも日本型ではなく、オールシーズンを考え非常に大規模で計画的であること。そして投資家と利用者をうまく結びつける仕組みで開発会社もオペレーターも投資家もリスクを分散できることなど、学ぶことは多いと思います。

   私はいつもみなさんに、「外資は三顧の礼をもって迎えよ」、と言い続けてきました。株式投資しかり、企業買収しかり、ゴルフ場買収しかり、都心のビル投資しかり、そしてリゾート投資も。特に不動産は持って帰れないので、いくら外資が入っても大丈夫です(笑)。

   日本の観光資源の豊富さを見つけてくれているのは、最近は海外客かもしれませんね。

  以上、ニセコからのレポートでした。

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